ブルームバーグ、ESG投資報告書を発表ー「インパクトのあるα」実現のためにはESG思考の大幅な見直しが必要


ブルームバーグは、 ブルームバーグ・ウーマンズ・バイサイド・ネットワーク(BWBN)が作成したESG投資報告書を2021年8月27日に発表した。 この報告書では、 BWBNのアジア5地域のチャプター(支部)に属する、 15人以上の運用部門のリーダーたちの見解が紹介されており、 長期的にポジティブなインパクトを生み出しながら、 α(超過収益)も提供する「インパクトのあるα」を目指す機関投資家にとって、 ESGの人材・インパクト・プロセスが主要な3つの検討事項であることが示されている。

本報告書には、 日興アセットマネジメント、 AIAグループ、 アリアンツ・グローバル・インベスターズ、 マルチプル・オルタネート・アセット・マネジメント、 コタック・マヒンドラ・アセット・マネジメント、 HDFCライフ、 シュローダー、 PIMCO、 ブラックロック、 あいおいニッセイ同和損保、 アライアンス・バーンスタイン・ジャパン、 ベイビュー・アセット・マネジメント、 T. ロウ・プライス、 ニュージーランド・スーパーアニュエーション・ファンド、 オーストラリア未来基金、 クィーンズランド州投資公社、 HESTAなど、 業界を代表する機関投資家の見解がまとめられている。

ブルームバーグによると、投資家がリスク、 リターン、 サステナビリティの間に新しいバランスを見出そうとしている中で、 バイサイド企業はすでに、 より社会的責任がある、 レジリエントな未来へと転換しつつある。 新型コロナウイルス感染症や気候変動がもたらす悪影響により、 さらなるサステナブルな世界の実現が今まで以上に求められ、 緊急性もますます高まっている。 優れた企業は、 すでにESG投資に体系的なアプローチを取り入れ、 投資家に向けて革新的でインパクトのある商品を開発している。 また、 ESG資産は2025年までに53兆ドルを超え、 140兆5000億ドルの運用資産総額の3分の1以上を占めることが予想されており、 業界がこれらの資産を強固かつ透明性の高い方法で管理できるようにするために、 残された時間はごく僅かである。

BWBNの報告書が示す重要なインサイトは次の通り。

強力な人材パイプラインの構築

ESGに対する意識が高まるにつれ、 人材獲得競争が大きな問題となり始めている。 多くの企業は当初、 欧州やその他の先進国から採用されたESGの専門家である「他国からの人材」に依存していたたが、 需要は変化してきている。 企業は現在、 新型コロナの影響で移動や旅行が制限されていることもあり、 自国の市場やビジネスに目を向け、 自国の人材に投資しようとしている。 さらに、 バイサイドの企業は、 ESG思考を強化するために、 従来の人材プールである金融分野の外にも目を向け、 今まで求められてきたような投資スキルを持たない多様な人材を活用することも前向きに検討している。

戦略的相互依存思考の価値を理解する

スキルセットの面では、 戦略的相互依存の思考は、 ステークホルダー、 事業領域、 スケールを確実に拡大できることから、 重要な要素として浮かび上がってきている。 これまでもコラボレーションは常に重視されてきたが、 外部のステークホルダーとのエコシステムの構築が重要になると認識されている。 社内や投資先企業とソリューションを共創するために、 それぞれの領域を超えて影響を与え、 変化を導くことができる人材は、 非常に貴重な存在になる。

フレームワークと情報開示が鍵

世界は、 よりESGを意識した未来に向かってシフトしているが、 企業は「意思決定に役立つ」サステナビリティ関連の情報開示について、 一貫性のある比較可能なグローバル基準がないことを懸念している。 これは、 民間と公共のステークホルダーが協力してグローバルなフレームワークを構築することで改善されるだろう。しかし、 現在のESG開示ルールの解釈には、 比較可能性が欠けており、 断片的であるため、 投資家に「法的不確実性」をもたらしている。 これらのフレームワークが発展続けている一方で、 多くのバイサイド企業は、 すでに社内の投資プログラムをESG投資の基本原則に沿って調整し、 独自の戦略的パラメータを考案して、 透明性とインパクトのある投資を行えるようにしている。

リスク管理能力の表面化

企業には、 確固たるリスク管理に裏打ちされた財務上および非財務上の成果を示す義務があり、 透明性を担保し、 強固なガバナンス体制の下で遂行しなければ、 グリーンウォッシングと見なされてしまうリスクがある。 長期的な投資目標に向けた統合的なアプローチを実現するために、 サステナブル投資においてマテリアリティは重要である。 このような環境下で、 企業は独自のESGリスク管理能力で差別化を図り、 ブランド価値を高めることが可能となる。

ブルームバーグの資産運用会社向け営業部門のアジア太平洋地域責任者であるフィリッパ・トンプソン氏は、 次のように述べている。

ESGは、 進化する規制やお客様のニーズを満たすだけでなく、 それを超えていかなくてはなりません。 BWBNのエグゼクティブ・メンバーは、 すべてのバイサイド企業が将来の投資をどのように運用し、 理解するかについて、 サステナブル投資が中心になる必要があると感じています。 また、 本当の意味でのサステナブルなマインドセットを持つためには、 組織が投資に対する考え方を大きく見直す必要がありますが、 実際の変革が最終的には必要であり、 有意義なプロセスとなるでしょう。 信頼性の高いESGデータと強固なテクノロジー・ワークフローを組み合わせることで、 本報告書で特定されたこれらの戦略的な指標『North Star』は、 機関投資家がサステナブルな投資活動を成功させ、 インパクトのあるαを実現するための助けとなることでしょう。

ESG投資報告書の全文→  https://www.bloomberg.com/professional/alpha-with-impact-uncovering-esg-talent-impact-and-journeys-download-report/?utm_medium=mktg_site&utm_source=Website&utm_content=BWBNESGReport2021&utm_campaign=530203&tactic=530203&src=PR