投資信託の中には、高い利回りを狙って、リスクの高い「ハイ・イールド債券」に投資するタイプの商品があります。ハイ・イールド債券の代表例の一つが、「コーポレート・ハイ・イールド債券(低格付けの社債)」です。
コーポレート・ハイ・イールド債券は、企業が資金調達のために発行する社債(コーポレート・ボンド)のうち、信用格付けが低く、投資不適格級(BB+/Ba1以下)と評価されたものを指します。英語では「ジャンク・ボンド(Junk Bond)」とも呼ばれますが、実際には一定の投資需要がある正当な金融商品です。
コーポレート・ハイ・イールド債券は、高い利回りが期待できる反面、発行体の信用リスク(債務不履行の可能性)も高いため、「ハイリスク・ハイリターン」の債券投資と位置づけられます。
定義と格付けの目安 #
コーポレート・ハイ・イールド債券について理解するには、まず「コーポレート・ボンド(社債)」と「ハイ・イールド」の意味を押さえておくことが重要です。あわせて、信用格付けによる分類についても知っておくと、リスクの大きさや投資対象としての性格が明確になります。
用語の定義 #
用語 | 意味 |
コーポレート・ボンド(社債) | 企業が資金調達のために発行する社債(Corporate Bond) |
コーポレート・ハイ・イールド債券 | 信用格付機関(S&P、Moody’sなど)により「投資不適格(BB+/Ba1以下)」と評価された企業の社債。高利回りだが信用リスクが高い |
格付けの目安と分類 #
格付け(S&P / Moody’s) | 説明 |
BBB/Baa3以上 | 投資適格(インベストメント・グレード) |
BB+/Ba1以下 | 投資不適格(ジャンク債、コーポレート・ハイ・イールド債券) |
高利回りの理由と注意点 #
コーポレート・ハイ・イールド債券は、信用力が相対的に低い企業が発行するため、投資家の関心を引くには高い利回り(クーポン)を提示する必要があります。そのぶん、デフォルト(債務不履行)や価格変動のリスクも大きく、景気が悪化する局面では価格が急落することもあります。
高利回りだから魅力的と思われがちですが、その背景にある信用リスクをしっかり理解しておく必要があります。
コーポレート・ハイ・イールド債券ファンドに投資する際の注意点 #
① 高利回り=高リスクという前提を理解する
- コーポレート・ハイ・イールド債券は信用格付けが低い企業の社債です。
- 表面的には利回りが高く魅力的に見えますが、返済不能(デフォルト)のリスクも高いため、「ハイリターンの裏にはハイリスクあり」です。
- 金利上昇局面や景気悪化時には特に値下がりしやすくなります。
② ファンドの分散性や銘柄構成に注目する
- 少数の企業に集中して投資しているファンドはリスクが高いです。
- 多くの異なる業種や地域の企業債券に分散されているか、分散の程度を確認しましょう。
- また、保有債券の信用格付けの内訳(例:B格が多いか、CCC格が多いか)も重要です。平均格付をチェックすることでファンド全体のリスクを掴むことができます。
③ 信用スプレッドの動向を意識する
- ハイ・イールド債の利回りが上がっているときは、企業の信用リスク(倒産リスクなど)が高まっている可能性があります。
- こうした局面では、安全性の高い国債との利回りの差(=信用スプレッド)が広がり、ハイ・イールド債は売られて価格が下がる傾向にあります。
- 特に景気が悪化すると、信用スプレッドは拡大しやすく、債券価格の下落リスクも高まります。
④ 為替リスクの有無を確認する(外貨建てファンドの場合)
- 米ドル建てなどのハイ・イールド債に投資するファンドでは、為替の影響も受けます。
- 「為替ヘッジあり」か「為替ヘッジなし」かを確認し、自分の投資方針に合ったタイプを選びましょう。
⑤ ファンドのコスト(信託報酬)もチェックする
- 高利回りでも、信託報酬が高ければ実質の利益が削られる可能性があります。
- 同じような内容のファンドであれば、なるべくコストの低いものを選ぶのが基本です。
⑥ 景気サイクルとの相性を考慮する
- ハイ・イールド債は、景気拡大期には堅調ですが、景気後退期には大きく値下がりする傾向があります。
- 長期で保有する覚悟があるのか、景気の見通しをどう考えるのか、自分の投資スタンスと相談しましょう。
コーポレート・ハイ・イールド債券のメリットとリスクの整理 #
項目 | 内容 |
メリット | 一般の債券より高い利回りが期待できる/分散投資でリスク抑制も可能 |
主なリスク | 発行企業の信用リスク/景気悪化による価格下落/高い価格変動性(ボラティリティ) |
投資信託やETFを通じたハイ・イールド債券投資 #
個人投資家にとって、個別のハイ・イールド債券に投資するのはリスクが大きく、購入単位も比較的大きいため、通常は投資信託やETFを通じて複数銘柄に分散投資する形で投資されます。
代表的な投資対象の例:
- 米国のコーポレート・ハイ・イールド債券(市場規模と流動性が最大)
- 欧州のコーポレート・ハイ・イールド債券
- 新興国企業による投資不適格級の社債(より高い信用・為替リスクを伴う)
コーポレート・ハイ・イールド債券ETFの例 #
- iシェアーズ 米ドル建てハイイールド社債 ETF(為替ヘッジあり)(1497)東証上場上場
- iシェアーズ iBoxx 米ドル建てハイイールド社債 ETF(HYG)NYSE ARCA上場
コーポレート・ハイ・イールド債券に投資する投資信託の例 #
- みずほUSハイイールドオープン(年1回決算型)為替ヘッジあり
- みずほUSハイイールドオープン(年1回決算型)為替ヘッジなし
- みずほUSハイイールドオープンAコース(為替ヘッジあり)
- みずほUSハイイールドオープンBコース(為替ヘッジなし)
- アジアハイ・イールド・プラス(毎月決算型)(為替ヘッジあり)
- アジアハイ・イールド・プラス(毎月決算型)(為替ヘッジなし)
- 楽天・USハイイールド社債インデックス(為替ヘッジ)ファンド(ラップ向け)
- 欧州ハイイールド債券ファンド(為替ヘッジあり)
- 欧州ハイイールド債券ファンド(為替ヘッジなし)
コーポレート・ハイ・イールド債券のまとめ #
コーポレート・ハイ・イールド債券は、高い利回りを狙える魅力的な投資対象です。ただし、その裏には発行企業の信用リスクという重大なリスクが潜んでいます。ハイ・イールド債に投資するファンドは、リスクを取りつつも収益性を求める投資家に向いていますが、景気動向や企業の信用状況、ファンドの運用内容を十分に確認することが大切です。