2023年2月に償還した投資信託―22本中9本が運用期間途中での繰上償還


2月は22本の追加型株式投資信託が償還、このうち9本が繰上償還

投資信託協会によると、2023年2月に22本の追加型の株式投資信託が償還を迎えました。償還とは投資信託が運用を終了することをいいます。

この22本のうち満期償還(定時償還)は13本だけで、残りの9本は、ファンドが設定された時点で定められていた信託期間(運用期間)を満了せずに、運用の途中で信託期間を繰り上げて償還されたものでした。

投資信託の償還

繰上償還の理由

2023年2月に繰上償還されたファンド9本の繰上償還の理由を見てみましょう。

8本については、純資産総額が減少し、信託約款の繰上償還条項に定める金額を下回り、効率的な運用を行うことが困難な状況が続いていることが理由でした。依然として、残高の減少が繰上償還の理由として最も多い状況です。

残りの1本となるアセットマネジメントOneの「DIAM新興国株式インカムプラスファンド(ファンドラップ)」は、受益者より解約の意向を受けた結果、残存受益権口数がゼロになったための繰上償還でした。

なお、「スパークス・日本株・L&S」、「アムンディ・USインカム・エクイティ・ファンド(毎月決算型)」、「アムンディ・USインカム・エクイティ・ファンド(年2回決算型)」については、設定当初の信託期間を運用途中で2023年2月まで延長した上での満期償還でした。繰上償還がある一方で、運用状況から償還期間を延長した方が受益者にとって有利と運用会社が判断した場合には、運用会社は信託期間を延長することがあります。

 

繰上償還の影響

投資家にとって投資信託の繰上償還は投資リスクの一つです。

保有している投資信託が繰上償還になった場合、その時点で評価損失があれば、償還時点で投資家の損失は確定されることになります。基準価額が回復することを期待して保有していた投資家も損失を確定し、現金化せざるをえません。一方、償還時に利益が出ていた場合は、利益を確定して通常は税金を支払うことになります。

これにより、投資家は運用計画を見直さざるをえなくなります。時間をかけて選んだ投資信託が、想定していた運用期間途中で運用終了されてしまうため、老後や子供の教育資金を目的とした資金計画をやり直す必要が生じてしまうわけです。

多くのファンドが繰上償還される現状を鑑みると、ファンドの選択には十分な注意が必要です。

この繰上償還リスクを回避するためには、投資信託を購入する前に、次の点を確認することがとても大切です。

  • 運用残高(純資産総額)が十分大きいこと
  • 運用残高が減少傾向にないこと

 

なお、投資信託協会のデータによると、ETFを除いた追加型株式投資信託の1本当たりの平均残高は約150億円です(2022年12月末現在)。一方で、純資産総額(残高)が500億円を超える投資信託は343本(2022年12月末現在)運用されています。少なくとも残高が平均以上あり、その残高が増加傾向にある投資信託を選択した方がよいでしょう。

 

 

1口当たり償還額

2023年2月に償還した投資信託の1口当り償還額(A)を見ると、22本中11本は設定時の基準価額である10,000円を下回る金額で償還しました。

1口当り償還額が最も低かったのは、三井住友DSアセットマネジメント株式会社の「メキシコ債券ファンド(毎月分配型)」で1口当り償還額は6,162.64円でした。同ファンドは、2013年3月に設定され、2023年2月に満期償還されました。

一方で、1口当り償還額が最も高かったのは、スパークス・アセット・マネジメント株式会社の「スパークス・日本株・L&S」で、1口当り償還額は27,057.54円でした。同ファンドは、2003年2月に設定され、2023年2月に満期償還を迎えました。

 

 

1口当たり償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額

1口当り償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額(トータル・リターン)で見ると、この合計額(A+B)が10,000円を下回ったファンドが3本ありました。

1口当り償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額が最も低かったのは、アセットマネジメントOne株式会社の「USストラテジック・インカム・ファンド(年1回決算型)為替ヘッジあり」で、合計額は9,221.6円(1口当り償還額9,221.6円+分配金0円)でした。

一方、この合計額が最も高かったのは、スパークス・アセット・マネジメント株式会社の「スパークス・日本株・L&S」で、合計額は28,857.54円(1口当り償還額27,057.54円+分配金1,800円)でした。

 

 

2023年2月に償還した追加型株式投資信託の一覧

運用会社 ファンド名 設定日 償還時純資産
総額
1口当り
償還額
(A)
期中
分配金
(B)
合計
(A) + (B)
満期/繰上
大和 ダイワ・ライジング・タイランド株式ファンド 2013.2.28 1,169 9,974.41 2,640.00 12,614.41 満期
明治安田 ストラテジック・リート・ファンド‐予想分配金提示型‐Aコース(為替ヘッジあり) 2013.2.1 238 8,040.89 4,040.00 12,080.89 満期
明治安田 ストラテジック・リート・ファンド‐予想分配金提示型‐Bコース(為替ヘッジなし) 2013.2.1 782 9,940.75 7,350.00 17,290.75 満期
JPモルガン JPM日本CBファンド 2017.1.13 514 9,080.26 350.00 9,430.26 繰上
JPモルガン JPM日本CBファンド(米ドル投資型) 2017.1.13 69 9,729.26 2,000.00 11,729.26 繰上
三菱UFJ 新興国通貨建て世界銀行債券オープン 2016.11.16 445 7,282.94 3,600.00 10,882.94 繰上
三菱UFJ 次世代モビリティ社会創生株ファンド 2018.3.16 338 9,387.77 5,200.00 14,587.77 満期
三菱UFJ 国際インド債券オープン(年1回決算型) 2017.12.22 17 11,344.33 20.00 11,364.33 繰上
SOMPO SOMPO日本株バリュー・プラスファンド 2016.10.25 17 16,864.40 0.00 16,864.40 繰上
SOMPO SOMPO外国株式アクティブバリューファンド(リスク抑制型) 2016.10.25 11 19,282.99 0.00 19,282.99 繰上
SOMPO SOMPO Jリートファンド 2016.10.25 19 13,153.89 0.00 13,153.89 繰上
One DIAMグローバル・アクティブ・バランスファンド 2007.5.23 1,518 8,533.53 3,480.00 12,013.53 繰上
One USストラテジック・インカム・ファンド(年1回決算型)為替ヘッジあり 2013.12.20 156 9,221.60 0.00 9,221.60 満期
One USストラテジック・インカム・ファンド(年1回決算型)為替ヘッジなし 2013.12.20 911 13,695.65 0.00 13,695.65 満期
One DIAM新興国株式インカムプラスファンド(ファンドラップ) 2015.10.26 81 12,450.08 0.00 12,450.08 繰上
HSBC HSBC メキシコ株式オープン 2013.2.28 638 13,309.39 120.00 13,429.39 満期
アムンディ アムンディ・USインカム・エクイティ・ファンド(毎月決算型) 2015.3.20 1,175 10,554.75 2,300.00 12,854.75 満期
アムンディ アムンディ・USインカム・エクイティ・ファンド(年2回決算型) 2015.3.20 562 13,909.49 0.00 13,909.49 満期
三井住友DS メキシコ債券ファンド(毎月分配型 2013.3.8 660 6,162.64 4,365.00 10,527.64 満期
三井住友DS メキシコ債券ファンド(資産成長型) 2013.3.8 401 11,879.77 0.00 11,879.77 満期
スパークス スパークス・日本株・L&S 2003.2.14 505 27,057.54 1,800.00 28,857.54 満期
新生 ワールドコーポレート・ハイブリッド証券ファンド1712(限定追加型) 2017.12.14 1,442 9,664.47 110.00 9,774.47 満期

(データ等出所:投資信託協会、EDINET、各ファンドの有価証券届出書・臨時報告書)