2021年5月に償還した投資信託―15本中2本が運用期間途中での繰上償還


5月は15本の追加型株式投資信託が償還、このうち2本が繰上償還

投資信託協会によると、2021年5月に15本の追加型の株式投資信託が償還を迎えました。

このうち2本のファンドは、設定された時点で定められていた信託期間(運用期間)を満了せずに信託期間を繰り上げて償還されたものでした。13本は満期償還ですが、このうち5本については、ファンドが設定された時点では信託期間は無期限とされていたものの、運用途中で信託期間を2021年5月までに短縮したファンドでした。

償還ファンドの内訳

繰上償還の理由

2021年5月に繰上償還されたファンド2本は、残高の減少により当初定めた運用方針に則った運用を継続することが困難になったことを理由に償還されたものです。投資信託は、10億口や20億口など一定の受益権口数を下回った場合に、繰上償還ができると約款で定められており、それを根拠に繰上償還が実施されたわけです。

 

繰上償還の影響

投資信託の繰上償還は、投資家にとっては投資リスクの一つです。

繰上償還時に、保有している投資信託に評価損失が生じていた場合、償還時点で投資家の損失は確定されることになります。基準価額が回復することを期待して保有していた投資家も損失を確定し、現金化せざるを得なくなります。一方、償還時に利益が出ていた場合は、利益を確定して通常は税金を支払うことになります。

さらに、繰上償還が投資家にとって大きな問題となるのは、資産計画を見直さざるをえなくなるということです。時間をかけて選んだ投資信託が、想定していた運用期間途中で運用終了されてしまうため、老後や子供の教育資金を目的とした資金計画をやり直す必要が生じてしまいます。

この繰上償還リスクを回避するためには、投資信託を購入する前に、次の点を確認することが大切です。

  • 運用残高(純資産総額)が十分大きいこと
  • 運用残高が減少傾向にないこと

なお、投資信託協会のデータによると、ETFを除いた追加型株式投資信託の1本当たりの平均残高は約129億円です(2021年1月末現在)。一方で、純資産総額(残高)が500億円を超える投資信託は296本(2021年1月末現在)存在しています。少なくとも残高が平均以上あり、その残高が増加傾向にある投資信託を選択すべきです。

 

1口当たり償還額

2021年5月に償還した15本の投資信託の1口当り償還額(A)を見ると、設定時の基準価額である10,000円を上回る金額で償還したのは9本だけでした。

1口当り償還額が最も高かったのは、東京海上アセットマネジメント株式会社の「LPS4資産分散ファンド(積極型)」で、1口当り償還額は23,342.41円でした。同ファンドは、2009年9月に信託期間無期限のファンドとして設定されましたが、2016年4月に信託期間を無期限から2021年5月28日までに変更した上で、償還を迎えました。

一方で、1口当り償還額が最も低かったのは、アセットマネジメントOne株式会社の「DIAM グローバル・ハイイールド・ボンド・ファンド・通貨選択シリーズ ブラジルレアルコース」で、1口当り償還額は1,738.25円でした。

 

1口当たり償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額

1口当り償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額(トータル・リターン)で見ると、この合計額(A+B)が10,000円を下回ったファンドが2本ありました。つまり、これら2本のファンドを設定時に購入し、償還まで保有した人のトータル・リターンはマイナス(損失)(だったことになります。

1口当り償還額と期中分配金の合計額が最も高かったのは、岡三アセットマネジメントの「米国中小型株オープン」で、合計額は27,161.22円(1口当り償還額19,561.22円+分配金7,600円)でした。

一方、1口当たり償還額と期中分配金の合計額が最も低かったのは、SOMPOアセットマネジメント株式会社の「損保ジャパン・コモディティ ファンド」で、合計額は4,295.05円(1口当たり償還額2,295.05円+分配金2,000円)でした。

 

運用期間

2021年5月に償還した投資信託の運用期間を見ると、運用期間が最も長かったのは、2007年8月に設定された「損保ジャパン・コモディティ ファンド」でした。

一方、運用期間が最も短かったのは、2017年5月に設定された「米国中小型株オープン(3ヵ月決算型)」でした。

投資信託の信託期間は5年、10年というものから無期限のものまであります。老後資金の確保のように長い期間をかけた資産形成を目的としている場合は、より長期での運用が可能な信託期間が「無期限」とされているものを選択する方が良いでしょう。実際に、確定拠出年金向けの投資信託の信託期間は全て無期限となっていますし、つみたてNISAの対象ファンドは無期限または20年以上とされています。

 

【2021年5月に償還した追加型株式投資信託】

運用会社 ファンド名 償還日 償還時純資産総額(百万円) 償還時1口当たり償還額(A) 期中分配金(円)(B) 合計(A)+(B)(円) 満期・繰上
大和 世界レアメタル関連株ファンド 28日 406 6,490.05 0.00 6,490.05 満期
岡三 米国中小型株オープン 17日 1,508 19,561.22 7,600.00 27,161.22 満期
岡三 米国中小型株オープン(3ヵ月決算型) 17日 1,892 10,344.28 4,200.00 14,544.28 満期
ニッセイ 明日の日本(ジャパンエクイティファンド) 20日 268 10,969.91 8,500.00 19,469.91 満期
SOMPO 損保ジャパン・コモディティ ファンド 24日 383 2,295.05 2,000.00 4,295.05 満期
AM One DIAM グローバル・ハイイールド・ボンド・ファンド・通貨選択シリーズ 資源国通貨バスケットコース 19日 453 2,953.51 11,430.00 14,383.51 満期
AM One DIAM グローバル・ハイイールド・ボンド・ファンド・通貨選択シリーズ ブラジルレアルコース 19日 345 1,738.25 10,965.00 12,703.25 満期
AM One DIAM グローバル・ハイイールド・ボンド・ファンド・通貨選択シリーズ 円コース 19日 496 7,293.04 5,940.00 13,233.04 満期
東京海上 LPS4資産分散ファンド(慎重型) 28日 86 13,817.67 0.00 13,817.67 満期
東京海上 LPS4資産分散ファンド(安定重視型) 28日 71 15,887.38 0.00 15,887.38 満期
東京海上 LPS4資産分散ファンド(バランス型) 28日 198 18,361.52 0.00 18,361.52 満期
東京海上 LPS4資産分散ファンド(成長重視型) 28日 208 20,885.14 0.00 20,885.14 満期
東京海上 LPS4資産分散ファンド(積極型) 28日 192 23,342.41 0.00 23,342.41 満期
三井住友DS 米国・地方公共事業債ファンド(為替ヘッジあり) 13日 83 9,292.03 810.00 10,102.03 繰上
三井住友DS 米国・地方公共事業債ファンド(為替ヘッジなし) 13日 49 10,388.30 810.00 11,198.30 繰上

(データ等出所:投資信託協会、EDINET、各ファンドの有価証券届出書・臨時報告書)