ソーシャルボンドとは?


ソーシャルボンドとは

ソーシャルボンドとは、社会的課題に取り組むプロジェクト(ソーシャルプロジェクト)の資金を調達するために発行される債券のことです。

社会的課題の解決のために発行される債券であれば、全てがソーシャルボンドと呼ばれるかというとそうではありません。金融の世界では、ICMA(国際資本市場協会)が定めたソーシャルボンドの定義とソーシャルボンド原則に則って発行され、第三者評価機関から、ソーシャルボンド原則の4つの要素に適合していることが確認されたものをソーシャルボンドと呼びます。

ICMAはInternational Capital Market Associationの略称で、スイスに本部を置く国際債券市場に携わる関係者の自主規制団体で、世界約60カ国の発行体、発行市場・流通市場取引仲介業者、アセット・マネージャー、投資家、資本市場インフラ運営者等500以上の会員を擁しています。

 

ソーシャルボンドの定義

ICMAでは、ソーシャルボンドを次のように定義しています。

ソーシャルボンドとは、調達資金の全てが、新規又は既存の適格なソーシャルプロジェクトの一部又は全部の初期投資又はリファイナンスのみに充当され、かつ、ソーシャルボンド原則の4つの核となる要素に適合している様々な種類の債券である。

 

ソーシャルボンド原則

ソーシャルボンド原則とは、ソーシャルボンド市場の秩序ある発展を促進することを目的として、ICMAによって制定された、自主的な手続きに関するガイドラインで、次の4つの核となる要素で構成されています。

  1. 調達資金の使途
  2. プロジェクトの評価と選定のプロセス
  3. 調達資金の管理
  4. レポーティング

 

1.調達資金の使途について

ソーシャルボンドにおいて肝要なのは、調達資金がソーシャルプロジェクトのために使われることであり、そのことは、証券に係る法的書類に適切に記載されるべきである。調達資金使途先となる全てのソーシャルプロジェクトは明確な社会的便益を有すべきであり、その効果は発行体によって評価され、可能な場合は、定量的に示されるべきである。

ここでいう社会的課題を解決するためのソーシャルプロジェクトの事業区分には次のようなものが含まれます。

  • 手ごろな価格の基本的インフラ設備(例:クリーンな飲料水、下水道、衛生設備、輸送機関、エネルギー)
  • 必要不可欠なサービスへのアクセス(例: 健康、教育及び職業訓練、健康管理、資金 調達と金融サービス)
  • 手ごろな価格の住宅
  • 中小企業向け資金供給及びマイクロファイナンスによる潜在的効果を通じた雇用創出
  • 食糧の安全保障
  • 社会経済的向上とエンパワーメント

また、ソーシャルプロジェクトが対象としている人としては次が挙げられています。

  1. 貧困ライン以下で暮らしている人々
  2. 排除され、あるいは社会から取り残されている人々、あるいはコミュニティ
  3. 自然災害の罹災者を含む弱者グループ
  4. 障害者
  5. 移民や難民
  6. 十分な教育を受けていない人々
  7. 十分な行政サービスを受けられない人々
  8. 失業者

 

2.プロジェクトの評価と選定のプロセス

ソーシャルボンドの発行体は、以下の点を投資家に対して明確に伝えることが求められています。

  • 社会的な目標
  • 発行体が対象となるプロジェクトが前述の適格なソーシャルプロジェクトの事業区分に含まれると判断するプロセス
  • 関連する適格性についてのクライテリア(プロジェクトが有する潜在的に重大な社会的、環境的リスクを特定し、制御するために適用される排除クライテリアやその他のプロセスを含む)

 

3.調達資金の管理

ソーシャルボンドによって調達される資金に係る手取金の全部、あるいは手取金と同等の金額は、サブアカウントで管理されるか、サブポートフォロリオに組み入れられるか、又はその他の適切な方法のいずれかにより追跡されるべきである。

 

4.レポーティング

発行体は、資金使途に関する最新の情報を容易に入手可能な形で開示し、それを続けるべきであり、また、その情報は全ての調達資金が充当されるまで年に一度は更新し、かつ重要な事象が生じた場合は随時開示し続けるべきである。

ソーシャルボンド原則の全文(英語版・日本語版)はICMAのホームページhttps://www.icmagroup.orgで入手できます。

 

ソーシャルボンドの外部評価

ソーシャルボンド原則では、ソーシャルボンドの発行体は、ソーシャルボンドの発行又はソーシャルボンド発行プログラムに関連して、発行する債券がソーシャルボンド原則の4つの要素に適合していることを確認するために、外部評価を付与する機関を任命することが推奨されています。日本では、株式会社格付投資情報センター株式会社日本格付研究所などが外部評価機関として、ソーシャルボンドがソーシャルボンド原則の4つの原則に適合しているかどうかの評価を行なっています。

 

ソーシャルボンドの種類

ICMAによると、ソーシャルボンドには次の4つの種類があります。(2020年7月現在)

 

  1. Standard Social Use of Proceeds Bond(標準的ソーシャルボンド)

ソーシャルボンド原則に適合する発行体への遡及性を有する標準的な債券。

  1. Social Revenue Bond(ソーシャルレベニュー債)

発行体への遡及性を有しないソーシャルボンド原則に適合する債券で、債券の信用の源泉は、対象となるソーシャルプロジェクトからの事業収入や使用量、税金などの将来に見込まれるキャッシュフローであり、債券により調達された資金の使途は、信用の源泉との関係の有無を問わないソーシャルプロジェクトとなる。

  1. Social Project Bond(ソーシャルプロジェクト債)

一つ又は複数のソーシャルプロジェクトに係るソーシャルボンド原則に適合するプロジェクトボンドで、発行体への潜在的な遡及性の有無に関わらず、投資家は当該プロジェクトのリスクに直接晒される。

  1. Social Securitised Bond and covered Bond(ソーシャル証券化債、ソーシャルカバードボンド)

一つ又は複数の具体的なソーシャルプロジェクトを裏付け資産とするソーシャルボンド原則に適合する債券で、カバードボンドや、ABS、MBS、その他の仕組商品を含むが、これらに限定されるものではない。投資家にとっての一義的な償還原資は一般的に裏付け資産からのキャッシュフローとなる。多々追えば、社会的住宅や病院、学校などの資産に基づいて発行されるカバードボンドなどが含まれる。

(出所:ソーシャルボンド原則2018 ソーシャルボンド発行に関する自主的ガイドライン2018年6月 付録I)

 

日本企業・機関が発行したソーシャルボンドの例

ICMAによると、2020年7月末までに、次の日本法人がソーシャルボンドを発行しています。投資信託に関係するところでは、不動産投資信託ヘルスケア&メディカル投資法人が2020年1月30日にリート初のソーシャルボンドを発行しました。

企業名 外部評価機関 URL
ANA ホールディングス株式会社 日本格付研究所 https://www.ana.co.jp/group/en/csr/
東日本高速道路株式会社 格付投資情報センター https://www.e-nexco.co.jp/en/ir/bond_rate/socialfinance/
阪神高速道路株式会社

n/a

https://hanshin-exp.co.jp/company/ir/sf/
ヘルスケア&メディカル投資法人 日本格付研究所 http://www.hcm3455.co.jp/en/ir/index.html
日本政策金融公庫 日本格付研究所 https://www.jfc.go.jp/n/english/operations.html
国際協力機構(JICA) n/a https://www.jica.go.jp/english/ir/bonds/index.html
日本学生支援機構 n/a https://www.jasso.go.jp/en/about/ir/socialbond.html
大学改革支援・学位授与機構 日本格付研究所 https://www.niad.ac.jp/investor/entry-3978.html