投資者保護基金は、投資者保護を目的として金融商品取引法に基づき設立された機関です。会員である証券会社の経営が破綻し、顧客から預かった有価証券や金銭の返還が困難になった場合(たとえば分別管理が適切に行われていなかった場合など)に、顧客に対して金銭による補償を行います。
補償内容と上限額 #
補償の上限額は、法令により、顧客1人につき、1,000万円と定められています(2025年7月末現在)。また、証券価格の下落等による損失は、補償の対象となりません。2025年7月末現在、法律に基づき設立された投資者保護基金は、日本投資者保護基金のみです。有価証券関連業を行なう第一種金融商品取引業者(証券会社)には投資者保護基金への加入が義務付けられています。
- 補償の上限額:顧客1人あたり1,000万円(2025年7月末現在)
- 補償対象外:株価や投資信託の基準価額の下落など、市場変動による損失は対象になりません。
証券会社が破綻した場合でも、証券会社が分別管理を行っていれば、投資家が証券会社に預けていた資産は、基本的にすべて投資家に返還されます。しかし、証券会社が分別管理を行っていなかった場合などには、日本投資者保護基金が補償を行います。
法的位置付 #
金融商品取引法では、投資者保護基金を次のように定めています。日本で有価証券関連業を行う第一種金融商品取引業者(証券会社)は、日本投資者保護基金への加入が法律で義務付けられています。
第七十九条の二十一
投資者保護基金(以下この章及び附則において「基金」という。)は、第七十九条の五十六第一項の規定による一般顧客に対する支払その他の業務を行うことにより投資者の保護を図り、もつて証券取引に対する信頼性を維持することを目的とする。
第七十九条の五十六
基金は、認定金融商品取引業者の一般顧客の請求に基づいて、前条第一項の規定により公告した日において現に当該一般顧客が当該認定金融商品取引業者に対して有する債権(当該一般顧客の顧客資産に係るものに限る。)であつて基金が政令で定めるところにより当該認定金融商品取引業者による円滑な弁済が困難であると認めるもの(以下「補償対象債権」という。)につき、内閣府令・財務省令で定めるところにより算出した金額の支払を行うものとする。
投資信託と投資者保護基金 #
投資家が投資信託を証券会社で購入した場合において、証券会社が破綻し、その証券会社が分別管理を怠っていたために返還が困難になった場合は、投資者保護基金が補償しますが、投資信託を銀行など証券会社以外の金融機関で購入していた場合には、投資者保護基金の対象にはなりません。ただし、信託財産は分別管理されており、銀行破綻時も資産は原則保全されます。
投資者保護基金の歴史と組織 #
- 1998年:証券取引法(現・金融商品取引法)に基づき制度開始
- 当初は
- 日本投資者保護基金(国内証券会社向け)
- 証券投資者保護基金(外資系証券会社向け)
の2つが存在
- 2002年7月:両基金が統合し、日本投資者保護基金に一本化
- 2025年3月末時点:加入社数261社、基金規模約584億円
基金は1998年に証券取引法(現、金融商品取引法)の基に設立され、当時は国内系の証券会社が加入する日本投資者保護基金と外資系証券会社が加入する証券投資者保護基金の二つがありましたが、2002年7月に日本投資者保護基金に統合されました。2025年3月末現在、261社が加入しており、基金規模は約584億円となっています。
過去の補償実績 #
2000年に経営破綻した南証券(本社、群馬県)の顧客保護のために、総額約35億円の補償が行なわれました。また、2012年3月13日に金融庁から登録抹消処分を受け、翌14日に東京地方裁判所に対して破産手続開始の申し立てた丸大証券についても、顧客資産の返還が困難であると認定され、日本投資者保護基金が補償を行なっています。
投資者保護基金のまとめ #
投資者保護基金は、証券会社が破綻し、顧客資産の返還が困難になった場合に、1人あたり1,000万円を上限に金銭補償を行う制度です。金融商品取引法に基づき設立され、第一種金融商品取引業者(証券会社)の加入が義務付けられています。株価下落など市場変動による損失は対象外ですが、分別管理が不十分な場合の資産保全に重要な役割を果たしています。