エマージング諸国の現地通貨建て国債とは


エマージング市場

エマージング諸国の現地通貨建て国債

投資信託ETFには、エマージング諸国の現地通貨建て国債に投資するものがありますが、このエマージング諸国の現地通貨建て国債とはどのような投資対象でしょうか。

エマージング諸国とは新興諸国(エマージング・カントリー)のことで、新興諸国が発行する国債には、ブラジルであればブラジルの通貨であるレアル建て、ロシアであればルーブル建てのように、自国の通貨建てで発行される国債と、ドル建てやユーロ建てのように、外国の通貨で自国以外の国や地域で発行される国債があります。エマージング諸国の現地通貨建て国債とは、前者の新興国の政府が自分の国の通貨建てで発行する債券のことを指します。

 

自国通貨建て国債

自国通貨建てで発行される国債は、最も一般的な国債です。基本的には自国内で発行され、国内の年金、金融機関、ファンド、保険会社、個人投資家など主に国内の投資家が購入します。一部は非居住者(海外の投資家など)も購入します。また、自国通貨建てで海外で発行される国債も一部あります。

 

外国の通貨で発行される国債

ドルやユーロなどの自国通貨以外の通貨で発行される国債は、海外で発行され、海外の投資家を対象として販売されます。

 

新興国の国債

  1. 自国通貨建て・・・主に国内で発行されるが、一部海外でも発行される
  2. 外国通貨(ドルやユーロなど)建て・・・海外で発行される

 

新興諸国の現地通貨建て国債に投資するファンドの場合、上記の1の主に国内で発行された通常の新興国通貨建ての国債と、海外で発行された新興国通貨建ての国債を投資対象としていることになります。

 

新興国の国債発行例(ブラジルのケース)

では、日本で設定された投資信託も投資対象とすることがあるブラジルの国債を例に見てみましょう。

ブラジル財務省が毎月発行しているレポート「Monthly Report Federal Public Debts」の2018年2月版によると、ブラジルの国債発行残高は約3.5兆レアルです。このうち約96.5%の3.45兆レアルは国内で発行されたレアル建ての国債の残高です。保有者の内訳は次のようになっています。ほとんどが国内の年金、金融機関などで、非居住者(外国投資家)の割合は12%程度です。

ブラジル国債保有者内訳

(データ出所:Brazil Monthly Report Federal Public Debts,2018/2)

一方、ブラジル以外の国で発行されたブラジル国債(External Federal Public Debts)の残高は、2018年2月末現在、約1,129億レアルで、その通貨別内訳は次のようにドルが9割近くを占めています。

海外発行国債の通貨別内訳

(データ出所:Brazil Monthly Report Federal Public Debts,2018/2)

 

新興国の現地通貨建て債券の魅力とリスク

新興国の現地通貨建て債券の魅力は相対的に高い金利収入と、長期的に新興国の通貨価値の上昇による利益が期待できることにあります。

新興国の10年国債利回り

(データ:Asia Bond Online, Investing.com)2018/4/26現在

自国通貨建て国債は、自国通貨以外で発行された国債に比べると、残高が大きく、より高い流動性があります。ただし、新興諸国の国債市場は、整備が進んできているとはいえ、先進国の国債市場に比べると未整備・未成熟であり、その分流動性リスクや取引コストは高くなる傾向にあります。

上記の流動性リスクに加えて、利回りが高い国ほど信用リスクは高い状態にあります。最近では、2017年11月に深刻な財政難に陥っているベネズエラが国債の利払いを不履行にしました。また、政治的に不安定な国もあります。経済成長については、先進国に比べて全般には高い成長が見込めると期待されていますが、経済が混乱した状況に置かれている国もあります。

 

新興国の債券市場の状況

新興諸国の国債の発行市場・流通市場の整備が進み、外国人投資家によるアクセスが可能になる、あるいは容易になり、一方で、より高い利回りが期待できることから外国人投資家による新興諸国の国債への投資が増えています。IMFが2018年1月に発表したワーキング・ペーパー「On International Integration of Emerging Sovereign Bond Markets」によると、ブラジル、インドネシア、マレーシア、ポーランド、南アフリカ、タイでは、国債発行残高に占める外国人投資家の保有比率は30%を超えているということです。

 

現地通貨建て国債を投資対象とする投資信託の例

日本の投資信託にも、シュローダー・エマージング・ソブリン債券(現地通貨建て)ファンド(1年決算型)やシュローダー・エマージング・ソブリン債券(現地通貨建て)ファンド(毎月決算型)のようにエマージング諸国の現地通貨建て債券に投資するものがあります。また、日本で購入できる外貨建てETFにも、iシェアーズ 現地通貨建てエマージング・マーケット債券 ETF(LEMB)、ウィズダムツリー 新興国現地通貨建債券ファンド(ELD)、SPDR バークレイズ 新興国債券(現地通貨建て)ETF(EBND)などが、現地通貨建て国債を含む新興国の現地通貨建て債券を投資対象としています。