セクターETFとは?


 

セクターETF

セクターETFは、特定の業種(セクター)の株式に的を絞って投資するETFのことです。特定の業種の株式だけに投資することで、その業種全体の株価動向を表す株価指数に連動する投資成果を目指します。

例えば、東京証券取引所に上場しているセクターETFの一つである「NEXT FUNDS医薬品(TOPIX-17)上場投信(銘柄コード:1621)」であれば、東京証券取引所の第一部市場に上場している医薬品セクターの株式38銘柄(2020年6月末現在)に分散投資して、医薬品セクター全体の動向を示す株価指数である「TOPIX-17医薬品」に連動する投資成果を目指します。

今後は医薬品業界が伸びると考えたり、食品セクターが成長すると予想したりしても、どの銘柄に投資したらよいかはわからない場合があります。セクターETFは、個別銘柄を選択することなく、特定の業種の成長の恩恵を享受したい場合に便利なETFです。

セクターは英語のsectorのことで、部門、分野、セクター、業種などの意味があります。セクターETFは業種別ETFとも呼ばれます。日本、あるいは米国など、特定の国の特定のセクターに投資するETFもあれば、世界の特定のセクターに属する株式に分散投資するタイプのものもあります。

 

セクター分類

では、どのようなセクターがあるのでしょうか。

海外のセクター分類

一般的に、金融の世界では、セクターの分類にGICS世界産業分類基準(Global Industry Classification Standard)」と呼ばれる業種の分類法が使われます。海外のETFでは、このGICS分類が使われるケースが多く見られます。

GICSでは、全ての産業を11のセクターに分類し、それらを24の産業グループ、さらに69の業種、158のサブ業種に細かく分類しています(2020年6月現在)。セクターETFでは、大分類である11のセクターが利用されることもあれば、産業グループや業種でグループ化された株式に投資するものもあります。

GICの11のセクター(2020年6月末現在)

  • 一般消費財・サービス
  • 生活必需品
  • エネルギー
  • 金融
  • ヘルスケア
  • 資本財・サービス
  • 情報技術
  • 素材
  • 電気通信サービス
  • 公益事業
  • 不動産

 

日本におけるセクター分類

日本では東京証券取引所に上場している企業を17の業種に分類している「TOPIX-17シリーズ」と呼ばれる分類や証券コード協議会による33の業種分類が利用されています。前述の「NEXT FUNDS医薬品(TOPIX-17)上場投信(銘柄コード:1621)」は、このTOPIX-17シリーズによる分類において「医薬品」に分類された銘柄に投資するものです。

TOPIX-17シリーズにおけるセクター分類

  • 食品
  • エネルギー資源
  • 建設・資材
  • 素材・化学
  • 医薬品
  • 自動車・輸送機
  • 鉄鋼・非鉄
  • 機械
  • 電機・精密
  • 情報通信・サービスその他
  • 電力・ガス
  • 運輸・物流
  • 商社・卸売
  • 小売
  • 銀行
  • 金融(除く銀行)
  • 不動産

なお、セクターETFの中で、証券コード協議会による33業種分類を採用しているのは2020年9月末現在、NEXT FUNDS 東証銀行業株価指数連動型上場投信(銘柄コード:1615)だけです。同ETFは33業種分類の一つの「銀行業」に分類される銘柄に投資し、銀行業に属する銘柄全体の値動きを表す「東証銀行業株価指数」への連動を目指します。

 

東京証券取引所に上場しているセクターETFの例

東京証券取引所に上場しているセクターETFには次の18本があります(2020年9月末現在)。これらは、東京証券取引所に上場している各セクターに属する銘柄に分散投資するETFです。

 

日本で購入できる米国上場のセクターETFの例

また、海外で設定され、日本国内で購入できる外国籍のETFの中にも、セクターETFが多くあります。これらのセクターETFは、各セクターに属する世界の株式で構成されています。グローバル・セクターETFとも呼ばれます。

 

セクターETFのリスク

セクターETFのリスクとしては、集中投資によるリスクと流動性リスクが挙げられます。

集中投資によるリスク

個別銘柄への投資では、その銘柄が大幅に下落してしまうと、大きな損失を被ることになります。セクターETFは、複数の銘柄に分散投資するので、個別銘柄に投資するよりもリスク低減は図られています。しかし、株式市場では、特定の業種やテーマに関連する銘柄が全体として売られることがよくあります。例えば、医薬品セクターが全体として値下がりすれば、医薬品ETFは大きく値下がりします。一方で、日経平均株価東証株価指数に連動するETFでは、医薬品セクターが全体として下落したとしても、他のセクターの株式が上昇していれば、ETF全体の値下がりは抑えられることになります。また、セクターETFは、日経平均株価や東証株価指数の値動きに連動するETFと比べると、投資銘柄数も少なく、1銘柄がETFに与える影響も大きくなる傾向にあります。このように、セクターETFは、個別銘柄への投資よりはリスクは小さいものの、より幅広い銘柄に投資する日経平均ETFやTOPIX ETFよりはリスクが大きくなる傾向にあります。

 

流動性リスク

東京証券取引所に上場しているセクターETFの中には、売買が活発に行われていない流動性の低いETFがあります。実際に、売買が毎日は成立していないセクターETFもあります。ETFは特定の指数への連動を目指すように設計されていますが、売買高の小さいETFでは、取引所価格(市場価格)とETFの純資産総額から算出される基準価額の間の乖離が大きくなり、ETFの取引所価格の値動きがベンチマークの値動きに連動しない、あるいは、買いたい時に買えない、売りたい時に売れない、買いたい値段や売りたい値段で売買できないというリスクが生じる可能性があります。

例えば、2020年5月の東京証券取引所に上場しているセクターETFの値付日数(取引が成立して値段が付いた日)を見ると、全営業日(18日)に値段が付いたのは19本中10本だけでした。東京証券取引所では、ETFの流動性を促すためにマーケットメイク制度があり、下表のETFもマーケットメイクの対象となっていますが、それでも、全ての営業日に売買が成立するとは限らない状態です。

セクターETFに投資する際には、売買高が十分にあるか、売買が毎日成立しているかを確認することが大切です。

 

東京証券取引所に上場しているセクターETFの値付日数(2020年5月)

銘柄コード ファンド名 値付日数
1613 東証電気機器株価指数連動型上場投資信託 18
1615 東証銀行業株価指数連動型上場投資信託 18
1617 NEXT FUNDS食品(TOPIX-17)上場投信 17
1618 NEXT FUNDSエネルギー資源(TOPIX-17)上場投信 18
1619 NEXT FUNDS建設・資材(TOPIX-17)上場投信 16
1620 NEXT FUNDS素材・化学(TOPIX-17)上場投信 12
1621 NEXT FUNDS医薬品(TOPIX-17)上場投信 18
1622 NEXT FUNDS自動車・輸送機(TOPIX-17)上場投信 18
1623 NEXT FUNDS鉄鋼・非鉄(TOPIX-17)上場投信 18
1624 NEXT FUNDS機械(TOPIX-17)上場投信 13
1625 NEXT FUNDS電機・精密(TOPIX-17)上場投信 18
1626 NEXT FUNDS情報通信・サービスその他(TOPIX-17)上場投信 16
1627 NEXT FUNDS電力・ガス(TOPIX-17)上場投信 18
1628 NEXT FUNDS運輸・物流((TOPIX-17)上場投信 18
1629 NEXT FUNDS商社・卸売(TOPIX-17)上場投信 13
1630 NEXT FUNDS小売(TOPIX-17)上場投信 11
1631 NEXT FUNDS銀行(TOPIX-17)上場投信 18
1632 NEXT FUNDS金融(除く銀行)(TOPIX-17)上場投信 16
1633 NEXT FUNDS不動産(TOPIX-17)上場投信 16

(東証電気機器株価指数連動型上場投資信託(1613)は、2020年6月13日に上場廃止になりました。)

 

セクターETFのまとめ

  • セクターETFは特定の業種の株式に的を絞って投資するETFである
  • セクターETFには集中投資によるリスクがある
  • セクターETFには流動性リスクがあるものがある