債券の繰上償還とは? #
債券の繰上償還(早期償還)とは、債券が本来の満期日を迎える前に、発行体の判断で元本が返済されることをいいます。通常は、あらかじめ発行条件に「繰上償還条項(コール条項)」が定められている債券に適用され、発行体は一定の条件を満たした際に債券を途中で償還する権利を持ちます。英語では一般的に 「コールリスク(call risk)」 と呼ばれます。
繰上償還の基本と投資家への影響 #
債券の中には、定められた満期限よりも前に債券を償還してしまう「繰上償還」ができる旨が定められているものが存在します。
そして、このような規定を利用して、債券の繰上償還が行なわれた場合には、それぞれの債券の発行条件によって違いはあるものの、予定していた運用期間の途中で投資した資金が返還されてしまうということが起こる可能性があるのです。また、そのような場合、その後、満期限までに得られたはずの利息が受け取ることができなくなることがあります。
特に、固定利付の債券を金利低下時に途中償還された場合には、それ以後、債券発行時の高かった金利水準をもとに決められた利息を受け取る機会を失ってしまい、新たに類似の条件の債券に投資をしようとしても、利回りは、その時点でのすでに低下した金利水準をもとに決められた利率しか受け取ることができないので、投資家は結果として不利益を受けるリスクがあるのです。
したがって、繰上償還のリスクには、予定外に運用期間途中で換金されるリスクと、得られるはずの利息や投資機会を失うリスクの二つがあげられます。
繰上償還条項の有無による違い #
- 繰上償還条項付き債券(コール債など)
発行体は所定の条件下で早期償還できる権利を持ち、投資家はコールリスクを負います。 - 繰上償還条項がないストレート債
原則として発行体は満期前に償還できないため、投資家は繰上償還リスクを負いません。
代表的な繰上償還条項付き債券 #
- 劣後債:金融機関が自己資本比率規制に対応するために発行。規制変更や金利環境の変化に応じて早期償還される場合がある。
- ハイブリッド証券(永久債など):満期が極めて長期または無期限で、一定の時期以降に発行体が任意で償還可能となるケースが多い。
- 一部の社債や地方債:借り換えや資金調達コスト削減のために繰上償還条項を備えている場合がある。
→自己資本比率規制(金融庁)
例外的に起こる「事実上の早期償還」 #
繰上償還条項がなくても、以下の事情で早期償還に近い事態が発生することがあります。
- 発行体の経営破綻や再建手続きによる条件変更
- 劣後債やハイブリッド証券が規制変更により資本認定から外れた場合
これは条項によるものではなく、信用リスクや制度リスクに分類されます。
債券の繰上償還まとめ #
債券の繰上償還リスク(コールリスク)とは、満期前に債券が償還され、予定していた利息収入や高利回りの投資機会を失うリスクを指します。特に金利低下局面では固定利付債が繰上償還されやすく、投資家は不利な条件での再投資を迫られる可能性があります。債券を購入する際には、必ず目論見書や募集要項で繰上償還条項の有無や条件を確認し、自身の投資目的やリスク許容度と照らし合わせることが重要です。