投資信託の投資対象の一つにハイグレード債券があります。ハイグレード債券とは、債券の中でも、格付けが高い債券のことを指します。ハイグレードのハイは英語のhighで高いという意味、グレードは英語のgradeで等級を意味しています。
格付について #
債券は格付機関と呼ばれる専門機関により格付けが付与されています。格付けは、債券の元本と利息の相対的な支払能力、つまり元本がきちんと返却されるか、約束された利息を支払う能力があるのかについての信用力をランク付けしたもので、格付機関が独自にアルファベットなどの記号を使用して表示・公表しています。
→信用格付業者登録一覧(金融庁)
この格付けにより債券は大きく「投資適格」か「投機的」かに分類されます。代表的な格付機関であるムーディーズの場合は「Baa」格以上、スタンダード・アンド・プアーズの場合は「BBB」格以上に格付けされた債券を「投資適格債」と呼び、それより低い格付けの債券を投機的格付債と呼びます。ハイグレード債券は、この投資適格債券の中でも、一般に上位2位までのものを指しますので、最も格付けが高い、信用力の高い債券ということになります。
したがって、ハイグレード債券に的を絞って投資するファンドは、そうでないファンドよりもリスクが低く抑えられていることを意味しますが、その分、期待できるリターンも低くなります。
具体的にどの格付けの債券を投資対象とするかは、ファンドにより異なり、投資対象債券の詳細はファンドの目論見書に記載されています。
【ハイグレード債券を投資対象とするファンドの目論見書の記載例】
- 公社債の格付けは取得時においてAA格相当以上とすることを基本とします。
- 国債の格付けは、取得時においてA格相当以上、国債以外の格付けは、取得時においてAA格相当以上とすることを基本とします。
- 米ドル建の公社債等の投資にあたっては、取得時において、AA格相当以上とすることを基本とします。
代表的なハイグレード債券の発行主体 #
ハイグレード債券に分類される発行体は、財務基盤が安定しており、信用リスクが低いと評価されています。投資信託がこうした債券を組み入れることで、価格変動リスクを抑えながら、安定的な利息収入を目指す運用が可能となります。ただし、信用力が高い分、利回りは相対的に低くなる傾向があります。
例として、以下のような発行体の債券がハイグレード債券に該当します:
- 日本や米国などの先進国の国債(例:米国財務省債券)
- 政府系金融機関(例:国際復興開発銀行[IBRD]、アジア開発銀行[ADB])
- 格付けの高い大企業(例:トヨタ、マイクロソフト、ネスレなど)
ハイグレード債券ファンドとハイイールド債券ファンドの違い #
ハイグレード債券ファンドと対照的な存在として、ハイイールド債券(低格付け債)に投資するファンドがあります。両者は投資対象の信用格付けが異なるため、リスクとリターンの特性にも大きな違いがあります。以下に主な違いをまとめます。
【ハイグレード債券ファンドとハイイールド債券ファンドの比較表】
比較項目 | ハイグレード債券ファンド | ハイイールド債券ファンド |
投資対象 | AA格以上などの高格付け債券 | BB格以下などの低格付け債券 |
リスク | 低め | 高め |
リターン | 控えめ | 高めを期待できる |
価格変動性 | 比較的安定 | 市場変動の影響を受けやすい |
主な投資家層 | 安全志向の長期投資家 | リスク許容度の高い投資家 |
ハイグレード債券ファンドの例 #
- りそなハイグレード・ソブリン・ファンド(毎月決算型)
国債、政府機関債、中央政府により発行・保証された債券、国際機関債に投資。国債の格付けは、取得時においてA格相当以上、国債以外の格付けは、取得時においてAA格相当以上とすることを基本とする
- ハイグレード・オセアニア・ボンド・オープン(年1回決算型)
オーストラリア・ドル建ておよびニュージーランド・ドル建ての公社債等に投資。公社債等の格付けは、取得時においてAA格相当以上とすることを基本とする。
- ハイグレード・オセアニア・ボンド・オープン(年2回決算型)
オーストラリア・ドル建ておよびニュージーランド・ドル建ての公社債等に投資。公社債等の格付けは、取得時においてAA格相当以上とすることを基本とする。
- ダイワ高格付カナダドル債オープン(年1回決算型)
カナダ・ドル建ての公社債等に投資。投資対象の公社債等の格付けは、取得時においてAA格相当以上とすることを基本とする。
- ピクテ・ユーロ最高格付国債インカム・ファンド(毎月決算型)
ユーロ圏の国債に投資。国債の中でも、最も信用力の高い最高格付に投資。投資対象国債の最低格付は原則としてA格相当とする。
- DIAM高格付インカム・オープン(毎月決算コース)
主として“高格付資源国”の公社債に投資。投資対象となる公社債は、国債を中心に信用度の高いAA格以上の格付を取得しているとともに、流動性の高い銘柄とする。
ハイグレード債券のまとめ #
ハイグレード債券とは、格付機関によって高い信用格付け(一般にAA格以上)を付与された、信用リスクの低い債券のことです。投資適格債券の中でも特に信用力が高く、安全性を重視する投資家に選ばれやすい一方、リターンは比較的低めに抑えられる傾向があります。ファンドにより格付けの基準は異なり、目論見書で確認することが重要です。