ナティクシスの調査によると、ESG投資の機運が高まる中、60%の投資家が企業は株主以外に対しても説明責任があると回答


ナティクシス・インベストメント・マネージャーズが24カ国の8550名以上の個人投資家を対象に行った調査( https://www.im.natixis.com/us/research/esg-insights-from-2021-individual-investors-survey )によると、 世界中の投資家の過半数(60%)が、 企業は株主のために価値を創造することだけに責任があるという考え方を否定している。 同調査結果によると、 投資家は、 企業が環境や社会に与える影響についても責任を負うことを期待しており、 政策当局やファンドマネージャーを含む民間部門のさらなる行動を求めている。

調査結果の概要

  • ESGの採用において今や米国が世界をリード。 もはやミレニアル世代、 女性、 富裕層、 欧州の投資家を中心とした動きではなく、 主流の投資家の間でESG投資への世界的な需要が加速している
  • 投資家がESGに投資する最大の理由は「環境への貢献」。 パフォーマンスとのトレードオフへの懸念が薄れ、 新たな投資機会が生まれると考える投資家もほぼ同数存在
  • 投資家の大半は、 気候変動や社会問題の解決は政府だけではできないと見ている。 サステナビリティと説明責任を果たすためには、 企業と民間資本が不可欠であると考えている
  • 投資家の半数(49%)が、 投資分析プロセスにESGを組み込むことを求めている

国連気候変動枠組条約会議(COP26[1])のために世界のリーダーたちが英国グラスゴーに集結する中、 2021年11月9日、 ナティクシスIMの調査結果が発表された。

  • 回答者の77%は、 気候変動や格差を含む社会への影響について企業に責任を負わせることが、 投資家としての責務であると考えている。
  • 82%の投資家が、 企業は社会的課題に取り組む責任があると答え、 政府に責任があると答えた人(78%)を上回った。
  • 45%の投資家が、 より持続可能なビジネスモデルに移行している企業に投資することが重要だと考えている。
  • 67%の投資家が、 気候変動を抑制する上で重要な要素であるカーボンフットプリントに対して、 良好に対処しているファンドに投資したいと回答している。

環境・社会・ガバナンス(ESG)投資戦略の運用総資産が全世界で2020年に1.6兆ドル[2]に達する中、 ナティクシス・インベストメント・マネージャーズはESGの勢いが続いている状況を確認した。 今回の調査では、 個人投資家の21%が現在ESG投資戦略を採用していることが判明した。 そのうち、 24%が過去わずか1年の間に初めてESGに投資した。 また、 ESGに以前から投資していた人の33%が保有している資産への投資を増やしている。 まだESGに投資していない人においても、 その半数近く(49%)が、 より詳しく学びたいと答えている。

ナティクシス・インベストメント・マネージャーズのサステナブル投資部門のグローバル責任者、 ナタリー・ウォレス氏は次のように述べている。

ESGがより広く採用され、 投資家がさまざまな種類のESG投資について学ぶにつれて、 ESG投資への関心は急速に高まっています。 加えて、 これらの戦略がプラスのリターンをもたらすことにより、 その傾向は一段と強まっています。 政府、 非政府組織、 民間企業のすべてがESG目標への取り組みを高めており、 そのことからも、 これらの戦略によって、 投資家が優れた環境・社会的成果や財務パフォーマンスを追求することを可能にしています。

ナティクシス・インベストメント・マネージャーズの調査結果は、 ESGへの関心の高まりを示すだけでなく、 その採用にまつわる以下のような数々の通説を覆している。

  • ESGへの関心はミレニアル世代に限らない。 これまでの常識は、 ESGの採用は、 自分の資産が環境、 社会、 倫理的な変化を促進することを望む社会意識の高いミレニアル世代によって推進されてきた、 というものだった。 ESGの投資家は確かに若年層の割合が高くはなっているが、 広く採用され、 関心を持たれていることは、 ESGが今や主流の投資家にアピールしていることを示している。 ミレニアル世代の27%がESGに投資していると回答しているが、 X世代の20%、 ベビーブーム世代の18%もESGに投資している。 さらに、 ESGへの関心は、 ミレニアル世代の52%、 X世代の52%、 ベビーブーム世代の44%と、 すべての年齢層において高まっている。
  • 欧州はESGの採用でリードしてきたが、 世界も追いついてきている。 現在、 ESGを採用している北米の投資家は28%と、 欧州(22%)およびアジア(22%)の投資家を上回っている。 北米では、 米国の投資家(32%)が圧倒的に多い一方で、 ESG投資を採用しているカナダの投資家は16%にとどまっている。 ESG投資の割合が最も少ないのは中南米諸国(13%)だが、 この地域も、 まだ投資をしていなくてもESGに関心があると回答した投資家が多い(62%)ため、 時間の経過とともに変化していくと思われる。
  • ESG投資家にとって、 「うまくやる」ことは「良いことをする」ことと同じくらい重要。 地球温暖化やサステナビリティに注目が集まっていることを考えると、 ESGに投資している投資家の41%が、 環境支援の手段としてESG投資を捉えているのは当然のことである。 しかし、 投資家は現実的な見方をしている。 「より良い世界を作りたい」と回答した投資家と同数の投資家がESGは新たな投資機会を提供すると回答している(37%)。 また、 同程度の投資家(35%)が、 ESGは単に投資手法として良い手法と考えていると答えている。
  • パフォーマンスの実績には説得力がある。 ESGへの投資は投資パフォーマンスを犠牲にすることになる、 といまだに考えている投資家は5人に1人しかいない。 ナティクシス・インベストメント・マネージャーズが2017年に行った調査では、 投資家の64%が、 個人の価値観に合った投資を行うためには、 リターンの可能性をある程度犠牲にする必要があると考えていたが、 そこから投資家の意識は大きく変化している。 非財務的なパフォーマンスに関する情報がないために、 ESGへの投資を控えていると回答した投資家は、 わずか22%だった。

直近のデータは、 ESG投資が超過収益を生み出す可能性を裏付けている。 2021年第3四半期末時点で、 S&P500 ESG指数は、 2021年10月3日までの3年間で、 S&P500指数を3.7%上回っている。 [3]

ファンドマネージャーとファイナンシャルアドバイザーは、 サステナビリティと幅広いESGの採用を推進する上で重要な役割を果たしている

ナティクシス・インベストメント・マネージャーズの調査では、 投資家は持続可能な事業目標とその実践に深くコミットしていることが判明した。 投資家の多数(58%)は、 投資を通じて社会問題の解決に貢献する責任があると考えている。 投資家のコミットメントは、 投資家個人としてのものだけでなく、 ファンドマネージャーにも投資において同様な基準をもって企業と積極的に対話してもらいたいと思っている。

今回の調査では以下が明らかになった。

  • 投資家の53%が、 企業にメッセージを伝える最善の方法は株式を売却することであると考えており、 ミレニアル世代の43%、 X世代の38%、 ベビーブーム世代の29%が、 企業のESGパフォーマンスの低迷を理由に投資を売却したことがあると回答。
  • 投資家の半数以上(55%)が、 ファンドマネージャーもESGの実績が低い企業の株式を売却すべきだと考えている。
  • 投資家の74%が、 ファンドマネージャーがESG及びより優れたビジネス手法の双方に影響を与えるためには、 投資先の企業と対話することを期待している。

投資家とファイナンシャルアドバイザーの間でのESGに関する対話も増えている。 ESGの認知度は高く、 「ESGを知らない」と答えた投資家は17%と僅かだった。 しかしながら、 多くの投資家(41%)が、 ESGについて十分な知識がないと回答している。 このことが、 投資家がESG戦略を採用しない、 またはESG戦略への投資を増やさない主な要因となっている。 ナティクシス・インベストメント・マネージャーズの調査結果は、 アドバイザーがESGについて顧客を教育するという点で重要な役割を果たすだけでなく、 より多くの顧客とこうした会話を広げることが可能であり、 またそうすべきであることを示唆している。

世界中の投資家の59%が、 アドバイザーからESG投資について話を聞いたことがあると回答し、 56%がアドバイザーがESG課題を重要と考えるかとの質問をしてきた、 と回答しているが、 特に若年層の投資家の取組が最も高いことが分かった。 アドバイザーがESGについて話をしたことがあると回答した割合は、 ミレニアル世代が68%と、 X世代の60%、 ベビーブーム世代の52%と比較して著しく高いことが明らかになった。

ナティクシス・インベストメント・マネージャーズの日本・北アジア代表を務める加藤欣司氏は、 次のように述べている。

ESG投資の意思決定プロセスには、 ファイナンシャルアドバイザー、 ファンドマネージャー、 投資家自身など、 すべての投資関係者が関与すべきだと考える個人投資家が増えています。 これも、 投資においてESGがいかに主流になっているか、 そしてESGが投資における最も重要な意思決定項目の一つになる可能性を示しています。

ナティクシス・インベストメント・マネージャーズの2021年の「グローバル個人投資家調査」にESGのトピックが含まれていることは、 成長するESG資産に対するナティクシス・インベストメント・マネージャーズの強いコミットメントを反映している。 また、 同社は、 2024年の戦略計画(英語)( https://pressroom-en.natixis.com/news/strong-growth-ambitions-for-natixis-business-lines-at-the-heart-of-the-bpce-2024-strategic-plan-07e2-8e037.html )の一環として、 ESGを活動の中心に据え、 2024年までにサステナブル投資またはインパクト投資分野の運用資産額を6000億ユーロ以上とし、 運用総資産額の50%を占めることを目指している。

[1] 2021年10月31日~11月12日にスコットランドのグラスゴーで開催されるCOP26( https://ukcop26.org/ )は、 1994年に「国連気候変動枠組条約」を締結した締約国会議の第26回会合
[2]  出典: (C) 2021 Morningstar, Inc.「Global Sustainable Fund Flows: Q4 2020 in Review」
[3]データは、 2021年10月14日時点におけるS&P500 ESG指数とS&P500指数の米ドル建の株価収益率の3年間の比較を反映。

調査方法

ナティクシス・インベストメント・マネージャーズは、 市場や投資に関する見解を理解することを目的に、 24カ国の8550名の個人投資家を対象に調査を実施した。 データは調査会社のCoreData Researchによって2021年3月及び4月に収集された。 調査は、 投資資産が10万米ドル(または購買価格平価相当額)以上の個人投資家8550名を対象に実施された。 「Values alignment is only the tip of the iceberg for ESG(ESGにとって価値観の一致は氷山の一角でしかない)」と題するレポートの全文(英語)はこちらから閲覧できる: https://im.natixis.com/us/research/esg-insights-from-2021-individual-investors-survey