Net Zero Asset Managers initiative(ネット・ゼロ・アセット・マネージャーズ・イニシアティブ)とは?


Net Zero Asset Managers initiativeとは?

2021年以降、多くの投資信託運用会社がネット・ゼロ・アセット・マネージャーズ・イニシアティブへの加盟を表明しています。このネット・ゼロ・アセット・マネージャーズ・イニシアティブとはどんなものでしょうか。

ネット・ゼロ・アセット・マネージャーズ・イニシアティブとは、2015年に採択されたパリ協定の目標に沿って、2050年までに投資先企業の温室効果ガス排出量を実質ゼロ(ネット・ゼロ)にすることを目指す資産運用会社によるグローバルな枠組みです。2020年12月に発足しました。2022年5月現在、世界で273社が参加しており、多くの日本の資産運用会社(投資信託の運用会社を含む)も参加しています。

Net Zero Asset Managers initiative のホームページ

 

パリ協定について

パリ協定は2015年12月にフランス パリで開催された第21回気候変動枠組条約締約国会議で採択された気候変動抑制に関する多国間の国際的な協定です。パリ協定では、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をすること、そのため、21世紀後半(2050年)には、温室効果ガス排出量から森林などによる吸収量を差し引いた合計をゼロ(ネット・ゼロ)にするという目標が掲げられました。

 

ネット・ゼロ・アセット・マネージャーズ・イニシアティブ

ネット・ゼロ・アセット・マネージャーズ・イニシアティブは、このパリ協定の目指す温室効果ガスの排出ネット・ゼロという目標を支援することを約束し、その目標の達成にむけて、2050年までのネット・ゼロを目指す企業への投資を積極的に行うことを目的として発足したものです。

 

ネット・ゼロ・アセット・マネージャーズ・イニシアティブの3つのコミットメント

ネット・ゼロ・アセット・マネージャーズ・イニシアティブに参加する運用会社は次の3つの約束(コミットメント)をしています。

  • 2050年までに全運用資産においてネット・ゼロ・エミッションを達成するという抱負(アンビション)に基づき、アセットオーナーである顧客と協力して脱炭素化目標に取り組む。
  • 2050年までにネット・ゼロ・エミッションを達成するために、中間目標(全資産に対する割合)を設定する。
  • 少なくとも5年ごとに中間目標を見直し、全運用資産の100%においてネット・ゼロ・エミッションが達成できるよう目標を段階的に引き上げる。

 

また、これらのコミットメントを実現するために、資産運用会社は次を実行することを約束しています。

  • 地球温暖化5℃に関するIPCC(気候変動に関する政府間パネル)特別報告書で要求されている世界全体の二酸化炭素50%削減の目標と整合性のある2030年の中間目標を設定する。
  • 投資ポートフォリオの温室効果ガス排出量としてスコープ1、スコープ2と、重要なポートフォリオのスコープ3排出量を可能な限り考慮して計測する。(Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセスなど)、Scope2 : 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出、Scope3 : Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)
  • 投資するセクターや企業において、実体経済の排出量削減の達成を優先させる。
  • オフセットを利用する場合は、技術的・経済的に実現可能な代替案がない場合、長期的な炭素除去に投資する。
  • 必要に応じて、2050年までのネット・ゼロ・エミッションに沿った投資商品を作り、気候変動対策への投資拡大を促進する。
  • アセットオーナーの顧客に対して、ネット・ゼロ投資、気候変動リスクと機会に関する情報と分析を提供する。
  • 2050年までにすべての運用資産でネット・ゼロ・エミッションを達成するという抱負に沿った、明確なエスカレーションと投票方針を伴うスチュワードシップとエンゲージメント戦略を実施する。
  • 信用格付機関、監査人、証券取引所、プロキシーアドバイザー、投資コンサルタント、データ・サービスプロバイダーなど、投資システムの主要な関係者と連携し、投資家が利用できる商品とサービスが、2050年までに世界でネット・ゼロ・エミッションを達成するという目標と確実に整合するようにする。
  • 全ての直接的および間接的な政策提言が、2050年までに世界でネット・ゼロ・エミッションを達成するという目標を支援するものとなるようにする。
  • 気候行動計画を含むTCFD開示を毎年公表し、適用されるアプローチが強固な方法論に基づいており、国連の「Race to Zero」の基準と一致し、コミットメントに沿った行動が取られていることを確認するため、パートナー団体を通じてインベスターアジェンダ(Investor Agenda:2018年発足の低炭素推進投資家イニシアチブ)に提出し、審査を受ける。

(出典:Net Zero Asset Managers initiative、翻訳:投信資料館)

これらのコミットメントの正式文章はNet Zero Asset Managers initiativeのホームページでご確認下さい。

 

つまり、ネット・ゼロ・アセット・マネージャーズ・イニシアティブに参加している運用会社は、2050年のネット・ゼロ・エミッションに向けて、運用する資産全体に対するネット・ゼロの割合について暫定目標を設定し、5年ごとに目標を見直し、資産全体でネット・ゼロになるよう目標を段階的に引き上げるために様々な取り組みを行うことを約束しています。また、2050年までのネット・ゼロ・エミッションの実現に資する投資商品の開発、気候ソリューションへの投資の促進、ネット・ゼロ投資と気候リスクおよび機会に関する情報と分析の顧客への提供、スチュワードシップ、エンゲージメント、議決権行使政策、提言政策をネット・ゼロ目標に整合性のあるものにすることを約束しています。

 

運用資産の脱炭素とは?

では、運用資産のゼロ・エミッションとは何でしょうか。

運用資産の脱炭素(ネット・ゼロ)とは、資産運用会社が投資する企業の温室効果ガス排出をネット・ゼロとすることを意味しています。

日本でも2006年から「地球温暖化対策の推進に関する法律」で、温室効果ガスを多量に排出する事業者(特定排出者)に排出量の算定し、国に報告することを義務付けており、多くの企業が温室効果ガスの排出量を公表しています。運用会社は、投資しているこれらの企業の排出量が運用資産全体においてネット・ゼロになるようにするということです。投資先企業が温室効果ガスの排出量を公表していない場合には、CO2排出量計算会社などの機関が算出した推計値を活用して、運用資産全体の排出量を算出しています。

参考:排出量の算定方法(環境省 温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度

 

ネット・ゼロ・アセット・マネージャーズ・イニシアティブの参加会社

2022年5月現在、世界で236の運用会社等がこのイニシアティブに参加しています。日本の運用会社(日本に拠点のある外資系運用会社を含む)では、次の投資信託の運用会社がこのイニシアティブに参画しています。最新の参画会社についてはこちらで確認して下さい。

  • アセットマネジメントOne
  • BNPパリバ・アセットマネジメント
  • アムンディ
  • コムジェスト
  • 大和アセットマネジメント
  • フィデリティ
  • フランクリン・テンプルトン
  • HSBCアセットマネジメント
  • インベスコ
  • JP モルガン・アセット・マネジメント
  • 三菱UFJ国際投信
  • ニッセイ アセットマネジメント
  • 日興アセットマネジメント
  • 野村アセットマネジメント
  • ピクテ
  • 三井住友DSアセットマネジメント
  • 東京海上アセットマネジメント
  • T ロウ・プライス
  • UBSアセットマネジメント