信託財産留保額は投資信託特有のコストのひとつで、投資家がファンドを解約(換金)するときに、その解約代金から差し引かれる金額を指します。
信託財産留保額の役割 #
- 既存投資家を守るための仕組み
ファンドから一部の投資家が資金を引き出すと、運用会社はその分の資産(株や債券など)を売却して現金化しなければなりません。その際に売却コスト(売買手数料や市場への影響による価格変動)が発生します。信託財産留保額は、このコストを解約者だけに負担させ、残っている投資家に不利益が及ばないようにするための「公平性を保つ仕組み」です。 - ファンドの安定運用に寄与
頻繁な解約があっても残存投資家が不利にならず、ファンド全体の基準価額の安定にもつながります。
信託財産留保額の設定 #
- 全てのファンドにあるわけではない
信託財産留保額が「ゼロ」のファンドも多く存在します。 - 典型的な料率
多くは 0.1%〜0.5%程度 が設定されています。
例:1,000万円を解約し、信託財産留保額が0.3%なら、3万円が差し引かれ、残りの997万円が解約代金として支払われます。
信託報酬との違い #
- 信託報酬:運用・管理に対して毎日かかるコスト(継続的な費用)
- 信託財産留保額:解約やスイッチングなど、資金を動かすときに一度だけ発生する費用
つまり、日常的にかかるコストではなく、売却を行う人だけが負担する仕組みです。
信託財産留保額は変更されることもある #
信託財産留保額は、運用会社の判断で変更や撤廃される場合があります。
例えば、さわかみ投信が運用する「さわかみファンド」は2014年3月7日に、それまで設定していた信託財産留保額を撤廃しました。これは投資家の利便性を高め、長期投資を促進する方針転換の一環として行われたものです。
一方で、「信託財産留保額なし」でスタートしたものの、解約の増加で売買コストが目立つようになり、既存投資家の不利益を避けるために0.1%〜0.3%の信託財産留保額が設定された事例や引き下げられた事例も稀にあります。
このように、信託財産留保額の有無や料率は、ファンドの運用方針や販売戦略によって見直されることがあります。そのため、解約や乗換を検討する際には、最新の目論見書や運用報告書を確認することが大切です。
信託財産留保額のまとめ #
信託財産留保額とは、投資信託を解約する際に差し引かれる費用で、解約による売却コストを解約者自身に負担させることで残っている投資家を保護する役割を持っています。ファンドによってはゼロの場合もありますが、設定されている場合は0.1%〜0.5%程度が一般的です。さらに、ファンドの方針により変更や撤廃されることもあるため、投資にあたっては必ず最新の目論見書を確認することが重要です。