ファンダメンタル・インデックスとは?


ファンダメンタル・インデックスとは?

一般的な株価指数債券指数は、時価総額によって加重平均されています。東京証券取引所が算出・公表している東証株価指数TOPIX)や米国を代表する株価指数のS&P500総合株価がその例です。

一方で、ファンダメンタル・インデックスとは、指数の構成銘柄の組入比率を時価総額で加重平均して決めるのでなく、企業の売上高、キャッシュフロー、利益、配当など、金融業界において「ファンダメンタル指標」と呼ばれる指標を組み合わせて構成比率を決める指数のことです。

 

ファンダメンタル・インデックスをめぐる議論

ファンダメンタル・インデックスの開発会社やそれを採用する運用会社が、ファンダメンタル・インデックスの方が時価総額加重平均の指数よりも優れており、時価総額加重平均の指数を上回るパフォーマンスを達成できると主張する一方で、従来の時価総額加重平均の指数の方がコストが低く、投資家にとって適していると主張するエコノミストや運用会社もおり、投資業界では、両者についてさまざまな議論が見られています。

 

ジェレミー・シーゲル博士

例えば、配当牽引型のファンダメンタル・モデルの提唱者と言われるジェレミー・シーゲル博士(ペンシルベニア大学大学院教授、ウィズダム・ツリー・インベストメンツの上級投資戦略アドバイザー)は、ファンダメンタル加重平均ポートフォリオのメリットは、「配当や利益など企業価値を表す指標の上昇を伴わない株価の急騰、すなわちバブルを避けることにある」と言っています。また、「ファンダメンタル加重平均で指数化されたポートフォリオの開発は、時価総額加重平均指数の欠点に対する解決策を提供するかもしれない。これは、株価が効率的市場仮説よりもノイズのある市場仮説に基づいて行動する場合に、特にそうなるだろう。間違った銘柄を延々と探し求める投資家が存在するなら、実際に市場に勝つことは可能かもしれない」と、その著書「株式投資」の中で述べています。

配当加重平均指数とは

一方で時価総額加重平均の指数の方が優れているという主張については、インデックス運用のカリスマ的存在であるジョン・ボーグルの著書「マネーと常識」の中で次のように紹介されています。

ジョン・ボーグル(バンガード・インベストメンツ創設者)

ファンダメンタル・インデックス運用は、―私がみてきたほかの新しいパラダイムとは異なり―機能するかもしれないし、機能しないかもしれない。しかし、標準的なインデックスファンドを大きく上回る冨の蓄積を約束するパラダイムの甘言に惑わされてはいけない。19世紀はじめの軍事評論家でありプロイセンの将軍であったカール・ヴァン・クラウゼヴィッツの警告「よい計画の最大の的は、完璧な計画という夢である」を忘れてはいけない。夢を退け、常識を引き寄せ、標準的なインデックスファンドが示す、よい計画を貫くべきである。

ウィリアム・シャープ(ノーベル経済学賞受賞者)

「時価総額ではない方法で株式市場を加重したスキームが時価総額加重インデックスを打ち負かすと考える人がいるというのは驚くべきことである・・・新しいパラダイムは現れては消える。市場が負けることに賭けること(そして大きな金額をそのために支出すること)は、きわめて重い負担となるであろう」

 

ファンダメンタル・インデックスをベンチマークとする投資信託

米国では、ファンダメンタル・インデックスへの連動を目指すETFが多く上場しています。日本においては、東京証券取引所に上場していて野村アセットマネジメントが運用するETF「NEXT FUNDS R/Nファンダメンタル・インデックス上場投信」(1598)は、ファンダメンタル・インデックスである「Russell/Nomura ファンダメンタル・プライム・インデックス(配当除く)」への連動を目指すETFです。

「Russell/Nomura ファンダメンタル・プライム・インデックス(配当除く)」は、日本国内の取引所に上場している全銘柄のうち浮動株調整時価総額上位98%から構成される、Russell/Nomura Total Marketインデッ クスの構成銘柄をユニバースとし、各構成銘柄のファンダメンタル指標(調整済み売上高、調整済み営業キャッシュフロー、調整済み配当金)を用いて計算される指数ウエイトに基づいて算出される「Russell/Nomura ファンダメンタ ル・インデックス」の構成銘柄から、流動性が著しく低い銘柄や指数ウエイトが極端に低い銘柄を除外して算出されるファンダメンタル・インデックスです。

ETFを除くと、ファンダメンタル・インデックスを利用したファンドの一つが大和証券投資信託委託が運用する「ダイワ・インデックスセレクト新興国株式」です。同ファンドは、新興国の株式に投資するインデックスファンドですが、ベンチマークである「FTSE RAFIエマージングインデックス」はファンダメンタル・インデックスで、株式資本、キャッシュフロー、売上、配当といった4つのファンダメンタル指標に着目して、銘柄の選定と構成比率の決定を行なっています。

なお、FTSE RAFIエマージングインデックスをFTSE社と共同で算出・公表しているRA社(リサーチ・アフィリエイツResearch Affiliates)は、ファンダメンタル指数の算出を含めたスマート・ベータ指数や戦略の開発、それらを用いた運用において世界的に有名な会社です。同社のロバート・アーノット氏とジェイソン・スー氏は、2005年にファンダメンタル指数と題する論文を発表しています。