ラッセル・インベストメント、「2012 年ラッセル オルタナティブ投資状況調査」を発表


ラッセル・インベストメントは、7月4日、同社が企業基金や公的基金、非営利団体などの機関投資家を対象に2012年1月~3月にかけてグローバルに実施した「2012年 ラッセル オルタナティブ投資状況調査」の結果を発表した。同調査では、北米、欧州、アジア太平洋、日本などの144の組織(回答者数は146)からオルタナティブ投資状況について回答を得た。これらの機関投資家の運用資産総額の合計は、1.1兆米ドルに及ぶ。

回答者の9割超がオルタナティブ投資を実施しており、同戦略への資産配分は平均で22%に上った。回答者の9割が“分散効果”をオルタナティブ投資の理由の上位3位内に挙げ、約6割が“ボラティリティの軽減や伝統的資産への低相関性”を、約5割が“リターンの創出”を挙げた。

回答者の半数以上は、調査対象となった全てのオルタナティブ投資戦略で資産配分を“現状維持”もしくは、“今後1~3年で拡大する”と回答している。資産配分の増加幅が最も大きかった戦略は、ヘッジファンドと私募不動産で(ともに回答者の32%が増加)、非上場インフラ(28%)、プライベート・エクイティ(25%)、コモディティ(20%)が続いた。上場不動産と上場インフラの配分を増加するとした回答者は、ともに12%に留まり、約8割は現状を維持すると回答している。

日本の回答者の多くは、今後資産の拡大が最も見込まれる戦略にヘッジファンドを挙げ、逆に資産の縮小幅が大きいのは私募不動産と回答している。日本では、インフレ懸念が少ないことなどから、コモディティやインフラへの関心は低くなった。グローバル同様、日本でもオルタナティブ投資に期待する役割は、分散効果とボラティリティの軽減だったが、これは日本では株式エクスポージャーの削減によるリスク低減の動きと表裏になっている面がある。

また、人口の高齢化に伴う給付増加により、日本の確定給付型年金では総じてキャッシュ・フロー管理が重要性を増しており、流動性を重視する傾向がオルタナティブ投資の資産選択にも影響を与えている。なお、AIJ投資顧問の事件は回答の多くが提出された後に発覚したため調査結果に大きな影響は及ぼしていないが、事件後に運用会社の組織体制などを調査するオペレーショナル・デューデリジェンスへの注目が急速に高まったことが、その後の投資家へのヒアリングなどから確認されている。

オルタナティブ インベストメント コンサルティング ディレクター、眞保 二朗氏は、「本調査でグローバルに確認された傾向の一つにオルタナティブ投資のカスタマイズ化が挙げられます。オルタナティブ投資への配分が拡大するにつれ、各々のニーズに合致したカスタマイズ・ソリューションを検討する投資家が増えてきています。この流れに伴い、報酬体系や投資制約などについても投資家がよりフレキシブルな運営をすることが可能になっていくと思われます。また、現在国内でアクセス可能なオルタナティブ投資のユニバースは、海外対比ではまだ小さいものですが、今後これらの動きに伴って日本の投資家がより広いグローバルなユニバースにアクセスできるようになることも期待されます」と述べている。

【ラッセル オルタナティブ投資状況調査について】

ラッセルは1992年に、北米、欧州、日本および豪州の機関投資家を対象に、主要なオルタナティブ投資の利用状況や今後の投資行動などについての調査を開始した。第10版の本調査報告書は、2012年1月~3月にかけて、米国、カナダ、英国、欧州、豪州/ニュージーランド、日本を含むアジアの企業年金、公的年金、非営利団体などの機関投資家を対象にヘッジファンド、私募不動産、非上場インフラ、プライベート・エクイティ、コモディティ、上場不動産、上場インフラ、その他(森林、代替エネルギーなど)のオルタナティブ投資の現在の資産配分および今後1~3年の資産配分の見通しや、オルタナティブ投資を採用する原動力となる要因、意思決定を行う上での影響要因、投資をする際の障壁、投資形態などについて、オンライン調査および個別インタビューを通して144の組織(回答者数は146)から得た回答をまとめたもの。ここに掲載されている以前の調査からの情報は、その時点での回答者の見解。

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