民営化ファンドとは?


民営化ファンドとは

民営化ファンドというと、国営企業や政府が保有する特殊会社などを民営化するために政府によって設立されたファンドや、海外の民営化が期待できる企業への投資を目的としたファンドを指す場合などがあります。つまり、民営化ファンドという言葉は、民営化に関わるファンドの総称であり、その形態や設立目的はファンドにより大きく異なります。

 

電源開発民営化ファンドのケース

国営企業や政府が株式を保有する特殊会社などの民営化に活用された民営化ファンドの一つの例としては、日本政府による電源開発民営化ファンドが挙げられます。電源開発や卸電力供給、送変電設備の整備を主な事業とする電源開発株式会社は1952年に電源開発促進法を根拠法とする国の特殊会社として設立され、資本金のうち約67%を政府が保有し、残りを民間の電力会社が出資していました。

しかし、特殊法人の整理合理化の一環として民営化が決定され、この民営化前に財務体質を強化するために増資が行なわれることになり、このために借入金と出資金からなる民営化ファンドの「J-POWER民営化ファンド株式会社」が組成され、この民営化ファンドから同社に対して出資が行われました。

具体的には、政府が保有する電源開発株式会社の株式は「J-POWER民営化ファンド株式会社」に現物出資として出資され、ファンドが電源開発株式会社に対して出資(増資)を行い、その後、電源開発は2004年10月に東京証券取引所に上場した際に、ファンドは保有株式の全てを売却し、民営化が完了しました。

また、上記のケースとは形態は異なるものの、国営企業の民営化を進める東欧諸国でも多くの民営化ファンドが存在しています。

 

クロアチアのケース

例えば、クロアチアの国営企業の民営化を促進する目的で、クロアチア政府によって90年代に設立されたのがクロアチア・プライバティゼイション・ファンド(クロアチア民営化ファンド)です。同ファンドには、国営企業の株式や政府保有の不動産が含まれており、ファンドの企業株式ポートフォリオは、クロアチア政府が保有する1,112社の株式によって構成され、それらを一般への売り出しや入札によって売却することで民営化を行うというものでした。しかし、2010年に発表された論文「ANALYSIS OF CROATIAN PRIVATIZATION FUND PORTFOLIO」(Boris Crnkovic、Zeljko Pozega、 Ivo Mijoc)によると、20年が経過した段階でも、クロアチア民営化ファンドには依然として800以上の政府保有企業の株式が残っているということです。

 

ベトナム民営化ファンドのケース

一方、民営化が期待できる企業に投資するタイプの民営化ファンドとしては、ユナイテデッドワールド証券(現、エイト証券)が2006年3月に組成した「ベトナム民営化ファンド」が挙げられます。同ファンドは、高い経済成長を続けるベトナムにおいて、政府が国営企業の民営化を進めており、今後民営化が期待できる企業に投資して、投資企業の民営化による上場後のキャピタルゲインの獲得を目指すファンドです。形態としては投資事業匿名組合の形をとっており、個人投資家向けに組成されました。同社によるベトナム民営化ファンドは、2007年までに5本が設定されました。