バランスファンドの概要 #
バランスファンドとは、 株式や債券、リート(不動産投資信託)、金など、性質の異なる複数の資産にまとめて投資するタイプの投資信託です。
1本のファンドの中で、運用会社が複数の資産に分散して投資を行うことで、自動的にリスク分散を図れるのが特徴です。資産の配分は、あらかじめ一定の比率で運用するタイプもあれば、市場環境に応じて柔軟に変更するタイプもあります。そのため、投資家自身が複数のファンドを組み合わせなくても、これ1本で分散投資を実現できる点が魅力です。
バランスファンドの仕組み #
バランスファンドは、株式・債券・リート・金など、複数の資産クラスを組み合わせて運用します。各資産にはそれぞれ役割と特徴があり、相互に補完し合うことでリスクを分散します。投資する資産の種類や比率はファンドにより異なります。
代表的な資産クラスとしては次のようなものがあります。
| 資産クラス | 主な役割 | 特徴 |
|---|---|---|
| 国内株式 | 日本経済の成長によるリターンを取り込む | 価格変動は大きいが、中長期では主要なリターン源泉となる |
| 海外株式 | 世界の成長機会を取り込む | 為替リスクを伴うが、地域分散によりポートフォリオの安定化に寄与 |
| 国内債券 | 安定した利息収入と価格変動の緩和 | 株式との逆相関により全体の値動きを抑える |
| 海外債券 | 金利差・地域分散によるリスク分散 | 為替リスクに注意が必要だが、ポートフォリオの分散効果を高める |
| リート(不動産) | 賃料収入などによるインカム収益の確保 | 景気動向や金利変化の影響を受けやすい |
| 金 | インフレや市場変動に対するリスクヘッジ | 株式・債券と異なる値動きを示し、有事の際に価値が上がりやすい傾向 |
ファンドによっては、リスク水準(安定型・標準型・積極型など)に応じて株式比率を変える設計になっています。
バランスファンドの種類(運用方針による分類) #
バランスファンドは運用方針によって、いくつかのタイプに分かれます。
1. 静的(固定型) #
あらかじめ決められた資産配分比率(例:株式50%、債券50%)を基本的に変えずに運用するタイプ。
市場環境によって資産の比率が変わった場合には、リバランス(再調整)を行い、元の配分に戻します。
固定型バランスファンド例:
- eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)
- たわらノーロード バランス(8資産均等型)
- セゾン・グローバルバランスファンド
- マイバランス70(確定拠出年金向け)
2. 動的(アクティブ型) #
市場環境や金利・株価の見通しに応じて、資産配分を機動的に変更するタイプです。より積極的にリスクを調整したり、下落局面で守りを強めたりする戦略を取ります。
動的型バランスファンド例
- ジャナス・ヘンダーソン・バランス・ファンド(為替ヘッジなし/資産成長型)
- ジャナス・ヘンダーソン・バランス・ファンド(為替ヘッジあり/資産成長型)
- ピクテ・マルチアセット・アロケーション・ファンド
- 日興ブラックロック・ハイ・クオリティ・アロケーション・ファンド(為替ヘッジなし)
3. ターゲット・イヤー型(ライフサイクル型) #
将来の目標年(ターゲット・イヤー)を設定し、時間の経過とともに株式比率を下げ、債券など安全資産を増やしていくタイプ。iDeCo(個人型確定拠出年金)でよく利用されています。
ターゲット・イヤー型の例
- マイターゲット2030(確定拠出年金向け)
- りそなターゲット・イヤー・ファンド2040
- 三菱UFJターゲット・イヤー・ファンド2035(確定拠出年金)
バランスファンドのタイプ(投資対象による分類) #
バランスファンドは、投資対象地域や資産構成によっていくつかのタイプに分類できます。
- 日本バランス型
日本国内の株式と債券を中心に構成されるタイプです。
投資対象がすべて円建て資産のため、為替リスクがなく、日本の景気や金利の動きの影響を受けやすいタイプです。安定した値動きを重視する投資家に適しています。
- 例:三菱UFJ日本バランスオープン株式20型、三菱UFJ日本バランスオープン株式40型
- 特徴: 為替リスクがない円建て運用。国内市場の安定的な成長を重視。
2. グローバル・バランス型
国内外の株式・債券・REITなど、世界中の資産に分散投資するタイプです。1本で世界の主要市場に分散できるため、最も一般的なタイプです。
- 例:eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)、たわらノーロードスマートグローバルバランス(積極型)、セゾン・グローバルバランスファンド
- 特徴:為替リスクを含むが、地域分散による安定効果が高い。
3. 米国バランス型(USバランス)
米国株式と米国債券を中心に構成されるタイプ。
米国経済の安定成長とドル建て資産の強さを活かした運用を行います。
- 例:NEXT FUNDS S&P米国株式・債券バランス保守型指数(為替ヘッジあり)連動型上場投信
- 特徴:ドル建て資産中心のため、円投資では為替リスクが生じるが、リターン水準は比較的高い。
4. 新興国バランス型
新興国の株式・債券を組み合わせたタイプ。
成長性を重視するファンドで、リスクは高めですが、長期的なリターンを狙えます。
- 例:キャピタル・エマージング・ストラテジー・ファンドAコース(年2回決算/米ドル売り円買い)
- 特徴:ボラティリティは大きいが、リターンポテンシャルも高い。
バランスファンドのメリット #
- これ1本で分散投資が可能
株式や債券など複数の資産に自動的に分散されるため、初心者でも簡単にリスクを抑えた投資が可能です。 - 運用がシンプルで手間がかからない
自分でポートフォリオを組む必要がなく、定期的なリバランスも運用会社が自動で行います。 - 長期投資やつみたてNISAにも適している
安定的な値動きを重視する設計が多く、長期の資産形成に向いています。
バランスファンドのデメリット #
- リターンが限定されやすい
株式の割合が低いと、安定性はある反面、大きな上昇局面ではリターンが抑えられます。 - 資産配分を自分で細かく調整できない
基本的に運用方針は固定されているため、「株式を増やしたい」などの柔軟な変更はできません。 - 他の投資信託と重複投資になることも
既に株式や債券の投資信託を保有している場合、同じ資産を二重に持つ可能性がある点に注意が必要です。
バランスファンドが向いている人 #
- 投資初心者で、まずは「1本で完結する投資」を始めたい人
- 自分で資産配分を考えるのが難しい人
- 長期的に安定した資産形成を目指したい人
- つみたてNISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)で、手間をかけずに運用したい人
純資産総額が大きいバランスファンドの例 #
🔹セゾン・グローバルバランスファンド(運用会社:セゾン投信)
世界30か国以上の株式と債券に分散投資する長期・国際分散型の王道バランスファンド。株式50%・債券50%を基本とし、ローコスト・ハイクオリティ運用で定評のあるバンガードのインデックスファンドの中から、資産規模、運用実績、コスト等の面から厳選したファンドに投資を行います。つみたてNISAやiDeCo利用者にも人気の高いロングセラーファンドです。
🔹eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)(運用会社:三菱UFJアセットマネジメント)
国内外の株式・債券・REITを8資産に均等(各12.5%)で分散投資。
1本で幅広い資産に投資できる最も分散効果の高いインデックス型バランスファンドです。信託報酬が業界最低水準で、つみたてNISA対応ファンドとしても人気。
安定性とコストパフォーマンスを両立した、代表的な分散投資ファンドです。
🔹三菱UFJプライムバランス(安定成長型)(確定拠出年金向け)(運用会社:三菱UFJアセットマネジメント)
国内外の株式・債券・REITに分散投資しつつ、債券比率を高めた中リスク型。
市場変動に強く、定年後を見据えた安定的なリターン重視のポートフォリオ設計です。確定拠出年金(DC)専用で、長期積立・資産防衛を目的とした運用に向いています。
🔹三菱UFJプライムバランス(成長型)(確定拠出年金向け)(運用会社:三菱UFJアセットマネジメント)
「安定成長型」と同じシリーズで、株式比率を高めたやや積極運用型のファンド。
長期的なリターンを重視しつつも、国内外の債券・REITでリスク分散を行います。
将来の資産形成を重視する若年層や、リスク許容度の高い加入者に適しています。
🔹マイバランス50(確定拠出年金向け)(運用会社:野村アセットマネジメント)
株式50%・債券50%を目安に構成された、中リスク・中リターンの基本形バランスファンド。安定と成長のバランスを取りながら、国内外に広く分散投資します。確定拠出年金の加入者が「過度なリスクを取らずに長期運用したい」ときに選びやすい商品です。
バランスファンドのまとめ #
バランスファンドは、1本で複数の資産や地域に分散投資できる便利な投資信託です。
投資初心者にも扱いやすく、長期的な資産形成や老後の安定運用に適しています。自分のリスク許容度に合ったタイプを選び、つみたてNISAやiDeCoなどで継続的に活用することで、安定したリターンを目指すことができます。