JPX日経インデックス400の概要 #
JPX日経インデックス400(英語表記:JPX Nikkei Index 400)は、投資家にとって魅力ある企業を選定することを目的に、日本取引所グループ(JPX)と日本経済新聞社が共同で開発した株価指数です。
2014年1月6日から算出が始まり、ROE(自己資本利益率)やガバナンス、情報開示の充実度などの質的要素を重視して400銘柄が選ばれています。
この指数は、単に規模の大きい企業を集めたものではなく、資本の効率性や投資家を意識した経営姿勢、財務の健全性などを評価基準として銘柄を選定する点が特徴です。
構成と選定基準 #
JPX日経インデックス400は、東京証券取引所に上場する銘柄の中から400銘柄を選び、時価総額や売買代金などの定量的な基準に加えて、以下の要素を考慮して選定されます。
- ROE(自己資本利益率):資本をどれだけ効率的に利益に結びつけているか
- 営業利益:安定した収益基盤を持っているか
- 市場評価:時価総額や流動性が十分にあるか
- ガバナンス・ディスクロージャー:企業統治や情報開示の水準が高いか
このように、JPX日経インデックス400は、単に規模の大きい企業を集めた指数ではなく、企業の収益力や経営の質を重視して選ばれた銘柄で構成されています。
指数の目的と意義 #
この指数が作られた背景には、かつて日本企業が抱えていたROEの低さや資本効率の悪さという課題があります。
JPX日経インデックス400は、企業が投資家にとって魅力的な経営を行うよう促す「モチベーション」としての役割も期待されています。
TOPIXが“日本株市場全体の鏡”であるなら、JPX日経インデックス400は“投資家に選ばれる企業の鏡”といえるでしょう。
日経平均株価との違い #
JPX日経インデックス400と日経平均株価(Nikkei 225)は、どちらも日本を代表する株価指数ですが、目的や算出方法、構成銘柄の選定基準が大きく異なります。両者の主な違いを以下にまとめます。
| 比較項目 | JPX日経インデックス400 | 日経平均株価 |
|---|---|---|
| 算出開始時期 | 2014年1月 | 1950年9月 |
| 算出主体 | 日本取引所グループ(JPX)・日本経済新聞社 | 日本経済新聞社 |
| 構成銘柄数 | 400銘柄 | 225銘柄 |
| 構成銘柄の選定基準 | ROE、営業利益、ガバナンスなど「企業の質」を重視 | 業種バランスと市場を代表する流動性の高い銘柄 |
| 算出方法 | 時価総額加重平均型 | 株価平均型(株価の高い銘柄の影響が大きい) |
| 主な特徴 | 資本効率やガバナンスに優れた「投資家に選ばれる企業」を重視 | 日本経済全体の動向を示す代表的指数 |
日経平均株価が「経済の温度計」であるのに対し、JPX日経インデックス400は「投資家視点で企業の質を映す鏡」といえます。
また、JPX日経インデックス400はROEなどの経営指標を重視するため、ガバナンス改革や株主重視経営を促すインセンティブとしても機能しています。
JPX日経インデックス400配当込み指数と配当なし指数の違い #
JPX日経インデックス400には、「配当込み(Total Return)」と「配当なし(Price Return)」の2種類があります。
一般的にニュースやETFなどで参照されるのは「JPX日経インデックス400(配当なし)」ですが、実際の投資リターンをより正確に反映するのは「配当込み指数(JPX日経インデックス400(配当込み))」です。
| JPX日経インデックス400(配当なし) | JPX日経インデックス400(配当込み) | |
|---|---|---|
| 英語表記 | JPX Nikkei Index 400 (Price Return) | JPX Nikkei Index 400 (Total Return) |
| 算出方法 | 株価変動のみを反映 | 株価変動に加え、配当金を再投資した効果も反映 |
| 目的 | 市場全体の価格変動を示す | 投資家が得られる実質的なトータルリターンを示す |
| 利用例 | 株価指標やETFの連動対象 | 投資パフォーマンス評価や運用成果比較に利用 |
「配当込み指数」は、構成銘柄から支払われる配当金を再投資したと仮定して算出するため、長期的なリターン評価やファンド運用成果の比較に適しています。一方、株価の動きそのものを追う際は「配当なし指数」が用いられます。
JPX日経インデックス400の上位構成銘柄 #
2025年10月末現在、上位構成銘柄は次のとおりです。
| 銘柄 | コード | 業種 | 構成比率(%) |
|---|---|---|---|
| ソフトバンクグループ | 9984 | 情報通信・サービスその他 | 3.27 |
| アドバンテスト | 6857 | 電機・精密 | 2.19 |
| 三菱商事 | 8058 | 商社・卸売 | 1.76 |
| 三菱重工業 | 7011 | 機械 | 1.76 |
| みずほフィナンシャルグループ | 8411 | 銀行 | 1.74 |
| 三井物産 | 8031 | 商社・卸売 | 1.64 |
| 日立製作所 | 6501 | 電機・精密 | 1.61 |
| トヨタ自動車 | 7203 | 自動車・輸送用機器 | 1.60 |
| 東京エレクトロン | 8035 | 電機・精密 | 1.57 |
| 三井住友フィナンシャルグループ | 8316 | 銀行 | 1.55 |
(出所:JPX日経インデックス400 FactSheet)(※)業種はTOPIX-17シリーズによる
JPX日経インデックス400の業種別内訳 #
JPX日経インデックス400の業種別構成を見ると、電機・精密(約21%)や情報通信・サービス(約15%)が大きな割合を占めています。これらの分野は、日本の技術力やイノベーションを牽引する中核産業といえます。
続いて、商社・卸売(約8%)、機械(約7%)、自動車・輸送用機器(約7%)など、製造業および輸出関連産業が上位に位置しており、日本経済の構造を反映しています。
また、銀行(約6%)とその他金融(約6%)を合わせると金融セクター全体で約12%を占めており、産業バランスの取れた構成となっています。
全体として、JPX日経インデックス400は幅広い業種をバランスよく網羅しつつ、成長性と資本効率を重視する構成が特徴です。

(※)業種はTOPIX-17シリーズによる
運用と投資への活用 #
JPX日経インデックス400は、投資信託やETF(上場投資信託)の運用ベンチマークとしても広く利用されています。
代表的なETFは次の通りです。
| コード | ETF名 | 対象指数 | 運用会社 |
|---|---|---|---|
| 1591 | NEXT FUNDS JPX日経インデックス400連動型上場投信 | 配当込み | 野村アセットマネジメント |
| 1592 | 上場JPX日経インデックス400 | 配当なし | 日興アセットマネジメント |
| 1593 | MAXIS JPX日経インデックス400上場投信 | 配当なし | 三菱UFJアセットマネジメント |
| 1474 | One ETF JPX日経400 | 配当なし | アセットマネジメントOne |
| 1599 | iFreeETF JPX日経400 | 配当込み | 大和アセットマネジメント |
| 1364 | iシェアーズ JPX日経400 ETF | 配当込み | ブラックロック・ジャパン |
| 2526 | NZAM 上場投信 JPX日経400 | 配当込み | 農林中金全共連アセットマネジメント |
これらのETFを通じて、個人投資家もJPX日経インデックス400に連動した分散投資を行うことができます。
JPX日経インデックス400のまとめ #
JPX日経インデックス400は、単なる株価指数を超え、日本企業にガバナンス改革と資本効率の改善を促す仕組みとして注目されています。
「規模」よりも「質」、そして「株主を意識した経営」を重視するこの指数は、日本の資本市場の成熟を象徴する存在といえます。