日本で販売されている外国籍ファンドの中には、ルクセンブルグ籍のものが多く見られます。
これは単なる偶然ではありません。ルクセンブルグは、国際的な投資信託ビジネスが最初に本格的に成立した拠点の一つだからです。
その背景には、UCITSというEU共通ルールを、世界で最も早く「実際に使える制度」として実用化した国だったという決定的な歴史があります。
→「UCITSとは?」
国際的なファンド法制の先進国(UCITSを最初に実用化した国) #
UCITS(Undertakings for Collective Investment in Transferable Securities=譲渡可能証券に対する集団投資事業に関する指令)は、EU(欧州連合)が定めた「公募投資信託の共通ルール」です。このルールに適合したファンドは、EU域内全体で販売できる「パスポート」を持ちます。
ただし重要なのは、UCITSは「こういう条件を満たせばEU全体で売ってよい」という設計図(ルールブック)にすぎなかったことです。
実際にファンドを作れるようにするには、
- どの役所が監督するのか
- どんな書類で申請するのか
- どんな会計・管理ルールにするのか
といった仕組みを、各国が自国の法律として整備する必要がありました。
この「UCITSを実際に使える制度にする作業」を、最も早く、最も実務的に行ったのがルクセンブルグでした。ルクセンブルグは1988年にUCITS Iを国内法として整備し、「UCITSファンドをすぐ作れて、すぐEU全体に販売できる国」になりました。
ルクセンブルグは、UCITSの拠点として長年の実績と制度面・インフラ面での優位性を有していることから、世界各国の運用会社にとって、EU全域での販売を目指す際の有力な選択肢となっています。こうしてルクセンブルグは、UCITSファンドを量産し、世界に流通させる中枢拠点になったのです。
税制上のメリット #
ルクセンブルグ籍ファンドは、ファンド自身の運用益に対する現地課税がほぼありません。
また、多数の国と租税条約を結んでおり、配当や利息への源泉税を軽減できます。
これにより、
- 税金による目減りが起きにくく
- 投資家の実質リターンが高まりやすい
という構造になります。
信頼性の高い金融インフラ #
ルクセンブルグには、
- 世界有数のカストディアン(資産保管銀行)
- 管理会社(ファンドアドミ)
- 国際会計・監査法人
- ファンド専門の法律事務所
が集積しています。
ルクセンブルグの金融監督当局であるCSSFは、EUの規制枠組みの下でUCITSファンドを監督しており、その規制制度は国際的な投資信託業務の枠組みとして広く認識されています。
多様で柔軟なファンド設計 #
ルクセンブルグ籍ファンドは、
- 多通貨建て
- 為替ヘッジ付きクラス
- 機関投資家向け・個人向けクラスの併設
など、投資家ごとに細かく設計できます。
ルクセンブルグ籍のファンドは、複数通貨建てのクラス(円建て、ユーロ建て、ドル建てなど)や為替ヘッジ付きクラスを設けることができる柔軟な構造を持っています。こうした多様なクラス設定は、投資家の通貨ニーズに対応しやすいという利点があります。ただし、各国で実際に販売するためには、当該国の法令・販売規制への適合・届出等の手続きが別途必要となります。
歴史が作った「ルクセンブルグ標準」 #
ルクセンブルグは、1988年にUCITS Iを国内法化してUCITSファンドを実際に設定できる制度を早期に整えた国として先行しました。その後、ルクセンブルグはアイルランドと並んで国際的なUCITSファンドの重要な拠点の一つとして発展し、多くの運用会社が同国を選択しています。
このような広範な集積が進む中で、一部の運用会社・販売会社・投資家の間では、「外国籍ファンドといえばルクセンブルグ籍」というイメージが一定程度浸透してきたというのが、業界で一般的に見られる傾向です。
なぜ外国籍ファンドはルクセンブルグに多いのかのまとめ #
外国籍ファンドにルクセンブルグ籍が多い最大の理由は、同国が UCITSというEU共通の投資信託ルールを世界で最も早く実務として実用化した国だからです。ルクセンブルグは1988年にUCITSを国内法化し、UCITSファンドを迅速に設定してEU全域に販売できる環境を整えました。この先行対応により、世界中の運用会社が欧州向けファンドの拠点としてルクセンブルグを選ぶようになり、税制や金融インフラの優位性も相まって国際投資信託の中心地として発展しました。その結果、日本で販売される外国籍ファンドにもルクセンブルグ籍が多くなっているのです。