気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)、「2021年版現状報告レポート(2021 Status Report)」を提出


金融安定理事会FSB)により設立された気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)は2021年10月14日、 「2021年版現状報告レポート(2021 Status Report)」を提出した。 8つの産業における69カ国・1,650社以上の報告書を調査した結果、 TCFD提言に基づいた情報開示は過去1年間で加速し、 2018年から2019年にかけて4%ポイント増加であったのに対し、 2019年から2020年にかけては、 9%ポイントも増加したことが明らかになった。調査を受けた企業の50%以上が、気候関連のリスクや機会を開示したのは初めてだった。この成長は、 複数の国や地域において、 TCFD提言に沿った気候関連の報告義務に関する公式発表があったことに加え、 投資家や国際的な基準設定機関、 規制当局によるTCFDへの賛同が得られたことに起因している。しかし、 大きな進展があったにもかかわらず、 全体的な情報開示は依然として不足している現状。

 

TCFDの議長を務め、 ブルームバーグL.P.およびブルームバーグ・フィランソロピーズの創設者であるマイケル・R・ブルームバーグ氏は、 次のように述べている。

企業が気候変動によって直面するリスクについて、 明確で一貫性のある正確な情報を開示することで、 投資家やビジネスリーダーは、 より多くの情報に基づいて、 持続可能な財務上の意思決定を行うことができます。 それが世界経済を強化し、 健康を増進し、 気候危機への対処に繋がります。 TCFDは、 世界中から気候リスク報告書に対する賛同を集める上で、 例年以上に素晴らしい一年を過ごしました。 しかし、 まだまだ道のりは長いといえます。 世界中の政府や企業は、 クリーンエネルギー経済への移行を加速させるための取り組みを実施するにあたり、 今後もTCFDの提言を重要なツールとして活用し続けるべきです。

昨年のレポートが提出されて以降、 TCFDへ賛同する企業・組織の数は3分の1以上増加した。 現在、 新たに1,000以上の企業・組織がTCFD提言に賛同しており、 総数は全世界で2,600以上となった。 現在、 TCFDに賛同する企業・組織は89カ国・ほぼすべての経済セクターに及び、 時価総額では計25兆1,000億ドルを超えている(前年比99%増)。 民間セクターからの賛同が多く得られるにつれ、 世界中の政府や組織も法律や規制を通じて気候関連の情報開示を義務付ける方向に進み始めている。 今年だけでも、 8つの国・地域の公的機関が、 気候関連の報告を義務付けることを発表する際に、 TCFDを言及している。 また、 G7やG20の財務大臣や中央銀行総裁、 IFRS財団、 欧州委員会など、 国際的な基準設定機関や規制当局も、 TCFD提言に沿った取り組みへの賛同を表明している。

 

TCFDの議長で、 ブルームバーグL.P.のグローバル公共政策副会長を務めるメアリー・シャピロ氏 は、 次のように述べている。

投資家や規制当局の間では、 気候関連情報開示の重要性や、 資本配分の意思決定をサポートするための標準化された透明性のあるデータの必要性について、 明確なコンセンサスが形成されつつあります。 世界中の国や企業がネットゼロ目標を設定する中で、 TCFDのフレームワークは、 低炭素経済への移行を描くために必要な基準や要件の基礎となりつつあります。 そのために今日では、 企業が低炭素経済への移行に向けた計画や進捗状況、 より一貫性のある指標を開示でき、 さらに金融機関の場合は、 2℃を十分に下回るシナリオに合わせたポートフォリオの調整方法も開示できるようサポートすべく、 ガイダンスも公開しています。

FSBのランダル・クオールズ議長は、 次のように述べている。

正確なリスク評価を可能にするためには、 一貫性のある比較可能な情報開示が基本となります。 TCFD提言は、 気候関連の情報開示の基礎になるものとして、 官民セクターで幅広く賛同を得ています。 今年のレポートでは、 さらなる賛同の動きがあることが示された一方で、 情報開示のギャップが残されていることも明らかになりました。 IFRS財団が、 基準設定機関の団体と協力して、 グローバルなサステナビリティ報告基準の開発を進める中で、 TCFDの優れた取り組みを活用できることを嬉しく思います。

 

TCFDは、 2017年に初めてTCFD提言を発表して以来、 気候関連の報告が発展していることを踏まえ、 意思決定に役立つ情報開示をサポートするために、 2種類の追加文書を発表した。 TCFDは、 TCFD提言レポートとともに2017年に発表した実施ガイダンス(付録文書)の改訂版を発表した。 このような改訂版の発表は、 初版の発表以来初めてとなる。 改訂された2021年版付録文書では、 TCFD提言の「戦略」、 「指標」、 「目標」の中で推奨されている特定の情報開示について、 あらゆるセクターに対する実施ガイダンスの具体的な要素と、 金融セクターに対する補足ガイダンスが更新されている。

改訂版のガイダンスでは、 報告書の比較可能性を高めるために、 財務的影響を評価する上で特に重要な7つのカテゴリにおける業界横断的な指標を紹介している。そこには、 スコープ1、 スコープ2、 スコープ3の温室効果ガス排出量、 気候関連の移行や物理的なリスクと機会に関する指標、 資本分散、 内部炭素価格、 報酬などが含まれています。 また、 ネットゼロエコノミーへの移行を目指す企業の計画に関する情報開示なども追加されている。

また、 TCFDは、 財務諸表を作成する企業が意思決定に役立つ情報を開示し、 それらを財務的影響の推定値と関連付けることができるよう、 「指標」、 「目標」、 「移行計画」に関するガイダンスを公表した。 このような情報は、 利用者が投資、 融資、 引受業務のリスクをより適切に評価するのに役立ち、 ネットゼロに向けた道筋や進捗状況を知ることができる。 財務的影響のセクションでは、 気候関連の指標・目標・移行計画からの情報が、 気候関連問題の財務的影響を推定するのに役立つ情報をいかにして提供するかを説明している。

2021年版現状報告レポートの全文、 改訂版付録文書、 およびガイダンス資料は、 TCFDのウェブサイト(  https://www.fsb-tcfd.org/publications/ )で閲覧できる。 次回のTCFD現状報告レポートのFSBへの提出は、 2022年9月となる予定。