投資運用業者とは、金融商品取引法に基づき、投資家に代わって資産の運用判断を行い、その判断に基づいて実際の運用を行う法人などを指します。具体的には、投資信託や投資法人の運用、投資一任契約に基づく資産運用、あるいは私募ファンドの運用などを行う業者がこれに該当します。
このような業務(=投資運用業)を行うには、金融商品取引法に基づき、内閣総理大臣の登録を受ける必要があります。登録を受けた業者には、「関東財務局長(金商)第○○○号」のような登録番号が付与されます。
なお、金融商品取引法第28条の4では、投資運用業を以下のように定義しています:
他人の計算において、有価証券等に関する投資判断を行い、これに基づいて当該有価証券等の売買その他の取引を行うことを内容とする契約に基づき、当該有価証券等の運用を行うこと。
投資運用業者となるには、一定以上の資本金を有すること、適切な業務運営体制(コンプライアンス、リスク管理、分別管理など)を備えていることが要件とされており、これらを審査された上で登録されます。こうした体制を備えることが、登録制度の信頼性を支える土台となっています。
2025年4月末現在、446社が「投資運用業者」として登録されています(金融庁公表資料より)。
投資運用業の種類 #
投資運用業には次の4つの種類があります。
- 投資信託委託業者
- 投資法人資産運用業者
- 投資一任業者
- ファンド運用業者
- 投資信託委託業者・・・投資信託の運用を行う会社です。投資信託委託会社といいます。
- 投資法人資産運用業者・・・投資法人・外国投資法人の運用会社です。不動産投資法人の資産運用業者などがこれに該当します。
- 投資一任業者・・・投資一任契約に基づき、投資者から投資判断や投資に必要な権限を委任され投資を行います。
- ファンド運用業者・・・信託受益権(投資信託の受益証券を除きます)又は集団投資スキームの権利者から出資された金銭等の自己運用で、運用資産の50%超を有価証券又はデリバティブ取引に係る権利に対する投資に充てます。「投資信託の受益証券を除く」というのは、一般的な公募投信は含まれず、主に私募ファンドや特定目的信託などが対象になります。
金融庁登録業者と未登録業者の違い #
- 金融商品取引法に基づく登録業者は、法令遵守義務、顧客情報保護義務、開示義務などが厳しく課されているため、信頼性が高い運用会社です。
- 一方、未登録業者(いわゆる無登録業者)は、詐欺的行為や不正勧誘の温床になるケースもあります。金融庁は定期的に「無登録業者リスト」を公表して注意喚起を行っています。ここに掲載されている無登録業者は、金融庁が警告書の発出を行った時点で無登録営業を行っていることが確認できた業者に限られています。そのため、掲載されていない業者でも、無登録営業に該当する行為を行っていることがあり得る点は注意が必要です。
- 「投資運用業者」と名乗る業者であっても、必ず金融庁の登録業者であるかを確認する習慣をつけることが重要。
投資運用業の登録業者については、金融庁の「金融商品取引業者登録一覧」の中の「投資運用業」の欄で確認できます。
投資運用業者の禁止行為 #
投資運用業者には、金融商品取引法に基づき、業務の適正性を確保するために多数の禁止行為(=やってはならない行為)が規定されています。これは投資者保護の観点から極めて重要です。
主な禁止行為(金融商品取引法第38条・第117条など)
以下は投資運用業者に該当する禁止行為の代表的なものです:
① 不当な利益供与(利益供与の禁止)
- 投資判断や取引の誘引として、顧客やその関係者に金品その他の利益を提供することは原則として禁止されています。
- 例:「契約してくれたらキャッシュバックします」といった営業手法
② 虚偽の説明・誤認を招く表示(虚偽記載・誇大広告の禁止)
- 商品や運用方針について事実と異なる説明や、誤解を与えるような説明をしてはなりません。
- 例:「絶対に損しない」「必ず儲かる」「年利10%保証」など
③ 顧客の利益に反する取引(自己取引との利益相反など)
- 顧客の資産を運用する際、自社の利益を優先してはなりません(利益相反の禁止)。
- 例:自社グループの商品ばかりを選んで顧客に不利な運用を行う
④ インサイダー取引の禁止(非公開重要情報の利用)
- 上場企業などの未公表の重要情報(インサイダー情報)を用いて、自己や他人の利益を図ることは禁止されています。
⑤ 顧客の財産の不正使用(分別管理義務違反)
- 顧客から預かった資産を、自社の資産と混同してはならず、厳格に分けて管理する必要があります。
⑥ 適合性原則違反(顧客の属性に合わない運用)
- 顧客の投資目的、知識、経験、財産状況等に照らして不適切な運用や説明を行うことは違反となります。
→「適合性の原則とは?」
⑦ 不当な手数料の徴収
- 法令や契約に基づかない過大な報酬・費用を徴収することは禁止されています。
違反した場合の措置 #
投資運用業者が上記のような禁止行為に違反した場合には、金融商品取引法に基づき、行政処分や刑事罰などの厳しい制裁を受けることがあります。違反の内容や重大性に応じて、以下のような措置が講じられる可能性があります。
- 金融庁からの業務改善命令
- 業務停止命令
- 登録の取消処分
- 課徴金の賦課や刑事罰の適用
投資家保護について #
投資運用業者に関するトラブルや苦情については、金融ADR制度に基づき「特定非営利活動法人 証券・金融商品あっせん相談センター(FINMAC)」が相談対応を行っています。登録業者はこの制度への加入が義務付けられており、投資家保護の一環となっています。
→「FINMACとは?」
投資運用業者のまとめ #
投資運用業者とは、投資家から預かった資金を運用する業務を行う法人で、金融商品取引法に基づき内閣総理大臣の登録が必要です。登録には、資本金や内部管理体制など一定の基準が求められます。投資信託やREITの運用を担う業者も含まれ、登録状況は金融庁の公表資料で確認できます。無登録業者による勧誘には注意が必要で、苦情対応はFINMACが担っています。