政府系投資ファンド(Government-affiliated Investment Fund/Government-related Investment Fund)とは、国や政府機関、地方公共団体などが出資・設立した投資ファンドのことを指します。民間資金が届きにくい分野への資金供給や、政策目標の達成、経済成長の支援を目的として運営されます。広義の「政府系投資ファンド」には、外貨準備や資源収入を原資とするソブリン・ウエルス・ファンド(SWF)や、政府と民間が共同出資する官民ファンドも含まれます。ただし、国際的にはSWFとその他の政策系ファンド(開発系・産業支援系)は区別されることが一般的です。
政府系投資ファンドの主な特徴 #
項目 | 内容 |
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出資主体 | 日本政府、地方自治体、政府系金融機関(例:日本政策投資銀行、産業革新投資機構)など |
目的 | 成長産業支援、地方創生、技術革新促進、安全保障強化、グリーン投資など政策目的に基づく支援 |
対象分野 | スタートアップ、再生可能エネルギー、バイオ・医療、半導体、インフラ、地域活性化など |
投資手法 | 株式出資、メザニン投資、融資、ファンド・オブ・ファンズ(FoF)型など |
資金規模 | 数十億円〜数千億円規模(ファンドにより異なる) |
日本の代表的な政府系投資ファンド(例) #
ファンド名 | 概要 |
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産業革新投資機構(JIC) | 経済産業省所管の政策投資ファンド。先端技術・産業基盤の強化、スタートアップ投資などを推進。かつての産業革新機構(INCJ)の後継。https://www.j-ic.co.jp/jp/ |
地域経済活性化支援機構(REVIC) | 地方の中小企業や地域金融機関再編などを支援する政策投資ファンド。https://www.revic.co.jp |
大学ファンド(10兆円規模) | 世界に伍する研究大学の育成を目的とし、運用益を通じて長期的・安定的に資金を供給する政府系運用ファンド。文部科学省の管轄のもと、科学技術振興機構(JST)が運用を担う。https://www.jst.go.jp/fund/ |
政府系ファンドと民間ファンドの違い #
観点 | 政府系ファンド | 民間ファンド |
投資目的 | 公益・政策目的 | 利益最大化 |
投資判断 | 政策的意義を考慮 | 商業的収益性が中心 |
出資元 | 国・公的機関 | 民間企業・個人など |
収益性重視度 | 収益性はあくまで持続可能な運用のための手段であり、政策目的や公益性が優先される。ただし近年では、財政的な自立性も求められ、一定のリターン確保は重要視される傾向にある。 | 高い(リターンを追求) |
類義語との違い #
用語 | 解説 |
ソブリン・ウエルス・ファンド(SWF) | 政府が保有する外貨準備や資源収入などを原資とし、国富の長期運用を目的とする国際的な政府系ファンド。例: ノルウェー政府年金基金、シンガポールのGIC、アブダビ投資庁(ADIA)、クウェート投資庁(KIA) |
官民ファンド | 政府と民間が共同出資する投資ファンド。民間資金の呼び込みとリスク分担を通じて、政策目標の実現と商業性の両立を図る。 |
日本の代表的な官民ファンド(例) #
名称 | 設立年 | 出資構造 | 概要 |
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クールジャパン機構(海外需要開拓支援機構) | 2013年 | 政府出資:約50%、民間出資:約50% | 日本の食・文化・アニメ・観光などを海外展開する事業を支援。民間事業者との共同出資プロジェクトも多い。 |
グリーンイノベーション基金(NEDO所管) | 2021年 | 政府基金+民間企業との協業 | カーボンニュートラルに向けた技術開発・実証支援(例:水素、アンモニア、蓄電池等)。 |
農林漁業成長産業化支援機構(A-FIVE) | 2013年 | 政府出資(農水省)+民間出資 | 食品・農林水産業のバリューチェーン強化を支援。 |
観光再生ファンド(JTIF) | 2021年 | REVIC(政府出資)+地方銀行等民間金融機関 | 観光業・宿泊業の再生を支援。観光庁支援のもと、官民共同で出資。 |
災害対応基金(官民連携インフラファンド) | 複数年度 | 政府予算+民間インフラファンド等の協調投資 | 災害復旧やレジリエンス強化に資するインフラ整備・運用事業に投資。 |
政府系投資ファンドまとめ #
政府系投資ファンドとは、国や政府機関が出資・設立し、政策目的に沿って企業や事業に資金を供給するファンドです。商業的な収益だけでなく、産業育成や社会課題の解決といった公共的価値の創出が重視され、特定分野の成長や改革を加速する役割を担っています。
また、官民ファンドのように、政策と民間の商業性を両立させるモデルも併存しており、今後の日本経済の支援インフラとして注目されています。