不動産投資信託(J-REIT)の投資主優待制度とは、株式会社における株主優待制度と同様に、一定の投資口を保有する投資主に対して特典やサービスを提供する制度です。不動産投資信託では「株主」のことを「投資主」と呼ぶため、「株主優待」ではなく「投資主優待」と呼ばれています。
この制度は法令上の義務ではなく、投資法人が任意に導入・廃止できる制度です。そのため、導入するかどうか、またその内容は各投資法人の判断に委ねられており、永続的に提供される保証はありません。
制度のはじまりと廃止例 #
日本で最初に投資主優待制度を導入したのは、2009年10月13日に制度導入を発表したジャパン・ホテル・アンド・リゾート投資法人(JHR)です。JHRは、2012年4月1日に日本ホテルファンド投資法人と合併し、現在のジャパン・ホテル・リート投資法人(証券コード:8985)となりましたが、同法人の投資主優待制度はすでに廃止されています(2025年5月現在)。
同様に、過去にはタカラレーベン不動産投資法人(3492)や星野リゾート・リート投資法人(3287)なども投資主優待を導入していましたが、現在は実施していません。
投資主優待制度を導入している主なREIT(2025年5月現在) #
以下は、現在投資主優待制度を提供している代表的なJ-REITです。
インヴィンシブル投資法人(8963)
→ シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテルおよびマイステイズホテルグループの全ホテルに投資主優待価格で宿泊可能。
投資法人みらい(3476)
→ EN HOTEL、ホテルウィングインターナショナル、スマイルホテル等、複数のホテルブランドで宿泊料金割引の優待を提供。
ヘルスケア&メディカル投資法人(3455)
→ グリーンライフ株式会社などが運営する介護施設にて無料体験入居や入居一時金の割引優待を提供。
大和証券リビング投資法人(8986)
→ SOMPOケア株式会社等の介護施設で入居費用の割引や体験入居の提供。
いちごオフィスリート投資法人(8975)
→ Jリーグ全クラブ・全試合の観戦チケットを対象とした抽選式の投資主優待を実施。
利用条件と注意点 #
投資主優待を利用するには、基準日現在で一定数以上の投資口を保有していることが条件となります。また、優待内容には「保有期間」などの追加条件が設定されることもあり、投資法人ごとのIR資料で詳細を確認することが必要です。
加えて、優待制度は将来的に変更・縮小・廃止される可能性がある制度です。実際、費用対効果や公平性の観点から見直しを行うREITもあり、優待制度の継続性には十分な注意が必要です。
投資判断との関係 #
投資主優待制度は魅力的な特典を提供するものの、REITへの投資においては、本来の分配金利回りや保有資産の質、運用実績などを重視することが基本です。優待を主目的とした投資は、収益性やリスクの観点から適切な判断を損なう可能性があります。
投資主優待制度のまとめ #
投資主優待制度とは、J-REIT(不動産投資信託)の投資主に対して、宿泊施設の割引や介護サービスの優待などの特典を提供する、任意導入型の制度です。株式会社の株主優待制度と同様に、法的義務はなく、導入・変更・廃止は各投資法人の判断によって行われます。制度の魅力はありますが、投資判断においては分配金や運用内容とあわせて総合的に検討することが大切です。