ICGN グローバル・ガバナンス原則とは?


ICGNとICGNグローバル・ガバナンス原則

ICGNグローバル・ガバナンス原則は、十分なコーポレート・ガバナンスの体制を備えた企業とはどうあるべきかというICGNの基準を示すものです。ICGNグローバル・ガバナンス原則は、最初に2001年に公表され、何度か改訂が実施されてきました。

ICGNは企業のコーポレート・ガバナンス(企業統治)とスチュワードシップ(責任ある機関投資家としての行動)の促進のために支援や助言を行うグローバルな団体で、1995年にロンドンに設立されました。

ICGNはInternational Corporate Governance Networkの略称で、日本語での名称は国際コーポレート・ガバナンス・ネットワークです。世界中の機関投資家、監査法人、企業などがICGNに加盟しています。日本からも、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)、日本生命、第一生命、アセットマネジメントOneなど多くの機関投資家が加盟しています。

ICGNは、コーポレート・ガバナンスと投資家のスチュワードシップの実効的な水準の向上を通じ、効率的なグローバル市場と持続可能な経済の発展を推進することをミッションに掲げています。

なお、コーポレート・ガバナンスとは、企業経営を管理・監督する仕組みのことです。具体的には、会社は企業価値の向上に努めているか、会社の所有者である株主に最大限の利益の還元を行っているか、取引先、従業員、地域社会、環境に配慮した経営を行っているか、不正を行っていないか等を監督する仕組みのことです。

コーポレート・ガバナンス原則には、ICGNのグローバル・ガバナンス原則だけでなく、世界各国の証券取引所が定めるコーポレート・ガバナンス・コードやOECD(経済開発協力機構)が定めるコーポレート・ガバナンス・コードなど、様々なコーポレート・ガバナンス原則がありますが、基本的には、コーポレート・ガバナンスの向上が企業業績や株主利益の向上、金融市場の安定、経済成長に貢献するという考えを基本としています。機関投資家は、投資対象企業との対話を通じて、それらの企業のコーポレート・ガバナンスの向上・企業価値の向上・企業の持続的な成長を推進するという役割を担っています。

 

ICGNグローバル・ガバナンス原則

ICGN グローバル・ガバナンス原則は次の8原則で構成されています(2020年12月末現在)。

原則1:取締役会の役割と責務

取締役会は、十分な情報に基づき行動するとともに、誠実かつ適切な注意(care and diligence)の下、債権者を含む関係ステークホルダーに配慮しつつ、会社の長期的利益、株主の利益のために行動すべきである。

 

原則2:指導力(Leadership)と独立性

取締役会の指導力には、取締役会独自の役割と執行の役割の明確化とバランス、少数株主の利益を保護し、会社全体の成功を導く高潔なプロセス(integrity of process)が必要とされる。

 

原則3:取締役会の構成と指名

取締役会には、効果的な牽制や議論、客観的な意思決定が行うことが可能な関係分野の知識、独立性、能力、業界経験など十分な多様性を備えた取締役が配置されるべきである。

 

原則4:企業文化

取締役会は高水準の企業倫理を採用し、会社のビジョン、ミッション、目標の健全性の確保と、それらが会社の価値観を示すようにすべきである。倫理規程は効果的に周知徹底されるとともに、リスク管理システムと報酬体系を含む企業の戦略と事業運営に統合されるべきである。

 

原則5:リスクの監督

取締役会は、定期的に、または、重要な事業上の変更があるごとに、リスク管理の手法を積極的に監督、検証および承認し、当該手法が効果的に機能していることを確認すべきである。

 

原則6:報酬

役員報酬は、会社の長期的な業績と持続可能な価値創造の促進のため、最高経営責任者(CEO)・執行役員の利益と会社・株主の利益が整合的となるように設計されるべきである。また、取締役会は、報酬総額の決定において、株主への配当金支払額、将来の投資に向けた資本確保との適 切なバランスがとれるようにすべきである。

 

原則7:報告と監査

取締役会は、財務諸表、戦略・事業成績、コーポレートガバナンス、重要な環境・社会要因に関する投資家やその他のステークホルダーへの開示が、適時かつ高品質の水準で行われるよう監督すべきである。堅牢な監査の実践は必要とされる質の高い開示水準の維持にとって不可欠である。

 

原則8:株主の権利

すべての株主の権利は平等に取り扱われるべきである。このことは、株主議決権が株主の経済的持分(economic stake)に緊密に結びついていること、および、少数株主が会社内における自ら の利益に影響を与える重要な決定や取引について議決権を有することを意味する。

 

ICGNグローバル・ガバナンス原則は改定されることがあります。最新版については、ICGNのホームページhttps://www.icgn.orgでご確認ください。