日本で直接投資できないBDC #
米国のBDC(Business Development Company、ビジネス開発会社)は、銀行融資を受けにくい中小企業や新興企業に資金を供給する投資会社で、高配当を特徴としています。米国のBDC株式に直接投資するのは、日本の個人投資家には証券会社や規制の関係で難しいのが現状です。そこで、日本ではBDCを投資対象とした投資信託(BDCファンド)が提供されており、これを通じて間接的に米国BDC市場にアクセスできます。
→BDCそのものの仕組みや制度については、別記事「BDCとは?」をご覧ください。
日本におけるBDCファンド #
日本でも、2013年頃からBDCを投資対象とする投資信託が運用されるようになりました。2025年9月時点ではアモーヴァ・アセットマネジメントのシリーズ(全9本)だけです。現在運用されているファンド例は以下のとおりです。
• 新・ミューズニッチ米国BDCファンド(為替ヘッジあり・年2回決算型)(アモーヴァ・アセットマネジメント)
• 新・ミューズニッチ米国BDCファンド(為替ヘッジあり・毎月分配型)(アモーヴァ・アセットマネジメント)
• 新・ミューズニッチ米国BDCファンド(為替ヘッジなし・年2回決算型)(アモーヴァ・アセットマネジメント)
これらのBDCファンドを通じて、日本の個人投資家も間接的にBDCへ投資し、新興企業の成長に参加できるようになっています。米国のBDCは直接投資が難しいため、投資信託を活用することでアクセスの道が開かれている点がポイントです。
BDCファンドの主なリスク #
BDCファンドに投資する場合、投資信託という仕組みを通じて間接的にBDCへ投資することになるため、以下のようなリスクがあります。
- 信用リスク(デフォルトリスク)
ファンドが投資対象とするBDCは、銀行融資を受けにくい中小企業や新興企業に貸し付けを行っています。これらの企業は財務基盤が弱く、景気後退時には債務不履行に陥る可能性が比較的高いため、その影響がBDCファンドの運用成績に波及することがあります。 - 金利変動リスク
BDCは中小企業向けの 変動金利型ローン を多く保有しています。変動金利ローンは市場金利の動きに合わせて利率が定期的に見直されるため、金利の変動がBDCファンドの収益に直接影響します。- 金利上昇時:貸出金利も上昇するため、BDCが受け取る利息収入は増え、収益にプラス要因となります。ただし、借り手企業の返済負担が増えるため、債務不履行(デフォルト)リスクが高まる可能性があります。
- 金利低下時:貸出金利が下がるため、BDCの利息収入が減り、収益性が低下します。借り手にとっては返済負担が軽減されるため、信用リスクは低下する傾向があります。
- 市場価格変動リスク
多くのBDCは米国市場に上場しており、その株価は需給や投資家心理によって大きく変動します。BDC株価の下落は、ファンドの基準価額にも直接影響を及ぼします。特に信用不安や金利上昇局面では基準価額が下がる可能性があります。 - 流動性リスク
日本の投資家はBDC株に直接投資できず、ファンドを通じて間接的に投資する形になります。BDC株自体の出来高が少ない場合や、BDCファンドの純資産規模が小さい場合、換金時に不利な価格で取引せざるを得ないことがあります。 - 為替リスク
BDCファンドは米ドル建て資産を通じて運用されるため、円ドル相場の変動が投資成果に影響します。為替ヘッジありのファンドでも、ヘッジコストが上昇するとリターンが抑えられる可能性があります。 - 分配金減少リスク
BDCは利益の90%以上を分配することで法人税を免除されていますが、業績悪化により分配可能利益が減少すれば、BDC株からの配当が減少します。その結果、BDCファンドが投資家に支払う分配金も減少するリスクがあります。
BDCファンドのリスクは多岐にわたります。投資を検討する際は、必ず目論見書や運用報告書を確認し、自身のリスク許容度に応じて判断することが大切です。
BDCファンドのまとめ #
BDCファンドは、日本の個人投資家にとって米国のBDC市場に参加するための数少ない手段です。直接投資が難しいBDC株式に代わり、投資信託を通じて成長企業に間接的に関与できる点が大きな魅力です。一方で、高配当のメリットがある反面、信用リスク・金利リスク・為替リスクなど複合的なリスクも抱えています。そのため、投資を検討する際には分散投資の一部として位置づけ、目論見書や運用報告書を確認しながら、自身のリスク許容度に応じて活用することが重要です。
👉 BDCの仕組みや代表的な企業については、別記事「BDCとは?」で解説しています。