投資信託では、委託会社(運用会社)が倒産しても、投資信託の財産は安全に保護される仕組みが整っています。
資産保護の仕組み:分別管理とは #
投資家から集められた資金は、投資信託会社と信託契約を結んだ受託会社(信託銀行)が「信託財産」として保管・管理しています。
信託銀行が、この「信託財産」を自行の資産や他からの信託財産とは分別して管理することを分別管理と言います。このため、運用会社が破綻しても、運用会社が負債を弁済するために投資家の資金を使うことはできません。運用会社は信託財産の運用の指図を行う権利を持っていますが、信託財産の管理や処分をする権利は受託銀行が持っているからです。
運用会社が倒産した場合の原則的な対応 #
ただし、委託会社が倒産した場合、投資信託は償還されることになり(繰上償還)、償還されると、投資信託の資産を換金して投資家に返却します。
→「繰上償還とは?」
委託会社が破綻した例:あいグローバル・アセット・マネジメント #
あいグローバル・アセット・マネジメント株式会社は、2021年2月以降、金融庁からの業務停止命令および業務改善命令を受けていましたが、その後、2021年12月24日に金融商品取引業の登録が取り消されました。同社は投資信託の運用管理の実態が把握されておらず、顧客資産の適切な管理ができていなかったことが問題視され、登録取り消しに至りました。また、登録取り消しと同時に、金融庁から次の業務改善命令が出されました。
- 全受益者及び顧客に対して、登録取消し、本命令の内容及び処分の理由について、速やかに、かつ、適切に説明するとともに、当該事項をホームページに掲示すること。
- 投資信託の償還等、金融商品取引業に係る全ての業務を速やかに結了させること。また、そのための人的構成を維持すること。
- 運用財産について、受益者間における公平に配慮しつつ、受益者の保護に万全の措置を講じること。
- 会社財産を不当に費消しないこと。
- その他、運用財産及び顧客保護のために必要な対応を行うこと。
同社が2021年当時運用していた公募投資信託「あい・パワー・ファンド」は、約款に定める、「信託契約に関する監督官庁の命令」により、2021年6月9日に償還し、投資家に1口当たり10,609円67銭の償還金が返却されています。
委託会社が業務から撤退するケース #
委託会社の倒産ではなく、委託会社が業務を終了する、あるいは外資系運用会社が日本から撤退するというケースにおいては、委託会社は業務を終了する前、あるいは日本を撤退する前に、ファンドの運用を引き継いでくれる運用会社を探して、ファンドの運用はその会社が継承する傾向にあります。
PayPayアセットマネジメントの事例 #
PayPayアセットマネジメントは、2025年9月末を目途に事業を終了する予定です。ファンドについては、一部のファンドは運用会社をアセットマネジメントOne株式会社に変更し、残りのファンドは繰上償還されました。
- 運用会社の変更(ファンド移管): PayPayアセットマネジメントが運用していた多くの投資信託は、アセットマネジメントOne株式会社にファンドが移管されました。これにより、投資家は引き続きその投資信託を保有し、新たな運用会社の下で運用が継続されます。銘柄名が変更されるケースもありますが、基本的な運用方針は引き継がれることが多いです。
- 繰上償還(ファンドの清算): 次の4本の投資信託については、繰上償還(ファンドの清算)が実施されました。これは、ファンドが終了し、投資家に資金が払い戻されることを意味します。
- PayPay投信バランスライト(2025年3月25日繰上償還)
- PayPay投信 米国株式インデックス(2025年3月25日繰上償還)
- PayPay投信 NASDAQ100インデックス(2025年6月16日繰上償還)
- PayPay投信 NYダウインデックス(2025年6月16日繰上償還)
運用会社の倒産のまとめ #
投資信託は、運用会社が倒産・撤退しても、信託銀行による分別管理で投資家の資産は保護されます。運用会社倒産時は原則償還、事業撤退時は他社へファンドが移管されることが多く、PayPayアセットマネジメントが事業終了した際にもファンド移管と一部償還で対応しました。