分配付基準価額と分配落基準価額ってどう違うのか?


分配付基準価額と分配落基準価額

既に運用が開始されているファンドの目論見書には運用実績が掲載されています。こうした運用実績の欄には過去の決算期毎の純資産総額一口当たり純資産額(つまり基準価額)、分配の推移等が記載されています。

しかし、単純に過去の純資産総額や基準価額を見るだけでは、本当の運用実績はわかりません。ファンドが保有している資産の価格が上昇しても、解約があれば純資産総額は減少し得ますし、ファンドが分配金を支払えば払った分だけ基準価額は下落するからです。

こうした問題を解決するために、この運用実績の欄には、多くの場合、決算期日における「分配落」の基準価額と「分配付」の基準価額が記載されています。

「分配落」基準価額とは分配金を支払った後の基準価額のことで、「分配付」基準価額とはその分配金を分配落基準価額に加えた値になっています。ただし、分配を行わないファンド、あるいは行わなかったファンド(あるいは決算期)においては、分配落と分配付の数字は同じになります。

 

<目論見書における運用実績の表示例>

年月日 純資産総額 (百万円) (分配付) 純資産総額 (百万円) (分配落) 1口当たり純資産額 (円) (分配付) 1口当たり純資産額 (円) (分配落)
1期 2012年1月20日 17,032 16,568 10,996 10,696
2期 2013年1月20日 16,202 15,890 10,374 10,174
3期 2014年1月20日 14,016 14,016 9,393 9,393
4期 2015年1月20日 12,620 12,135 10,410 10,010
5期 2016年1月20日 9,991 9,803 10,628 10,428
6期 2017年1月20日 8,467 8,467 9,570 9,570

 

分配落基準価額と分配付基準価額の活用

「分配落」基準価額と「分配付」基準価額が共にあれば、意味のある運用実績を計算することが可能になります。

例えば、年1回決算が行われるファンドで、直近の決算時の分配金落基準価額が9800円、分配金が500円、前年の決算時の分配金落基準価額が10000円、分配金が400円であったとしましょう。このファンドのここ1年間の運用実績を収益率(年率)で表すと何%になるでしょうか。

今決算日の基準価額が9800円、前決算日が10000円ですから、9800÷10000-1 = -2%、と考えると、運用成果の一部である分配金を収益率としてカウントしていないので、正しい実績とはいえません。

正しくは、今期の運用の結果得られた一口当たり純資産、つまり分配金を加えた分配付基準価額を、今期の運用スタート時にあった一口当たり純資産、つまり分配落基準価額で割って1を引いた値、つまり(9800+500)÷10000-1 = +3%が正しい運用実績(パフォーマンス)になります。

目論見書には様々な数字が掲載されていますが、それらの数字の正しい見方を知り、各々の数字の持つ意味をしっかり確認することが大切です。