TIPS #
TIPSはTreasury Inflation-Protected Securitiesの略称で、日本語では、米国物価連動国債と訳されます。なお、Treasuryは米国の財務省のことで、Treasuriesは米国の財務省証券、つまり米国国債の総称です。また、米国の長期国債をTreasury bonds、中期国債をTreasury notes、短期国債をTreasury billsといいます。
TIPSはこの米国の国債の一つで元本が消費者物価指数の動きに連動して増減する国債です。インフレになれば元金が増加し、デフレになれば元金が減少します。利払いは年2回行なわれ、利率は発行時に固定されています。したがって、インフレにより元金が増加していれば、利払いも増加し(利率は固定)、デフレにより元金が減少すれば、利払いも減少します。このため、TIPSを含む物価連動国債は、インフレリスクをヘッジできる投資商品として注目されていますが、一方で、物価が下落した場合には、その下落率に応じて元金額や利払い額が減少するというデメリットもあります。
TIPSの満期は5年、10年、30年のものがあります(2024年9月現在)。TIPSは、他の債券と同様に、途中で売却することも、満期まで保有することも可能です。満期時には、インフレ調整後の元金か当初の元金のどちらか大きな方を満期金として受け取ることができます。米国では最低購入単位は100ドルで、個人でも財務省の「TreasuryDirect」米国財務省TreasuryDirectのTIPSのページから購入できますが、日本からは個人投資家が直接購入することはできません。
TIPSの特徴 #
- その名の通り、TIPSはインフレから投資家を守るために設定されている。
- 元本が固定されている他の財務省証券とは異なり、TIPSの元本は期間中に上下する可能性がある。
- TIPSが満期を迎えたとき、元本が当初の金額より高ければ、増加した金額を受け取ることができる。元本が当初の金額と同じか、それ以下の場合は、当初の金額を受け取ることになる。
- TIPSは満期まで半年ごとに固定金利が支払われます。調整後の元本に対して利息を支払うため、利息の支払額も変動する。
- TIPSは満期まで保有することも、満期前に売却することもできる。
日本の物価連動国債 #
日本にも、物価連動国債があります。国(財務省)が発行する債券(国債)で、元金額が物価の動向に連動して増減します。個人でも大手証券会社等にて購入することが可能です。最低額面金額を10万円で、満期は10年です。
物価連動国債を投資対象とする投資信託 #
日本の物価連動国債を組み入れた投資信託が運用されています。その一つがアセットマネジメントOneの運用する「MHAM物価連動国債F《未来予想》」です。同ファンドは、日本の物価連動国債に分散投資するファンドです。
日本の物価連動国債を投資対象とする投資信託 #
ファンド名 | 運用会社 |
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MHAM物価連動国債F《未来予想》 | アセットマネジメントOne |
日本物価連動国債ファンド | 大和アセットマネジメント |
東京海上セレクション・物価連動国債《うんよう博士》 | 東京海上アセットマネジメント |
eMAXIS国内物価連動国債インデックス | 三菱UFJアセットマネジメント |
DCダイワ物価連動国債F | 大和アセットマネジメント |
かつては、米国のTIPSに投資するファンドが運用されていましたが、2024年9月現在は運用されていません。
TIPS(米国物価連動国債)のまとめ #
TIPS(米国物価連動国債)は、元本が消費者物価指数に連動して変動する米国国債で、インフレリスクをヘッジできる特徴があります。満期時には調整後の元本または当初の元本の大きい方を受け取れますが、デフレでは元本と利息が減少するリスクがあります。一方、日本にも物価連動国債があり、投資信託を通じて分散投資が可能です。日本国内の投資信託では複数の商品が運用されていますが、米国のTIPSを対象としたファンドは現在運用されていません(2024年9月時点)。