MSCI、資本市場に対し温室効果ガス 実質ゼロ革命の牽引を呼びかけ


世界の投資コミュニティーに重要な投資判断支援ツールとサービスを提供するMSCI社は、気候変動への取り組みについて、産業革命以来最大の世界経済の再構築が必要であると2021年4月22日、レポートで発表した。

温室効果ガス実質ゼロ革命における資本の役割」は、資本市場の参加者が、甚大な気候災害を回避するために必要な体制転換を緊急に推進するうえで、強力かつ前向きな推進力とならなければならないことを強調している。この行動の呼びかけは、2050年までに温室効果ガス実質ゼロ経済の達成を推進するために、企業と同様に資本の所有者および管理者が進めるべき具体的な手順を定義している。

MSCIによるオールカントリ・ワールド・インベスタブル・マーケット・インデックス(MSCI ACWI IMI)の分析(市場価値が70兆米ドル超1で50の先進国および新興国市場にわたる約9,000社の上場企業の測定)では、これらの企業が1年間で推定11.2ギガトン2の二酸化炭素を排出したことを明らかにした。MSCIのモデルは、現在の慣行を変更しない場合、これらの企業の排出量が2050年までに年間16.8ギガトンに達し3、今世紀末までに地球の気温が3.5度上昇4することを示唆している。この軌跡は、温室効果ガス実質ゼロを達成するための途方もない困難と即時行動の緊急性を示唆している。

上記のことから、MSCIは以下のことを呼びかけている:

  • ソブリン・ウェルス・ファンド、年金ファンド、基金、保険会社、個人を含むアセット・オーナーは、資本をより排出量の少ない投資や受け入れられた温暖化シナリオに沿ったグリーン・ソリューションに再配分し、世界の総排出量を年間10%削減するためポートフォリオを前年比で脱炭素化することを目標とし、ポートフォリオの温室効果ガス実質ゼロへの移行を支援するための政策的ベンチマークへ転換すること

 

  • 資産運用会社は、議決権を行使し、企業との直接的なエンゲージメントを通じて温室効果ガス実質ゼロの目標に沿うことを企業に促し、クリーン・エネルギーに資金を提供する専門知識を構築することによって資本の所有者を支援し、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)のガイドラインに沿ったリスク管理と報告に関する専門知識を構築すること

 

  • 銀行は、資金提供を通じてクリーン・エネルギーの開発および拡大に取り組む企業を支援し、温室効果ガス実質ゼロの目標と資金提供の条件を関連づけた融資、社債並びに株式発行の発展を牽引すること

 

  •  企業は、2050年よりも前に温室効果ガス実質ゼロを達成するための排出目標を設定し、排出量の削減を達成するための信頼できる具体的戦略を明確にし、データならびに取り組み内容の開示、報告にあたってはベストプラクティスを採用すること

 

脱炭素化の進捗を評価するために必要な透明性をサポートするという同社のコミットメントを考慮し、同社はMSCI ACWI IMIネットゼロ・トラッカーを四半期毎に公表する。このレポートは、MSCI ACWI IMI の総炭素排出量が1.5度の気温上昇シナリオと整合性があるかを示す。同様に、温室効果ガス実質ゼロへの道のりで最も大きな進歩を遂げた企業やセクターに焦点を当て、世界的に遅行する企業やセクターを特定する。同社は市場参加者と情報交換を行い、時間をかけて当レポートの質を高める。

MSCIの会長兼最高経営責任者であるヘンリー・フェルナンデス氏は以下のようにコメントしている。

現在の軌道では、MSCI ACWI IMIは2020年よりも2050年にはほとんど環境に配慮せず、企業の約80%は2.0度の温度上昇シナリオをはるかに下回るために必要な排出枠を超えてしまいます。5これは温室効果ガス実質ゼロへの道ではありません。資本市場は、資産所有者による資本の再配分から、資産運用会社や銀行による資金の効果的なチャネリング、より環境に配慮した投資やイノベーションに至るまで、すべての参加者による協調した行動により、温室効果ガス実質ゼロへの移行を推進するために、企業のコミットメントと並んで不可欠かつ重要な力となります。

MSCI ACWI IMIなどのグローバル・インデックスは、世界の企業の脱炭素軌道の尺度としての役割を果たすと考えます。進捗を測るための客観的で透明性のある尺度として機能することで、我々は説明責任を推進し、世界最大級の投資家の声を反映し、温室効果ガス実質ゼロ革命に必要で体系的な変革を推進するために前進している企業を特定することを支援します。

MSCIは、企業として、2040年より前に全世界の拠点で温室効果ガス排出量実質ゼロの目標に取り組んでいる。同社温室効果ガス実質ゼロの移行戦略は、炭素削減イニシアチブを通じて排出量を削減し、サプライヤーに共通の温室効果ガス実質ゼロ目標を達成するよう働きかけることに重点を置いている。