ステート・ストリート、 2020年グローバル市場展望を発表「唯一の出口は通り抜け(The Only Way Out Is Through)」


ステート・ストリート・コーポレーション(本社:米ボストン)の資産運用部門であるステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズは2019年12月4日、「唯一の出口は通り抜け(The Only Way Out Is Through)」と題する2020年グローバル市場展望を発表した。同社社では、世界経済が「重大なリスクを回避して」モメンタムを維持すれば、成長が持続して、景気後退は回避されると考えている。

ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズの最高投資責任者であるリック・ラカイエ氏は次のように述べている。

2020年は景気後退の年ではありません。金融緩和の継続や政策転換に加え、長期にわたり底堅い国や地域が散見されることから、世界経済は2020年にかけて回復が続くと思われます。低いインフレ率、堅調な個人消費、そして相対的に力強い世界のサービスセクターといった好材料が景気を前進させています。明らかなリスク要因もありますが、全体的には、世界の実質GDP成長率は2019年の当社予想である3.2%から、2020年は3.4%に上昇が見込まれます。

ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズでは、複数の要因が力強い支えとなり世界経済を前進させるとみている。同社は、マクロ的な観点からすれば、投資環境には大きな課題が予想されるが、投資家はこうした環境下でも底堅い国・地域や投資機会を見出すことができるはずであるとしている。

ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズによると、リスクはさまざまな面で浮上するとみられ、中でも、地政学的緊張が高まり、政治面の不確実性が続くと予想される。同社によると、こうした状況下では、特定のリスク資産に重点を置く投資先の選択が重要にな理、この点に留意すると、投資家にとって重要な問題は以下の4つの分野に集約される。

  • 地政学:ブレグジット、貿易摩擦、イラン問題、米国の弾劾手続きなどの問題の結末は?さらなる問題が表面化するのか?
  • 経済の底堅さ:根本的な解決がなされないまま、堅調な個人消費は持続するか?
  • 政策:政策対応は金融政策による介入にとどまらず、財政刺激まで拡大されるか?
  • 構造改革:新興国市場や欧州における改革のペースは加速するか?

ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズは、「これらの分野で良好な結果が得られれば、欧州や新興国市場の経済は、改善余地の小さい米国以上に大きく押し上げられるでしょう」と述べている。

株式は北米で投資価値を提供するが、他の地域ではリスクが浮上

ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズによると、2020年にかけて、中央銀行による支援策が株式へのオーバーウエイトを正当化すると思われるが、割高感を増すバリュエーション、貿易リスクの継続、繰り返される市場のボラティリティに伴ってその効果も弱まるかもしれない。

ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズで副最高投資責任者を務めるロリ・ハイネル氏は次のようにコメントしている。

力強い国内需要と健全な個人消費のデータが米国株式を下支えしています。米国では、昨今の金融緩和を受けてリスク選好度が高まり、景気後退リスクが低下しています。対照的に、欧州株式はバリュエーションが魅力的ですが、政治的/構造的な不確実性の影響を受けやすい状態が続いています。財政政策の転換やブレグジットをめぐる政治面の明確化に加えて、必要とされる構造改革に動きがあれば、欧州株式も価値が引き出されるはずです。

新興国市場とアジア太平洋地域の株式は長期的に上昇の可能性

アジア太平洋地域投資責任者のケビン・アンダーソン氏は次のように述べている。

今は逆風が吹いていますが、長期的には新興国株式は上昇が見込まれるため、投資家はもうしばらく忍耐が必要です。新興国株式の価値が創出されるきっかけとしては、人口動態や構造改革による国内市場のファンダメンタルズの改善や長期的なGDP成長率と並んで、新興国市場ベンチマークの組み入れ拡大に伴う資金流入の加速、米中貿易摩擦の緩和、グローバルファンドにおける新興国市場への配分比率の引き上げなどが考えられます。そうした刺激を与えるきっかけを待つ中で、新興国株式の足元のリターンにかなりのばらつきがある点に留意することが重要です。これは、慎重な銘柄選択に機会があることを示唆しています。

債券市場における低金利環境の継続からボラティリティが予想される

ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズによると、概ね、債券市場では低金利環境が予想されている。欧州と日本を除く市場でプレミアムを提供しているが、それもここ最近で低下しており、この傾向は2020年も続くとみられる。ただし、新たな要因が加わることで、債券市場に新たな機会が生まれる可能性がある。利下げや量的緩和の継続といった緩和的金融政策によって長期金利が安定的に推移し、GDP成長率の改善を後押しするかもしれない。

そうなれば、社債市場で格付けが安定するため、社債発行企業にとっては望ましい市場環境となる。社債発行は減少傾向にあり、欧州中央銀行(ECB)による債券購入が価格を押し上げる公算が大きいため、社債保有者は市場のテクニカル面の改善から追加的な恩恵を受けると思われる。経済成長が期待外れに終わるリスクが残っているため、投資家は格付けの低いクレジットの選択肢に資産を振り向けないように見極める必要がある。

新興国市場の中では、利回りの高さと分散効果から、特に中国国債は検討する価値がある。また、2020年の新興国市場債券ベンチマークへの組み入れにより、中国国債には大幅な資金流入が予想される。

為替と気候リスクは追加の重要な考慮事項

ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズによると、2020年は地政学リスクが為替にとっての重要な変動要因となる。ブレグジットをめぐる不確実性が年明けまで続くことで、欧州の投資家にとってリスクが続く。ボラティリティはやや落ち着いているが、投資家は油断をしないよう気を付けなければならない。割高なバリュエーションは、将来的に市場が大きく変動する可能性を示唆している。現在は米ドルが上昇しているが、反転のきっかけが待ち受けているかもしれない。貿易摩擦の解消もその一つ。

投資家は以前よりも、気候変動リスクのような長期的テーマに基づくリスク要因と、それが企業にもたらす影響に注目するようになっている。リック・ラカイエ氏は次のように述べている。

引き続き、気候変動リスクはほぼ全ての市場セグメントや業界において重要な考慮事項であると捉えています。気候変動は金融市場にとってリスクです。その理由は、金融市場は、気候が経済成長や社会、そして世界のエネルギー構成に及ぼす影響を反映しようとするからです。