WWF、日本・韓国およびASEANの銀行のESGへの取り組みに関する調査を実施


WWF(世界自然保護基金)は、2020年の「サステイナブル・バンキング・アセスメント(SUSBA)」の調査レポートを2020年12月1日に発表した。今回で4回目となる調査では、38のASEANの銀行に加え、日本および韓国のそれぞれ5つの銀行を調査対象に加え、ESGの取り組みを6つの観点(目的、ポリシー、プロセス、人的資源、プロダクト、ポートフォリオ)そしてセクターや課題を深堀して評価を行った。この調査の結果、金融業務においてESGの観点を考慮することに関しては進捗がみられるものの、銀行のポートフォリオが気候変動や自然破壊から生じるリスクに対して脆弱であることが明らかとなった。

2020年のSUSBA調査の概要は以下の通り。

ASEANの銀行では、昨年と比べ、75%を超える銀行で改善がみられ、また、3割に近い銀行において1割以上の項目において改善が見られた。他方、70個の調査項目のうち、半分以上の項目を達成したASEANの銀行の数は4つから8つに倍増したものの、銀行の全体数から見ると少数にとどまっている。調査項目のうち、4分の1未満しか達成できなかったASEANの銀行の割合は、前回調査では51%だったのに対して、今回の調査では45%に減少した。

日本の銀行は、ESGの取り組みにおいてASEANおよび韓国の銀行の平均よりも高いスコアを得ており、気候関連の項目においても高い評価を得る傾向にある。WWFによると、これは、すべての銀行が、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の定めている気候変動に関連する項目(ガバナンス、戦略、リスク管理や指標と目標)に沿って開示する必要があるため。また、今回調査対象となった日本の主要銀行すべてが「プロダクト」の項目で75%以上の達成度を記録した。これらの銀行は、グリーン・ファイナンス関連の金融商品の販売や投資を拡大するだけではなく、銀行の顧客に対して積極的にグリーン・ファイナンスに関するコンサルティングや周知といった活動を展開している。

韓国の銀行は、ASEANの銀行の平均と同様のスコアを得ており、ASEANの銀行と同様に、経営方針や長期的戦略においてサステナビリティをいかに考慮しているかを十分に開示しているという点で高い評価を得ている。他方で、金融業務におけるESGに関するリスクヘッジのポリシーおよびプロセスの開示は不十分だとの評価となっている。

WWFのアジア・サステイナブル・ファイナンスのシニア・ヴァイス・プレジデントであるキース・リー氏は、次のように述べている。

今回の調査では、ASEANの銀行に加え、日本および韓国の主要銀行も調査対象に加えました。日本および韓国の主要銀行は、自国のみならず、東南アジアにおける金融ビジネスにおいても重要な役割を果たしているためです。アジア経済は各国が相互に依存する関係にあることから、銀行が持続可能な開発目標に貢献するためには、銀行同士が協力する必要があります。今回のSUSBAの調査に日本および韓国の銀行を対象に加えたことにより、今後協力関係が促進されることを期待しています。

調査においては、ASEAN・日本・韓国の銀行に関して、主に以下のような結果が明らかとなった。

  • 調査対象となった日本の銀行すべておよび韓国の銀行の約6割は、気候変動関連リスクに対する方針を打ち出しており、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に賛同している。ASEANの銀行は、24%が気候変動に対する方針を打ち出しているが、これは昨年比4倍に上る。ASEANの銀行は後れをとっているものの、改善の傾向にあることを示している。
  • ASEANの銀行の34%が森林破壊や生物多様性リスクを認識しているものの、昨年に比べるとわずか3%の増加にとどまっている。また、日本の銀行すべてが森林破壊のリスクを認識しているが、森林破壊の根絶のための取り組みを行った銀行は1つもなかった。
  • 水質汚染以外の水リスクを認識しているのは、ASEANの銀行の約2割と韓国の銀行の2割にとどまっている。日本の銀行の1行と複数のASEANの銀行は、水質汚染をリスクとして認識しているが、水不足や洪水のリスクを見落としている。また、顧客に対して水質調査や水質管理を義務付けている銀行もなかった。しかしながら、水に関するリスクは企業にとって重大な影響を及ぼす可能性があり、予想最大損失額は、世界全体で最大4,250億米ドルに上ると考えられている。
  • セクターおよび課題に関する分析では、日本と韓国の銀行が石炭関連への投資を削減する措置を講じていることが分かった。新韓銀行と日本の銀行すべては、一部の技術や炭素回収を除いて、石炭火力発電所の新設事業への融資を停止している。みずほフィナンシャルグループ三菱UFJフィナンシャル・グループおよび三井住友フィナンシャルグループは、それぞれ石炭火力発電所の新規事業への融資停止のタイムラインを発表している。しかし、ASEANの銀行の約9割は引き続き新規の石炭火力発電所事業に融資をしており、DBS銀行、OCBC銀行およびUOB銀行の3行のみが、ASEANの銀行で新規の石炭火力発電所事業への融資を停止している銀行である。CIMB銀行は、2020年末までに石炭政策を発表する意向を示している。石炭への継続的な投資によって銀行は、炭素税や技術の陳腐化をはじめ、気候変動関連のリスクにさらされることになる。
  • ASEANの銀行のうち53%は現在、サステナブル・ファイナンスに関して規制当局と連携しており、昨年の31%に比べて大幅に増加している。

 

今回の調査対象のうち、日本の銀行4行および韓国の銀行2行を含む35%の銀行が、持続可能なプロジェクトや事業への投資を増やすための数値目標を設定している。このように、金融事業において、数値目標を設定し、目標を達成することは重要だと考えられている。しかし、投資家が社会的課題に向けた取り組みを重視し、ESGリスクを重要視するようになっている中で、銀行は、脱炭素化するための科学的と整合した目標を設定するなど、具体的な戦略の策定が必要となっている。今回の調査対象となったアジアの48の銀行のうち、新韓銀行(新韓金融グループの1つ)は、初めて正式に科学的整合した目標(Science Based Target Initiative(SBTi))を設定した銀行である。

さらにリー氏は次のように述べている。

今年は多くの銀行に改善が見られましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、2021年も引き続き改善を継続できるかが課題となります。銀行は、ビジネスがパンデミックから企業が回復することを支援するだけではなく、環境および自然破壊の危機への対応を先導するという非常に重要な役割を果たす必要があります。現代社会は、これまで以上に環境に関するリスクに直面することになりますが、正しい対応策を講じることができれば、より力強く回復できるはずです。