AIJ投資顧問の年金消失事件と厚生年金基金廃止の方針決定までの出来事はどうなっていましたか?


AIJ投資顧問の年金消失事件とは

2012年2月、証券取引等監視委員会の検査により、AIJ投資顧問が顧客から預かっていた年金資産の運用に失敗していたのにもかかわらず、虚偽の報告書を顧客並びに当局に提出していたという事実が明らかとなり、年金運用を運用期間に委託している企業年金及び金融業界全体に衝撃を与えました。

AIJ投資顧問に対する証券取引等委員会による検査、警視庁による強制捜査などが進む一方で、厚生労働省では、3月14日に「厚生年金基金等の資産運用・財政運営に関する特別対策本部」が、4月13日に「厚生年金基金等の資産運用・財政運営に関する有識者会議」が設置され、これまでも長引く低金利による運用難や代行返上などにより存続が危ぶまれてきた厚生年金基金について、廃止に向けた議論が進み、事件の捜査終了と時期を概ね同じくして、厚生年金基金の廃止の方針が打ち出されました。

今回は、AIJ投資顧問の年金消失事件を中心に、他の厚生年金基金に関する法令違反事件と厚生年金基金廃止の決定までの一連の出来事を時系列を追ってまとめてみました。なお、詳細については、各出来事の下のリンクの報道発表資料等でご確認下さい。

 

AIJ投資顧問の年金消失事件の経緯

平成24年1月~

証券取引等監視委員会がAIJ投資顧問を検査。

証券取引等委員会、検査の過程でAIJ投資顧問において投資一任契約に基づいて行う顧客資産の運用状況について疑義が生じている旨を関東財務局に連絡。

関東財務局、AIJ投資顧問に対し、金融商品取引法第 56 条の 2 第 1 項に基づく報告を要求。

AIJ投資顧問、当社が顧客との間で締結した投資一任契約に基づいて行う顧客資産の運用について、証券取引等監視委員会の検査を通じて疑義が生じている。現時点で毀損額・毀損原因は精査中であるものの、投資家に現在の運用状況を説明できない状況にあると回答。

 

平成24年2月24日

関東財務局、上記が、「投資運用業の運営に関し、投資者の利益を害する事実があるとき」(第 52 条第1項第8号)に該当すると認められることから、AIJ投資顧問に対して次の行政処分を実施。

  • 業務停止命令

平成 24 年2月 24 日から平成 24 年3月 23 日までの間、金融商品取引業に関する業務の全部(当局が個別に承認した業務を除く)を停止すること。

  • 業務改善命令
  1. 証券取引等監視委員会の検査に協力すること。
  2. 顧客の状況、顧客が出資等をした財産の運用・管理状況(分別管理の状況を含む)を早急に把握すること。
  3. 今回の行政処分の内容に対して、顧客に適確に説明し、問い合わせ等に対しても十分に対応すること。
  4. 会社財産を不当に費消しないこと。
  5. 運用財産について、顧客間の公平に配慮しつつ、管理を徹底するなど万全の措置を講じること。
  6. 上記について、その対応状況を平成 24年3月23日(金)までに書面で報告すること。また、その実施状況を完了までの間、随時に書面で報告すること

平成24年2月28日

厚生労働省、AIJ投資顧問に運用を委託していた厚生年金基金等について現時点で把握している実態に関する資料を公表。平成22年末時点で、84基金、1852.6億円がAIJに運用委託されていたことが判明。

 

平成24年2月29日

金融庁、AIJ投資顧問株式会社に対して発出した行政処分(平成24年2月24日付)に関し、投資一任業務を行う全ての金融商品取引業者に対し一斉調査を実施すると発表。

 

平成24年3月5日

厚生労働省、AIJ問題対策特別プロジェクトチームを設置。

 

平成24年3月13日

自見内閣府特命担当大臣、09年(平成21年)の2月以降今回のAIJ投資顧問に対する検査開始までの間、数回、金融庁や証券取引等監視委員会事務局の担当部局へ、「年金情報」の関係者等から、AIJ投資顧問についての情報提供が行なわれていたこと、(証券取引等)監視委員会の情報受付窓口に対して寄せられた情報のうち、AIJ投資顧問についての情報が提供された件数が、05年(平成17年)度以降、今回の検査開始までの間に4件あり、このうち匿名での情報提供は3件、実名での情報提供は1件であったと発言。

 

平成24年3月14日

厚生労働省、「厚生年金基金等の資産運用・財政運営に関する特別対策本部」第1回会合開催

同特別対策本部の目的:

厚生年金基金等の資産運用は、平成 9 年の 5:3:3:2 規制撤廃後、各基金が自己責任の下で自主的に運用を行うことを基本原則としてきた。その後15年が経過する中で、資産運用の手法は多様化・複雑化し、金融市場の変動幅も大きくなってきている。こうした中で、本年 2 月 24 日、多くの厚生年金基金等が資産運用を委託している AIJ投資顧問株式会社が、金融庁から金融商品取引法違反の疑いで業務停止及び業務改善命令を受けるという事案が生じた。この AIJ 問題に関連した実態調査の取りまとめを行うとともに、時代に即した厚生年金基金等の資産運用規制等の在り方を検討するため、厚生労働省内に副大臣を本部長とする「厚生年金基金等の資産運用・財政運営に関する特別対策本部」を設置する。

 

平成24年3月22日

証券取引等監視委員会、アイティーエム証券を調査したところ、外国投資信託受益証券につき、基準価額等が虚偽であること又はその可能性を認識しながら、販売及び当該基準価額等の提供等を行っている行為などの法令違反の事実が認められたことから、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、アイティーエム証券に行政処分を行うよう勧告。

 

平成24年3月22日

証券取引等監視委員会、AIJ投資顧問について、検査の結果、投資一任契約の締結の勧誘において、虚偽の事実を告知している行為などの法令違反の事実が認められたため、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、行政処分を行うよう勧告。

法令違反の内容

  1. 投資一任契約の締結の勧誘において、虚偽の事実を告知している行為
  2. 虚偽の内容の運用報告書を顧客に交付する行為
  3. 虚偽の内容の事業報告書を作成し、関東財務局長に提出する行為
  4. 忠実義務違反

 

平成24年3月23日

関東財務局、AIJ投資顧問に対して次の行政処分実施。

登録取消・・・関東財務局長(金商)第 429 号の登録を取り消す。

業務改善命令

  1. 顧客に対し今回の行政処分の内容等を十分に説明し、顧客の求めに応じた適切な対応を行うこと。
  2. 顧客の意向を踏まえ、当社が顧客との投資一任契約に基づき運用しているすべての運用財産の管理・保全措置に必要とされる協力を速やかにかつ適切に行うこと。
  3. 2.の管理・保全措置を採るために必要とされる情報を速やかにかつ適切に顧客に開示・提供すること。
  4. 顧客間の公平に配慮しつつ、本件運用財産について必要かつ適切な管理・保全措置を採ること。
  5. 会社財産を不当に費消しないこと。
  6. その他、本件運用財産及び顧客保護のために必要かつ適切な対応を行うこと。
  7. 上記について、その対応状況を平成 24 年4月6日(金)までに書面で報告すること。

 

平成24年3月23日

証券取引等監視委員会、AIJ投資顧問に強制調査実施。

 

平成24年3月23日

関東財務局、アイティーエム証券株式会社に対し行政処分実施。

  1. 業務停止命令
    平成 24 年3月 23 日から同年9月 22 日までの間、全店舗における全ての金融商品取引業に関する業務(当局が個別に認めたものを除く。)の停止。
  2. 業務改善命令
    1. 顧客に対し今回の行政処分の内容等を十分に説明し、顧客の求めに応じた適切な対応を行うこと。
    2. 当社が、AIJ投資顧問株式会社と投資一任契約を締結した顧客に対し、投資信託を販売のうえ、当該顧客から受益証券等の財産の預託を受けている責任ある地位にあることに鑑み、顧客の意向を踏まえ、本件預託財産の管理・保全措置に必要とされる協力を速やかにかつ適切に行うこと。
    3. 2の管理・保全措置を採るために必要とされる情報を速やかにかつ適切に顧客に開示・提供すること。
    4. 顧客間の公平に配慮しつつ、本件預託財産が適切に顧客に返還されるよう必要かつ適切な管理・保全措置を採ること。
    5. 本件預託財産以外の顧客から預託を受けた有価証券等の財産の管理・保全を徹底すること。
    6. 会社財産を不当に費消しないこと。
    7. その他、顧客の財産及び顧客保護のために必要かつ適切な対応を行うこと。
    8. 上記1~7について、その対応状況を平成 24 年4月6日(金)までに書面で報告するとともに、その実施状況を、すべてが完了するまでの間、必要に応じて随時書面で報告すること。

 

平成24年3月23日

自見内閣府特命担当大臣閣議後記者会見の概要

 

平成24年3月28日

厚生労働省、「厚生年金基金等の資産運用・財政運営に関する特別対策本部」第2回会合開催。厚生年金基金の運用体制等に関する調査結果が報告され、AIJに委託実績のある基金は全体の2割弱(88基金)、この内、AIJを知ったきっかけは、「個別に勧誘された」が最も多く、52基金であったことなどが明らかに。

 

平成24年3月27日

衆議院財務金融委員会、AIJ赤坂社長などの参考人から意見を聴取。

  • 衆議院財務金融委員会ニュース

 

平成24年4月6日

厚生労働省、「厚生年金基金等の資産運用・財政運営に関する特別対策本部」第3回会合開催。

 

平成24年4月13日

厚生労働省、「第1回 厚生年金基金等の資産運用・財政運営に関する有識者会議」開催。

厚生年金基金等の資産運用・財政運営に関する有識者会議の趣旨:

厚生年金基金等の企業年金の資産運用は、平成 9 年の 5:3:3:2 規制の撤廃後、各基金が自己責任の下で自主的に運用を行うことを基本原則とし、厚生労働省では受託者責任に係るガイドラインを示してきた。しかし、その後、資産運用の手法は多様化・複雑化し、また、金融市場の変動幅も大きくなってきている。
一方、平成 9 年には厚生年金基金の財政運営についても、予定利率設定の弾力化、非継続基準による財政検証の導入、資産評価の簿価から時価への変更などの見直しが行われた。しかし、その後の経済金融情勢の悪化により、厚生年金基金等の企業年金は厳しい財政状況が続いており、特に、厚生年金基金については、厚生年金の代行部分に必要な積立金を持たない「代行割れ基金」が全体の4割を占めている。こうした状況を踏まえ、厚生年金基金等の企業年金について、資産運用規制と財政運営の両面からこれまでの施策を検証し、今後の在り方について幅広い観点から議論を行うため、「厚生年金基金等の資産運用・財政運営に関する有識者会議」(以下「有識者会議」という。)を開催する。

 

平成24年4月13日

衆議院財務金融委員会(第十四回)、金融に関する件(AIJ投資顧問による年金資産運用問題)について、関係者に証言を求めた。

 

平成24年4月16日

厚生労働省、AIJ投資顧問に関し意見聴取実施。

 

平成24年4月24日

厚生労働省、「第2回 厚生年金基金等の資産運用・財政運営に関する有識者会議」開催。受託者責任の在り方、運用体制・運用プロセスの在り方、ガバナンス・情報開示の在り方、)事後チェックの在り方について議論が行われた。

 

平成24年4月27日

証券取引等監視委員会、平成24年度証券検査基本方針及び証券検査基本計画を策定・公表

 

平成24年5月15日

厚生労働省、「厚生年金基金等の資産運用・財政運営に関する特別対策本部」第4回会合開催。資産運用規制のあり方」について議論が行われる。

 

平成24年5月16日

厚生労働省、「第3回 厚生年金基金等の資産運用・財政運営に関する有識者会議」開催。

 

平成24年5月29日

厚生労働省、「第4回 厚生年金基金等の資産運用・財政運営に関する有識者会議」開催。

 

平成24年6月7日

厚生労働省、「第5回 厚生年金基金等の資産運用・財政運営に関する有識者会議」開催。

 

平成24年6月12日

厚生労働省、「第6回 厚生年金基金等の資産運用・財政運営に関する有識者会議」開催。

 

平成24年6月19日

証券取引等監視委員会、金融商品取引法違反(投資一任契約の締結に係る偽計)の嫌疑で、AIJ投資顧問株式会社ほか関係先に対する強制調査を実施。

 

平成24年6月19日

厚生労働省、「第7回 厚生年金基金等の資産運用・財政運営に関する有識者会議」開催。

 

平成24年6月29日

厚生労働省、「第8回 厚生年金基金等の資産運用・財政運営に関する有識者会議」開催。

 

平成24年7月6日

厚生労働省、「第9回 厚生年金基金等の資産運用・財政運営に関する有識者会議」開催。これまでの会議の報告書を策定。同報告書の中で、受託者責任の明確化基金の資産管理運用体制の強化③外部の専門家等による支援体制や行政による事後チェックの強化などの見直しの方向性が示された。また、今後の厚生年金基金制度等の在り方については、代行制度の廃止を含めたさまざまな意見があったことが明らかになった。

 

平成24年7月9日

証券取引等監視委員会、金融商品取引法違反(投資一任契約の締結に係る偽計)の嫌疑で、嫌疑法人AIJ投資顧問株式会社及び嫌疑者3名を東京地方検察庁に告発。

 

平成24年7月12日

厚生労働省、「厚生年金基金等の資産運用・財政運営に関する特別対策本部」第5回会合開催。厚生年金基金等の資産運用・財政運営に関する有識者会議」の報告書が発表された。

 

平成24年7月26日

厚生労働省、「厚生年金基金等の資産運用・財政運営に関する特別対策本部」第6回会合開催。確定給付企業年金法施行規則及び関連通知並びに厚生年金基金関連通知の一部改正について議論。

 

平成24年7月30日

証券取引等監視委員会、金融商品取引法違反(投資一任契約の締結に係る偽計)の嫌疑で、嫌疑法人AIJ投資顧問株式会社及び嫌疑者3名を東京地方検察庁に告発。

 

平成24年8月3日

証券取引等監視委員会、犯則事件の調査の結果、アイティーエム証券株式会社に係る法令違反等が認められたので、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、行政処分を行うよう勧告。

 

平成24年9月4日

金融庁、AIJ投資顧問株式会社事案を踏まえた資産運用に係る規制・監督等の見直し(案)に係るパブリックコメントの募集開始。

 

平成24年9月19日

証券取引等監視委員会は、金融商品取引法違反(投資一任契約の締結に係る偽計)の嫌疑で、嫌疑法人AIJ投資顧問株式会社及び嫌疑者3名を東京地方検察庁に告発。

 

平成24年9月28日

厚生労働省、厚生年金基金等の資産運用・財政運営に関する特別対策本部(第7回)開催。決定事項として、厚生年金基金の廃止の方針を公表。

厚生年金基金等の資産運用・財政運営に関する特別対策本部

決定事項

  1. 厚生年金基金の代行制度については、他の企業年金制度への以降を促進しつつ、一定の経過期間をおいて廃止する方針で対応する
  2. 今後、持続可能で、中小企業などが加入しやすい企業年金を構築するための施策を積極的に推進する。
  3. 「代行割れ問題」への対応として、「連帯債務問題」や「債務額の計算方法」など、特例解散制度の見直しをはかる。
  4. 本年10月中に社会保障審議会年金部会の下に専門委員会を設置し、同委員会に厚生労働省の「厚生年金基金制度改革試案」を提示し、同案に対する検討を行ない、年内をめどに年金部会としての成案を得る。
  5. 同成案に即した法制化作業を進め、時期通常国会における厚生年金基金制度改革のための法案提出をめざす。

 

平成24年10月4日

警視庁、AIJ浅川社長らを追送検、立件総額248億円に。警視庁の捜査は終結。

 

平成24年10月5日

証券取引等監視委員会、金融商品取引法違反(投資一任契約の締結に係る偽計)の嫌疑で、嫌疑法人AIJ投資顧問株式会社及び嫌疑者3名を東京地方検察庁に告発。

 

平成24年10月9日

長野県建設業厚生年金基金が、別の未公開株の運用でも損失があることが明らかに。

 

平成24年10月10日

証券取引等監視委員会、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、ユナイテッド投信投資顧問を行政処分を行うよう勧告。厚生年金基金との投資一任契約に係る善管注意義務違反が理由。

 

平成24年10月10日

証券取引等監視委員会、金融商品取引業者に係る法令違反の事実が認められたので、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、株式会社スタッツインベストメントマネジメントを行政処分を行うよう勧告。厚生年基金との投資一任契約に係る善管注意義務違反が理由。

 

平成24年10月12日

金融庁、AIJ投資顧問株式会社事案を踏まえた資産運用に係る規制・監督等の見直し(案)に係る御意見の募集の結果及び「金融商品取引業等に関する内閣府令」等改正案を公表。

 

平成24年10月12日

AIJ社長、30基金に損失弁済理由に払戻金返還求める

 

平成24年10月12日

「福岡県・佐賀県トラック厚生年金基金」(福岡市)が解散の方針。

 

平成24年10月16日

金融庁、ソシエテジェネラル信託銀行株式会社を行政処分

処分の理由:

  1. 法令違反
    1. 年金信託業務における善管注意義務違反
    2. プライベートバンキング業務における法令違反
  2. 経営管理(ガバナンス)態勢の問題
  3. 法令等遵守(コンプライアンス)態勢及び顧客保護等管理態勢の問題

 

平成24年10月16日

金融庁、ユナイテッド投信投資顧問を行政処分

平成24年10月17日

北海道電気工事業厚生年金基金に加え、北海道トラック・北海道石油業の厚生年金基金が解散へ