インデックスファンドの選び方


インデックスファンドから始めてみよう

では、インデックスファンドを実際に選ぶ際には、どのような点に注意すべきでしょうか。

①投資対象を知る

まずは、どの「資産クラス」(株式、債券、不動産、商品など)、どの「地域」(日本、米国、欧州、アジアなど)に投資をするのかを理解して、投資信託を選ぶことが不可欠です。

インデックスファンドは、株式や債券など特定の「指数(指標・インデックス)」に連動する投資成果を得ることを目指す投資信託ですが、まずは、自分がどのような指数に連動する投資信託に投資しようとするのかは、最低限、理解しておくべきです。

このほかにも、指標の詳しい計算方法(単純平均なのか、加重平均なのか)や、株式であれば、業種、組み入れ銘柄の選定方法、浮動株を考慮するか否か。債券であれば、対象とする発行体(国なのか、企業なのか)、満期までの年限(短期なのか、長期なのか)など知っておいたほうがよい情報は他にもありますが、上記の「資産クラス」と「地域」は、必須の情報といってよいでしょう。

 

②コストの安い商品を選ぶ

インデックスファンドは、ある市場の平均的な収益を得ようとするファンドです。したがって、全体から突出して高い収益を狙う商品ではないだけに、コストを厳しく見る必要があります。

まずチェックすべき費用は、「販売手数料」(=購入時にかかる手数料)、と「信託報酬」(=運用費用として、毎年一定の率でかかる手数料)です。

この2つについては、投資信託の目論見書(説明書のような書類)で、必ず明記されているので、しっかりと確認をするようにしましょう。特に、運用の費用として差し引かれる「信託報酬」は、運用を続ける限り継続的に発生する費用なので、長期での投資にあたっては、大きな影響を持ちます。

単純な計算で考えれば、10年投資をする場合、販売手数料の1%の差と信託報酬の0.1%(0.1%×10年=1%)の差は同じ重みをもつといえます。

なお、販売手数料は、同じファンドであっても、販売会社により異なることがあります。また、最近はノーロードと呼ばれる、販売手数料がかからないファンドもあります。例えば、オンライン証券のカブドットコム証券では、1,000本を超える取り扱いファンド(2017年2月末現在)のうち、約半数のファンドについて販売手数料がかかりません。販売会社を選ぶ際には、投資信託のラインナップだけでなく、ノーロードのファンドの有無などもチェックしましょう。

この他に、取引費用、監査費用といったファンド運営に関わる費用はありますが、これらは、必ずしも一律に費用が明示されているわけではないため、単純な比較は困難なのが現状です。

ただし、これらの費用を明示しているファンドについては、情報公開に関して、積極的な会社が運営するファンドであるという意味では、プラス評価ができるでしょう。

また、「信託財産留保額」という解約時に差し引かれる費用があるファンドもあります。但し、こちらは、この差し引いた金額を運用会社が徴収するのではなく、ファンドの信託財産として残った投資家の持分の一部になるため、単純に徴収される手数料とはやや異なります。つまり、解約時には、「払う」ものの、自分が保有している間の解約者からは、「もらう」部分もあるので、100%「コスト」とは言えないのです。

その意味で、「信託財産留保額」については、長期での投資を考える場合、販売手数料や信託報酬のように安さに固執する必要はないということができるでしょう。

 

③規模の小さなファンドは避ける

インデックスファンドは、指数に連動した運用成果を目指すファンドです。

したがって、あまり規模が小さく、指数の構成比率の通りに投資できないような小さなファンドは、投資に不適格です。(例えば、1000銘柄で構成される株価指数に連動するファンドの信託財産が、700銘柄を最低単位購入することしかできない程度の少ない金額で運営された場合、指数に連動する運用は、なかなか期待できません。同様に規模が小さい場合には、銘柄の組み入れ比率を指数にあわせて、細かく修正することも難しくなるため、どうしても運用成績が目標とする指数の成績と乖離しやすくなります。)

また、あまり規模が小さいファンドは、運営に関する費用を十分に賄うことが難しいため、運用の中止(繰上げ償還)などが起こる可能性も高く、その点でも、規模の小さなファンドは、できるだけ避けるべきです。

 

④運用実績(トラックレコード)の無い・短いファンドは避ける

特定のインデックスに連動した運用を目指すという方針は、どのインデックスファンドにも共通する特徴です。したがって、前もって「運用方針」の差で、インデックスファンドの良し悪しを判断することは困難です。

そこで、ファンドへの評価としては、そのような方針に、どれだけ忠実に運用できているか(どの程度のトラッキングエラー(指数と成績の乖離)があるかの実績を見ることになります。したがって、運用の実績がない、非常に短いファンドについては、そもそも、その評価をすることができません。

特に、インデックスファンドは、ファンドマネージャーがより高い投資収益を目指して運用を行なうアクティブファンドとは異なり、運用目標の設定や資産の管理を数理的に行なうことが可能であるため、実績による評価が、ある程度有効な種類のファンドであるといえます。

そのため、もし、他の要因が同程度であるならば、できるだけそれまでの運用実績で、指数に連動した運用を実現しているファンドを選ぶほうがよいでしょう。

 

⑤利便性を考える

①~④の基準で、投資をしたいと思う投資信託を選んだとして、その商品に実際に投資する時に、自分にとってどれだけ便利であるかということも大事なポイントです。

たとえば、自分が既に口座を持っている金融機関で購入できる投資信託を買う手間と、口座を開いたことがなく、新たに自分で出向いて手続きをしなければいけない金融機関で、投資信託を買う手間では、後者のほうが明らかに大変です。

したがって、良い商品を選ぶと同時に、自分にとって使い勝手のよい金融機関で、その商品が取り扱われているかをみる必要があります。もし、新たに別の金融機関に口座を開く必要があるのであれば、それに掛かる手間、そして、管理する対象の口座が増えることの負荷を今一度検討してみるべきでしょう。

また、複数の商品に分散投資をする場合に、1つ1つの商品を買うために、それぞれ別の金融機関で口座を開くというのは、面倒なことです。(たとえば、あるファンドを売却して、別のファンドを買いたい時に、別の金融機関への口座開設手続や送金をしなくてはならないというのは、たとえ金銭的な負担が直接にはないとしても、時間的には、「コストが高い」です。)

したがって、もし、これから新しく金融機関で口座を開く場合には、幅広い分野で、①~④の条件似合うようなファンドを揃えているかを金融機関選びのポイントの一つにすることも、ファンド選びと同様に大事であるといえるでしょう。

 

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