フロンティア市場とは、新興国市場(エマージング・マーケット)よりもさらに未成熟で、規模や流動性が小さい国の金融市場を指します。近い将来において新興市場の仲間入りが期待できそうな国々であり、次世代の新興市場と目されている国々の市場です。
【フロンティア諸国・市場のイメージ】

指数会社によるフロンティア市場の定義 #
フロンティア市場については、金融市場において統一された定義があるわけではありませんが、指数会社などが独自に定義してフロンティア市場の株価指数を算出・公表しています。
例えば、世界的な指数算出会社であるMSCI社では、「MSCI フロンティア・マーケット・インデックス」というフロンティア市場諸国の企業の株価動向を示す指数を算出・公表しています。
同社では、フロンティア市場諸国を、新興市場諸国の中でも、国が小さく、未成熟で流動性が低い国のこととしており、「MSCI フロンティア・マーケット・インデックス」には2025年6月現在、28カ国が構成国に含まれています。
フロンティア市場構成国28カ国は次の通り:
バーレーン、バングラデシュ、ベニン、ブルキナファソ、クロアチア、エストニア、ギニアビサウ、アイスランド、コートジボワール、ヨルダン、カザフスタン、ケニア、ラトヴィア、リトアニア、モーリシャス、モロッコ、マリ、ニジェール、オマーン、パキスタン、ルーマニア、セネガル、セルビア、スロベニア、スリランカ、トーゴ、チュニジア、ベトナム
(出所:MSCI HP、2025年6月20日現在)
同じく世界的な指数算出会社であるS&P社も、フロンティア市場を対象とした「S&P Frontier Broad Market Index」を算出しています。S&PフロンティアBMIは、新興国市場の水準にまだ達していない、小規模で流動性の低い市場に属する、500銘柄以上の株式のパフォーマンスを測定する指数として設計されています。
同指数の構成国は次の通り:
アルゼンチン、ベトナム、モロッコ、ルーマニア、カザフスタン、アイスランド、パナマ、スロベニア、パキスタン、オマーン、ヨルダン、バングラディッシュ、クロアチア、モーリシャス、ケニア、バーレーン、キプロス、トリニダード・トバゴ、ジャマイカ、スリランカ、コートジボワール、リトアニア、チュニジア、エストニア、ブルガリア、ボツワナ、ガーナ、ナミビア、ラトビア、スロバキア(出所:S&P factbook, 2025年3月)
フロンティア市場・フロンティア諸国と呼ばれる国々は、各国の経済発展の状況によりその顔ぶれも変化していきます。また、特定の地域のフロンティア市場の場合、欧州フロンティア市場、アジアフロンティア市場といった呼び方をします。
フロンティア市場の一般的な特徴 #
特徴 | 内容 |
---|---|
経済規模 | 小さい |
金融市場の成熟度 | 未発達(株式市場が小規模・未整備) |
流動性 | 低い(売買が成立しづらいことも) |
規制や透明性 | 不十分なことも多く、投資リスクが高め |
成長性 | 非常に大きい可能性あり |
将来的に高い成長は期待されるものの、リスクが極めて高い投資対象であると言えます。
フロンティア市場を対象とするETFの登場 #
フロンティア市場を対象とするETF「iシェアーズ フロンティア株ETF(MSCI フロンティア100)(1583)」が、2013年7月17日に東京証券取引所に上場しましたが、2018年1月22日に上場廃止になっています。同ETFは、フロンティア・マーケットの主要100銘柄の株式で構成されている指数である「MSCI フロンティア・マーケット 100 インデックス(税引後配当込み)」への連動を目指すETFで、ブラックロック社が運用していました。
フロンティア市場を対象とする投資信託 #
フロンティア市場を対象とする投資信託は株式に投資するファンドだけでなく、債券に投資するタイプのファンドもあります。
- グローイング・フロンティア株式ファンド
フロンティア諸国において、持続的に高い利益成長が見込まれる企業の株式等に投資する。 - ハーベスト アジア フロンティア株式ファンド
主として、①バングラデシュ ②モンゴル ③カザフスタン ④スリランカ ⑤ベトナム等の企業及び当該各国で主な事業展開をする企業の上場株式等に実質的に投資する。 - フロンティア・ワールド・インカム・ファンド(年1回決算型)
主として新興国の政府または政府機関などが発行する債券に実質的に投資する。 - りそな東欧フロンティア株式ファンド
チェコ、トルコ、ハンガリー、ポーランド、ロシアのいずれかで上場または取引されている株式等を主要投資対象とするファンド。
フロンティア市場のまとめ #
フロンティア市場とは、新興国よりもさらに経済・金融面で未成熟で、市場規模や流動性が小さい国の金融市場を指します。将来的に新興国市場への成長が期待される「次世代の新興市場」と位置づけられ、高い成長ポテンシャルを持つ一方で、規制の不透明さや市場の未整備などから投資リスクも大きいのが特徴です。MSCIやS&Pなどの指数会社が独自に定義し、対象国の株式を組み入れた指数や投資商品が存在します。