2022年12月に償還した投資信託―34本中25本が運用期間途中での繰上償還


12月は34本の追加型株式投資信託が償還、このうち25本が繰上償還

投資信託協会によると、2022年12月に34本の追加型の株式投資信託が償還を迎えました。償還とは投資信託が運用を終了することをいいます。

この34本のうち満期償還(定時償還)は9本だけで、25本は、ファンドが設定された時点で定められていた信託期間(運用期間)を満了せずに、運用の途中で信託期間を繰り上げて償還されたものでした。

投資信託の償還

繰上償還の理由

2022年12月に繰上償還されたファンド25本の繰上償還の理由を見てみましょう。

 

三菱UFJ国際投信は、ラップ向けファンド11本を繰上償還しましたが、臨時報告書によると、11本全てについて、全残存口数に対して受益者からの解約請求があったために繰上償還したということです。

 

また、25本中12本については運用残高が小さくなり、運用方針に沿った運用の継続が困難になったことが繰上償還の理由でした。投資信託は運用残高(純資産総額)が少なくなると、効率的に分散投資を行うことが困難になるため、各ファンドが約款で繰上償還の条件としている一定の残高(ファンドにより異なる)を下回った状態が継続すると繰上償還される傾向にあります。

 

また、東京海上アセットマネジメント株式会社の「世界ハイブリッド ルーブル 毎月」は、ロシア・ウクライナ情勢を背景にロシア・ルーブルの為替取引の流動性が著しく低下したことなど、ウクライナ情勢による影響で繰上償還されました。

 

「DIAMエマージング債券ファンド」は、ファンド・オブ・ファンズで運用されていましたが、組み入れていた外国籍投信が、運用残高の減少によって望ましい分散度合いの確保が一段と難しくなっており、市場全体のボラティリティが高まるような状況下では想定以上に損失が拡大する可能性があるため、繰上償還を実施することになったことが要因でした。

 

 

繰上償還の影響

 

投資家にとって投資信託の繰上償還は投資リスクの一つです。

 

保有している投資信託が繰上償還になった場合、その時点で評価損失があれば、償還時点で投資家の損失は確定されることになります。基準価額が回復することを期待して保有していた投資家も損失を確定し、現金化せざるをえません。一方、償還時に利益が出ていた場合は、利益を確定して通常は税金を支払うことになります。

 

これにより、投資家は運用計画を見直さざるをえなくなります。時間をかけて選んだ投資信託が、想定していた運用期間途中で運用終了されてしまうため、老後や子供の教育資金を目的とした資金計画をやり直す必要が生じてしまうわけです。

 

多くのファンドが繰上償還される現状を鑑みると、ファンドの選択には十分な注意が必要です。

 

この繰上償還リスクを回避するためには、投資信託を購入する前に、次の点を確認することがとても大切です。

 

  • 運用残高(純資産総額)が十分大きいこと
  • 運用残高が減少傾向にないこと

 

なお、投資信託協会のデータによると、ETFを除いた追加型株式投資信託の1本当たりの平均残高は約150億円です(2022年12月末現在)。一方で、純資産総額(残高)が500億円を超える投資信託は343本(2022年12月末現在)運用されています。少なくとも残高が平均以上あり、その残高が増加傾向にある投資信託を選択した方がよいでしょう。

 

 

1口当たり償還額

 

2022年12月に償還した投資信託の1口当り償還額(A)を見ると、34本中17本は設定時の基準価額である10,000円を下回る金額で償還しました。

1口当り償還額が最も高かったのは、マニュライフ・インベストメント・マネジメント株式会社の「US株主還元ファンド(年1回決算型)」で、1口当り償還額は20,592.58円でした。

一方で、1口当り償還額が最も低かったのは、SOMPOアセットマネジメントの「好配当グローバルREITプレミアム・ファンド 円ヘッジありコース」で1口当り償還額は2,169.08円でした。同ファンドは、2013年1月に設定されたファンドで、2022年12月に満期償還を迎えました。

 

 

1口当たり償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額

 

1口当り償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額(トータル・リターン)で見ると、この合計額(A+B)が10,000円を下回ったファンドが6本ありました。

1口当り償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額が最も高かったのも、「US株主還元ファンド(年1回決算型)」で、合計額は20,592.58円(1口当り償還額20,592.58円+分配金0円)でした。

 

一方、この合計額が最も低かったのは、三菱UFJ国際投信の「フランス国債7-10年ラダーファンド(為替ヘッジあり)(ラップ向け)」で、合計額は8,942.93円(1口当り償還額8,942.93円+分配金0円)でした。

 

 

2022年12月に償還した追加型株式投資信託の一覧

運用会社 ファンド名 設定日 償還時純資産
総額
1口当り
償還額
(A)
期中
分配金
(B)
合計
(A) + (B)
満期/繰上
日興 日興新世代新興国株式ファンド 2007.12.27 2,093 11,143.53 100.00 11,243.53 満期
三菱UFJ国際 三菱UFJ/マッコーリー米国ハイインカムリートファンド<為替ヘッジあり>(毎月決算型) 2013.2.18 230 7,281.81 4,800.00 12,081.81 満期
三菱UFJ国際 三菱UFJ/マッコーリー米国ハイインカムリートファンド<為替ヘッジなし>(毎月決算型) 2013.2.18 322 8,829.71 8,300.00 17,129.71 満期
三菱UFJ国際 日経アジア300インベスタブル・インデックス・ファンド 2018.1.31 24 10,842.80 20.00 10,862.80 繰上
三菱UFJ国際 アジアリート戦略オープン(為替ヘッジあり)毎月決算型 2015.8.21 34 9,654.48 1,680.00 11,334.48 繰上
三菱UFJ国際 アジアリート戦略オープン(為替ヘッジあり)年2回決算型 2015.8.21 32 7,396.54 4,222.00 11,618.54 繰上
三菱UFJ国際 アジアリート戦略オープン(為替ヘッジなし)毎月決算型 2015.8.21 68 11,940.44 2,520.00 14,460.44 繰上
三菱UFJ国際 アジアリート戦略オープン(為替ヘッジなし)年2回決算型 2015.8.21 99 9,497.64 4,711.00 14,208.64 繰上
三菱UFJ国際 国際オルタナティブ戦略円ヘッジ成長型 2012.4.10 332 10,319.86 0.00 10,319.86 満期
三菱UFJ国際 国際オルタナティブ戦略円ヘッジ分配型 2012.4.10 180 8,744.96 1,800.00 10,544.96 満期
三菱UFJ国際 国際オルタナティブ戦略円ヘッジなし成長型 2012.4.10 502 17,662.69 0.00 17,662.69 満期
三菱UFJ国際 国際オルタナティブ戦略円ヘッジなし分配型 2012.4.10 191 9,985.11 6,400.00 16,385.11 満期
三菱UFJ国際 日本株プライムニュートラル・ファンド(ラップ向け) 2005.12.16 1 12,117.54 0.00 12,117.54 繰上
三菱UFJ国際 ワールド・コモディティ・オープン(ラップ向け) 2015.1.30 138 13,813.83 0.00 13,813.83 繰上
三菱UFJ国際 新興国債券インデックスファンド(ラップ向け) 2015.2.25 1 9,591.24 0.00 9,591.24 繰上
三菱UFJ国際 JPX日経400インデックスファンド(ラップ向け) 2015.2.25 1 14,963.53 0.00 14,963.53 繰上
三菱UFJ国際 好配当海外株ファンド(ラップ向け) 2015.3.30 1 16,456.18 0.00 16,456.18 繰上
三菱UFJ国際 マッコーリーヘッジ付グローバル・インフラ債券ファンド(ラップ向け) 2015.4.30 1 9,362.00 0.00 9,362.00 繰上
三菱UFJ国際 好配当日本株ファンド(ラップ向け) 2015.5.29 1 11,636.11 0.00 11,636.11 繰上
三菱UFJ国際 先進国高格付国債ファンド(ラップ向け) 2015.5.29 1 9,344.82 0.00 9,344.82 繰上
三菱UFJ国際 マッコーリー グローバル・インフラ株式ファンド(ラップ向け) 2016.4.13 19 18,864.56 0.00 18,864.56 繰上
三菱UFJ国際 ショートデュレーション円インカムオープン(ラップ向け) 2017.7.24 3 9,818.98 0.00 9,818.98 繰上
三菱UFJ国際 フランス国債7-10年ラダーファンド(為替ヘッジあり)(ラップ向け) 2019.3.1 1 8,942.93 0.00 8,942.93 繰上
SOMPO 好配当グローバルREITプレミアム・ファンド 円ヘッジありコース 2013.1.29 93 2,169.08 7,950.00 10,119.08 満期
SOMPO 好配当グローバルREITプレミアム・ファンド 円ヘッジなしコース 2013.1.29 834 3,388.71 8,810.00 12,198.71 満期
One 新光バンクローン・ファンド・ネオ(円ヘッジ型) 2013.7.12 406 9,672.88 50.00 9,722.88 繰上
One DIAMエマージング債券ファンド 2008.3.28 630 3,277.73 8,265.00 11,542.73 繰上
One 日経225リスクコントロールオープン 2013.9.6 917 16,443.31 0.00 16,443.31 繰上
東京海上 世界ハイブリッド ルーブル 毎月 2013.9.4 110 6,400.69 7,070.00 13,470.69 繰上
三井住友DS 日本株主還元株ファンド・ヘッジ型 2018.11.8 133 10,279.64 0.00 10,279.64 繰上
マニュライフ US株主還元ファンド(年1回決算型) 2016.4.15 525 20,592.58 0.00 20,592.58 繰上
マニュライフト US株主還元ファンド(年4回決算型) 2016.4.15 331 11,295.14 6,270.00 17,565.14 繰上
マニュライフ US株主還元ファンド(為替ヘッジあり・年1回決算型) 2017.1.13 17 14,064.21 0.00 14,064.21 繰上
マニュライフ US株主還元ファンド(為替ヘッジあり・年4回決算型) 2017.1.13 37 10,210.08 3,390.00 13,600.08 繰上

 

(データ等出所:投資信託協会、EDINET、各ファンドの有価証券届出書・臨時報告書)