エンジニアリング・レポートとは


エンジニアリング・レポートとは

エンジニアリング・レポート(Engineering Report)とは、不動産投資法人(=不動産投資信託)の運用会社が投資を検討している不動産物件の状況を把握し、実際に投資対象とするかどうかの判断を行うために、専門の業者に依頼し、取得する建物の状況調査報告書(物的状況に関する調査報告書)のことです。

国土交通省が発表している「不動産鑑定評価基準」において、エンジニアリング・レポートは「建築物、設備等及び環境に関する専門的知識を有する者が行った証券化対象不動産の状況に関する調査報告書」と定義されています。

 

エンジニアリング・レポートと不動産投資信託

不動産投資信託の資産運用会社は、ファンドが投資する不動産の選定・取得の判断を行うとき、対象の不動産について専門業者からこのエンジニアリング・レポートを取得し、また、その不動産の売主から一定の表明と保証を取得することで、不動産に問題がないことなどを確認します。ただし、エンジニアリング・レポートにおいて、問題とされなかった事項や売主が保証した事項であっても、取得後に問題(欠陥等)が判明する可能性はあります。エンジニアリング・レポートは、建物に問題がないことを保証するものではありません。

 

同じ不動産評価に不動産鑑定士が行う鑑定評価がありますが、不動産鑑定士は、依頼者に対し 鑑定評価に際し必要なエンジニアリング・レポートの提出を求め、その内容を分析・判断した上で、鑑定評価に活用することになっています。

 

物的状況とは

エンジニアリング・レポートでいう物的状況に関する調査には次の調査等が含まれます。

  • 対象不動産の建物状況
  • 公法上及び私法上の規制、制約等(法令遵守状況調査)
  • 修繕計画
  • 再調達価格
  • 有害な物質(アスベスト等)に係る建物環境
  • 土壌汚染
  • 地震リスク
  • 耐震性
  • 地下埋設物

 

エンジニアリング・レポートの留意点

なお、金融庁は、金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針 平成24年4月において、不動産関連ファンド運用業者の業務に係る評価項目について、エンジニアリング・レポート及び鑑定評価書の作成を委託及び受領する場合には、以下の点に留意することを求めています。

  • レンジニアリング・レポート作成業者及び不動産鑑定業者については、客観的基準に基づいた選定等により第三者性が確保されているか。
  • ER及び不動産鑑定評価を依頼する際に、エンジニアリング・レポート作成業者及び不動産鑑定業者に対して必要な情報等を提供しているか。また、情報等の提供状況の管理は適切に行われているか。
  • 作成を依頼したエンジニアリング・レポートを受領する際に、上記の情報等の反映状況について必要な検証を行うとともに、以下の観点についての確認が行われているか。
    • 土壌汚染や有害物質の調査においては、必要な調査がなされその調査結果が客観的な根拠により担保されているか。
    • 建物の個別の部位の各種修繕・更新費用等の見積もりにおいて、如何なる修繕が如何なる根拠に基づいて算定されているかについて確認しているか。
    • 対象物件の遵法性の検証に当たっては、法律のみならず地区計画等の条例等まで必要な検証が行われているか。
  • 評価を依頼した鑑定業者から鑑定評価書を受領する際に、以下の観点についての確認が行われているか。
    • エンジニアリング・レポートの考え方を考慮・反映されたものであるか。また反映していない事項については、その理由及び根拠を確認しているか。
    • DCF法を採用する場合において、将来収支及び稼働率等ついては、客観的なデータに基づき見積もった上で、妥当性を検証しているか。また、前提条件となるディスカウント・レートやターミナル・レートの見積りも同様に、その水準の妥当性を検証しているか。
    • 不動産そのものの流動性及び不動産の生み出すキャッシュフローに影響を与える可能性のある項目について必要な調査が行われているか。
  • デューディリジェンスの結果を踏まえ取得・売却価格を算定する際、エンジニアリング・レポート及び鑑定評価書の記載内容等を活用しない場合には、採用した数値等の妥当性を検証するとともに、その根拠を記録保存することとしているか。