債券ETFの基本 #
債券ETF(Bond ETF)とは、国債や社債といった債券に投資する上場投資信託(ETF)のことです。特定の債券指数に連動するよう設計されており、株式ETFと同じように証券取引所で売買できます。個人投資家にとって直接投資が難しい債券市場に、少額からアクセスできるのが最大の魅力です。
👉 ETFは証券取引所に上場しているため、非上場の債券インデックスファンドと異なり、株式と同じようにリアルタイムで売買できる点が大きな特徴です。
なぜ債券ETFが注目されるのか #
- 手軽さと流動性
債券は本来、数百万円、数千万円単位で取引されることが多く、個人が直接売買するにはハードルが高い商品です。債券ETFを利用すれば、株式と同じように市場で1口数千円から数万円程度から売買でき、必要に応じてすぐに現金化することも可能です。 - 分散効果
ETFは複数の債券を組み合わせたポートフォリオなので、特定の国や企業に依存せず、幅広い発行体に分散して投資できます。債務不履行(デフォルト)のリスクを単一の債券に集中させない点は、個人投資家にとって大きな安心材料です。 - 透明性
多くの債券ETFは毎日、組入れ銘柄や構成比率をPCF(Portfolio Composition File)として公開しています。ファンドの中身が見えにくい従来の投資信託に比べて透明性が高く、投資家は「どの債券に投資しているか」を確認しやすい仕組みになっています。→PCFについてもっと詳しく「PCFとは?」 - 運用コストが低い
非上場の債券投資信託に比べて管理費用(信託報酬)や売買手数料が低めに設定されていることが多く、長期投資にも向いています。
債券ETFのリスク #
「債券=安全」というイメージは強いですが、債券ETFにも注意すべきリスクがあります。
- 金利リスク:金利が上がると債券価格は下がり、ETFの価格も下落します。特に残存期間の長い国債ETFほど金利変動に敏感で、下落幅が大きくなります。
👉 例えば、NEXT FUNDS 国内債券・NOMURA-BPI総合(2510)は、長期国債を多く含むインデックスに連動しているため、2020年以降の金利上昇局面で基準価額が下落しました。ただし、国内債券ETFには短期国債に特化した商品や物価連動国債を対象とする商品もあり、必ずしもすべてが同じように金利変動の影響を大きく受けるわけではありません。 - 信用リスク:社債や新興国債券では、発行体の信用悪化による債務不履行リスクがあります。
- 為替リスク:外貨建て債券に投資するETFでは、為替相場の変動がリターンに直結します。ただし、為替リスクを抑えるために「為替ヘッジあり」のETFも提供されています。ヘッジなしは為替の影響を受ける分、リスクとリターンが大きくなり、ヘッジありは安定する一方でヘッジコストがリターンを圧迫する可能性があります。
- 市場価格と基準価額の乖離:ETFは市場で売買されるため、需給によっては純資産価値(NAV)と価格が乖離することもあります。
金利上昇局面における債券ETFの活用戦略 #
金利が上昇すると既存の債券価格は下落し、債券ETFの基準価額も値下がりしやすくなります。そのため、「金利上昇時は債券ETFを避けるべきか?」と考える投資家も多いでしょう。しかし、債券ETFは投資の目的によって活用法が異なります。
- 短期的な値動きを気にするなら注意が必要
特に長期債を主な投資対象とするETFは金利変動に敏感で、金利上昇局面では価格下落リスクが大きくなります。短期売買を狙う投資家には不向きです。 - 長期的には利回り改善のチャンス
金利が上昇すると新発債の利回りが高くなり、ETFの組入れ債券も順次入れ替わるため、時間の経過とともに利回り水準は改善していきます。長期保有を前提とするなら、むしろ魅力的な投資機会になることもあります。 - 短期債ETFでリスクを抑える
金利上昇局面では、残存期間の短い国債や短期債に投資するETFを選べば、価格変動を抑えつつ利回りを享受できます。 - 分散投資の一部として位置づける
株式市場と異なる値動きをする債券ETFは、ポートフォリオ全体のリスクを下げる効果があります。値上がり益を狙うのではなく、「安定収益」と「分散効果」を目的に活用するのが基本です。
東京証券取引所に上場している債券ETFの種類(投資対象別) #
東京証券取引所に上場している債券ETFは、2025年9月現在、国内国債ETF、外国国債ETF、新興国債券ETF、社債ETFの4種類に大別されます。国内債券ETFの中だけを見ても、長期国債型に限らず、中期・短期や物価連動国債を対象にした商品も存在します。株式ETFに比べて銘柄数は少ないものの、安定収益や分散投資の一部として、個人投資家にとって有効な選択肢です。
👉 ただし、海外の代表的な債券ETF(例:米国のAGGやTLTなど)と比べると、日本市場の債券ETFは規模が小さく、取引高や流動性が限られている点には注意が必要です。
国内債券ETFの分類図 #

主な債券ETF一覧 #
| 分類 | 銘柄名 | 銘柄コード | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 国内国債ETF | NEXT FUNDS 国内債券・NOMURA-BPI総合 | 2510 | 日本国債を広くカバー、安定性重視 |
| iシェアーズ・コア 日本国債 ETF | 2561 | 日本国債中心、低コスト | |
| iシェアーズ 日本国債7-10年ETF | 236A | 中期ゾーンの国債に特化 | |
| NEXT FUNDS 日本物価連動国債 ETF | 2514 | 物価連動国債に投資、インフレヘッジに有効 | |
| 外国国債ETF | 上場インデックスファンド海外債券(FTSE WGBI・為替ヘッジなし) | 1677 | 世界国債指数に連動、ヘッジなし |
| NEXT FUNDS 外国債券(FTSE世界国債・除く日本・ヘッジなし) | 2511 | 先進国中心、ヘッジなし | |
| NEXT FUNDS 外国債券(FTSE世界国債・除く日本・ヘッジあり) | 2512 | 先進国中心、ヘッジあり | |
| iシェアーズ・コア 米国債7-10年ETF(為替ヘッジあり) | 1482 | 米国国債(中期)に投資 | |
| 上場インデックスファンド米国債券(為替ヘッジなし) | 1486 | 米国国債に投資、為替影響を受ける | |
| 上場インデックスファンド米国債券(為替ヘッジあり) | 1487 | 米国国債に投資、為替リスク軽減 | |
| iシェアーズ 米国債1-3年ETF | 2620 | 米国短期国債に特化 | |
| iシェアーズ 米国債20年超ETF(為替ヘッジあり) | 2621 | 米国超長期国債に特化 | |
| 新興国債券ETF | 上場インデックスファンド新興国債券 | 1566 | 新興国の現地通貨建て国債に投資 |
| ABF汎アジア債券インデックス・ファンド | 1349 | アジア諸国の国債に分散投資 | |
| 社債ETF | iシェアーズ 米ドル建て投資適格社債 ETF(為替ヘッジあり) | 1496 | 米国投資適格社債に投資 |
| iシェアーズ 米ドル建てハイイールド社債 ETF(為替ヘッジあり) | 1497 | 米国ハイイールド社債に投資、高利回りを狙う |
債券ETFのまとめ #
債券ETFは、従来は機関投資家しか参加できなかった債券市場に、個人投資家が気軽にアクセスできるツールです。
「安定的な利回りを確保したい」「株式以外の資産に分散したい」というニーズに応え、国内外の国債、社債、新興国債券まで幅広い選択肢があります。
一方で、金利変動や信用リスクなどのリスクも避けられないため、自分の投資目的やリスク許容度に応じて活用することが重要です。