指数の概要と目的 #
JPX/S&P 設備・人材投資指数は、日本の株式を対象に、設備投資や人材投資に積極的かつ効率的に取り組んでいる企業で構成される株価指数です。
企業の持続的な成長を支える「設備投資」と「人材育成」への姿勢を評価し、資本市場を通じて成長投資を促すことを目的としています。
名称の「JPX」は東京証券取引所などを傘下に持つ日本取引所グループ(Japan Exchange Group)を、「S&P」は世界的な指数算出会社であるS&P ダウ・ジョーンズ・インデックス社を指します。この指数は、両社が共同で算出・公表しており、基準日は2005年9月16日、同日の指数値を1000として算出されています。
構成銘柄の選び方 #
JPX/S&P 設備・人材投資指数は、東証株価指数(TOPIX)の構成銘柄を母集団とし、流動性や信用力、利益性、低ベータなどの基準をもとに銘柄を絞り込みます。
選ばれた企業について、「設備投資の成長性」「設備投資の効率性」「人材投資の充実度」の3項目でスコアを算出し、総合スコアの上位200社を構成銘柄としています。
各銘柄の組入比率は、総合スコアに浮動株調整後時価総額を掛け合わせて算出され、個別銘柄の上限は5%です。
構成銘柄の入れ替えは毎年9月に行われ、企業データに基づいて最新の状況を反映します。さらに、3月には半期見直しとしてウェイトの調整を実施します。
JPX/S&P 設備・人材投資指数の評価方法 #
(出所:S&P DJI公表『JPX/S&P 設備・人材投資指数 メソドロジー(2025年8月)』要約)
設備投資の成長性 #
企業の設備投資や研究開発(R&D)が過去と比べてどれだけ増えているかを評価します。
直近年度の投資額を過去数年の平均と比較し、継続的に投資を拡大している企業が高く評価されます。
財務データの異常値は統計的に調整され、極端な値が影響しないよう配慮されています。
設備投資の効率性 #
企業が行った設備投資が、どれほど売上などの成果につながっているかを測定します。
過去数年の投資額と直近の売上高を照らし合わせ、効率的に資本を活用している企業ほどスコアが高くなります。
単に投資額が多いだけでなく、「投資効果の高さ」が重視されます。
人材投資の充実度 #
S&P Global Sustainable が提供する人材投資スコアに基づき、人材への取り組みを定性的・定量的に評価します。
主な評価項目は次の3つです。
- 人材管理:教育・研修、離職率の低さ、長期的なインセンティブ制度など
- 労働慣行:男女平等、同一賃金、労働組合参加の自由など
- 人権対応:人権リスクの把握や監査体制の整備など
これらを総合したスコアによって、人材投資の質を測定します。
総合スコアの算出と採用基準 #
3つの指標(成長性・効率性・人材投資)を標準化して平均し、総合スコアを作成します。
スコア上位200銘柄が指数構成銘柄として採用され、構成比率は「企業規模(浮動株調整後時価総額)」と「スコア」を組み合わせて決定されます。
個別銘柄の組入上限は5%で、設備・人材の両面からバランスよく成長している企業群が指数に反映されます。
上位組入銘柄 #
2025年9月末時点の公表資料に基づく上位10銘柄の例は以下の通りです。
- 伊藤忠商事(8001)
- リクルートホールディングス(6098)
- 日本電信電話(NTT, 9432)
- NEC(6701)
- ソフトバンク(9434)
- 本田技研工業(7267)
- KDDI(9433)
- 日本たばこ産業(2914)
- 第一三共(4568)
- 武田薬品工業(4502)
(出所:S&P Dow Jones Indices Fact Sheet)
JPX/S&P 設備・人材投資指数に連動するETF #
東京証券取引所に上場する次の3本のETFが、同指数への連動を目指しています。
- 上場インデックスファンド日本経済貢献株(1481)
- iシェアーズ JPX/S&P 設備・人材投資 ETF(1483)
- One ETF JPX/S&P 設備・人材投資指数(1484)
JPX/S&P 設備・人材投資指数のまとめ #
JPX/S&P 設備・人材投資指数は、日本企業の成長基盤となる「設備投資」と「人材投資」に焦点を当て、その取り組みを定量的に評価する株価指数です。
TOPIXを母集団とし、財務指標や投資効率などの観点から優れた企業200社を選定して構成されています。
設備・人材の両面から企業の質的成長を測ることで、「投資の量」ではなく「投資の質」を重視する新しい視点を提供します。
現在は、日本企業の投資活動の質を測る指標として、長期的な経済分析やテーマ投資の参考指標として広く活用されています。