MSCI英国指数の概要 #
MSCI英国指数(MSCI United Kingdom Index)は、アメリカの金融会社のMSCI社が算出・公表している、イギリスの株式市場全体の動きを表す代表的な株価指数です。
ロンドン証券取引所に上場している企業のうち、株式の時価総額(株価×発行株数)の合計が大きい上位の企業を中心に選ばれています。これらの企業を合わせると、イギリス株式市場全体の時価総額のおよそ85%を占めており、つまり市場を代表する大企業や中堅企業の動きをまとめて見ることができる指数です。
MSCI英国指数は、イギリスの株式市場が全体として上がっているのか、下がっているのかを知るための目安(ベンチマーク)として、世界中の投資家に利用されています。
MSCI英国指数の特徴と目的 #
MSCI英国指数は、イギリス企業の成長や株式市場全体の動きを正確に反映することを目的に作られた株価指数です。
MSCIが世界共通の基準で算出している「グローバル・インベスタブル・マーケット・インデックス(GIMI)」体系の一部として設計されており、MSCIジャパン指数やMSCI米国指数など、他国の指数と条件をそろえて比較できる点が特徴です。
この指数には、投資家が実際に取引可能な銘柄のみが採用され、構成は定期的に見直されます。
主な特徴は次のとおりです。
- 英国の大型株・中型株で構成(小型株は含まれない)
- 浮動株調整後の時価総額加重型(実際に市場で取引される株数を反映)
- 四半期ごとに構成銘柄を見直し(市場の変化を反映)
- 外国人投資家が投資可能な銘柄のみを採用
このように、MSCI英国指数はイギリス市場の主要企業を体系的に捉え、国際的に一貫したルールで比較・分析ができる指標として活用されています。
MSCI英国指数の構成銘柄とセクター構成 #
構成銘柄数はおおむね70〜90銘柄前後で推移しており、2025年10月末時点では73銘柄で構成されています。構成上位には、英国を代表する多国籍企業が名を連ねます(例:Shell、AstraZeneca、HSBC、Unileverなど)。
MSCIのセクター分類(GICS)による構成比(2025年10月末時点の概算)は以下の通りです。
| セクター | 構成比(目安) |
|---|---|
| 金融 | 約25% |
| 生活必需品 | 約15% |
| 資本財 | 約15% |
| ヘルスケア | 約15% |
| エネルギー | 約10% |
| IT | 約5% |
| その他 | 約15% |
英国市場はエネルギー、金融、ヘルスケア、資本財など、海外売上比率の高いグローバル企業が中心で構成されており、国内景気よりも世界経済や為替動向の影響を強く受ける傾向があります。
他のMSCI指数との関係 #
MSCI英国指数は、MSCIが算出するグローバル株式指数体系の中で、英国市場に特化した地域別指数です。
MSCIは、国・地域・世界といった階層構造で指数を設計しており、MSCI英国指数は、その中で英国株式市場を代表する構成要素として位置づけられています。
このため、英国を含むより広い地域の指数には、MSCI英国指数が構成国別のサブ指数として組み込まれています。
| 指数名 | 関係 |
|---|---|
| MSCI Europe Index(MSCIヨーロッパ指数) | 欧州先進国を対象とする地域指数。英国はその主要構成国の一つ。 |
| MSCI World Index(MSCIワールド指数) | 世界23の先進国株式市場をカバーするグローバル指数。英国株の比率は約4%。 |
| MSCI ACWI Index(MSCIオール・カントリー・ワールド指数) | 世界の先進国と新興国を合わせた包括的な株式指数。英国も構成国の一つとして含まれる。 |
したがって、MSCI英国指数は、MSCIワールドやMSCI ACWIといった上位の国際指数を構成する「英国セグメント」としての役割を持っています。
投資対象としての位置づけ #
MSCI英国指数は、英国市場に分散投資するETFや投資信託のベンチマークとして利用されています。
たとえば、以下のような海外ETFが代表的です:
- iShares MSCI United Kingdom ETF(ティッカー:EWU)
→ 米国上場ETFで、MSCI 英国指数に連動。
日本国内の投資信託やETFでは、「英国株式ファンド」や「欧州株式ファンド」の中で部分的にこの指数が参照されるケースもあります。
📘 出所
MSCI英国指数とFTSE 100の違い #
英国株式市場を代表する株価指数には、「MSCI 英国指数(MSCI UK Index)」と「FTSE 100指数(FTSE 100 Index)」の2つがあります。
どちらも英国市場の動きを示す指標ですが、算出方法・銘柄範囲・用途が異なります。
🔹 概要の違い
| 項目 | MSCI英国指数 | FTSE 100指数 |
|---|---|---|
| 算出会社 | MSCI Inc.(米国) | FTSE Russell(英国・ロンドン証券取引所グループ) |
| 対象市場 | 英国株式市場(ロンドン証券取引所上場銘柄) | ロンドン証券取引所の主要銘柄 |
| 対象銘柄数 | 約80〜100銘柄(大型・中型株) | 上位100銘柄(時価総額上位) |
| 構成比率の基準 | 浮動株調整後の時価総額比率 | 時価総額加重(浮動株調整あり、MSCIとは基準が異なる) |
| 見直し頻度 | 四半期ごと | 四半期ごと |
| 通貨 | 米ドル建て(USD)および英ポンド建て(GBP)の双方で算出・公表 | 英ポンド(GBP) |
| 主な利用目的 | 国際的なベンチマーク(グローバル投資家向け) | 英国内の市場指標・ニュース報道で使用 |
🔸 特徴の違いと投資での使われ方
MSCI 英国指数 #
- MSCIのグローバル・インデックス体系(GIMI)の一部として設計されており、MSCI World IndexやMSCI Europe Indexなどに組み込まれています。
- 国際分散投資の中で「英国部分」を示すベンチマークとして利用されます。
- 海外ETF(例:iShares MSCI United Kingdom ETF / EWU)の連動対象。
👉 国際投資家が「世界の中での英国」を評価するための指数です。
FTSE 100指数 #
- 英国を代表する上位100社で構成され、時価総額上位企業(Shell、HSBC、AstraZenecaなど)が中心。
- BBCやFinancial Timesなどのニュースでも頻繁に引用され、英国経済の象徴的な「株価指標」として位置づけられています。
- 投資商品では「FTSE 100連動型ETF」や「FTSE 100先物」などが多く存在。日本でも大和アセットマネジメントの「iFreeETF英国FTSE100」がベンチマークとしています。
👉 英国市場のニュースや短期的な市場動向を示す代表指数です。
🔹 両指数の関係性と違いのまとめ
| 観点 | MSCI英国指数 | FTSE 100指数 |
| 指数の目的 | グローバル投資家向けのベンチマーク | 英国市場を代表する国内指標 |
| 構成範囲 | 大型・中型株を含む(約85%カバー) | 時価総額上位100社 |
| 利用主体 | 国際機関投資家・ETF運用会社 | 英国内の投資家・メディア |
| グローバル指数との連携 | MSCI World / ACWIに組み込み | なし(独立した国内指標) |
| 代表的ETF | iShares MSCI United Kingdom ETF(EWU) | iShares Core FTSE 100 ETF(ISF) |
MSCI英国指数のまとめ #
MSCI英国指数は、英国株式市場の動きを総合的に表す代表的な株価指数です。エネルギー・金融・医薬品など、世界的に事業展開する企業が多く、英国経済というよりはグローバル企業群の収益構造を反映する傾向があります。世界分散投資の中で「英国市場」部分を把握するうえで、欠かせないベンチマークといえるでしょう。