2022年5月に償還した投資信託―11本中6本が運用期間途中での繰上償還


5月は11本の追加型株式投資信託が償還、このうち6本が繰上償還

投資信託協会によると、2022年5月に11本の追加型の株式投資信託が償還を迎えました。償還とは投資信託が運用を終了することを言います。

この11本のうち満期償還(定時償還)は5本で、残りの6本のファンドは、設定された時点で定められていた信託期間(運用期間)を満了せずに、運用の途中で信託期間を繰り上げて償還されたものでした。

償還した投資信託の状況

繰上償還の理由

2022年5月に繰上償還されたファンド6本の繰上償還の理由を見ると、5本が、残高の減少により当初定めた運用方針に則った運用を継続することが困難になったためというものでした。残り1本(日本債券インデックス・オープン(SMA専用))は最終受益者より全残存口数に係る解約意向表明を受けたためという理由でした。

投資信託は運用残高(純資産総額)が少なくなると、効率的に分散投資を行うことが困難になるため、各ファンドが約款で繰上償還の条件としている一定の残高(ファンドにより異なる)を下回った状態が継続すると繰上償還される傾向にあります。

 

繰上償還の影響

投資家にとって投資信託の繰上償還は投資リスクの一つです。

保有している投資信託が繰上償還になった場合、その時点で評価損失があれば、償還時点で投資家の損失は確定されることになります。基準価額が回復することを期待して保有していた投資家も損失を確定し、現金化せざるをえません。一方、償還時に利益が出ていた場合は、利益を確定して通常は税金を支払うことになります。

これにより、投資家は運用計画を見直さざるをえなくなります。時間をかけて選んだ投資信託が、想定していた運用期間途中で運用終了されてしまうため、老後や子供の教育資金を目的とした資金計画をやり直す必要が生じてしまいます。

 

多くのファンドが繰上償還される現状を鑑みると、ファンドの選択には十分な注意が必要です。

この繰上償還リスクを回避するためには、投資信託を購入する前に、次の点を確認することが大切です。

 

  • 運用残高(純資産総額)が十分大きいこと
  • 運用残高が減少傾向にないこと

 

なお、投資信託協会のデータによると、ETFを除いた追加型株式投資信託の1本当たりの平均残高は約148億円です(2022年6月末現在)。一方で、純資産総額(残高)が500億円を超える投資信託は342本(2022年5月末現在)運用されています。少なくとも残高が平均以上あり、その残高が増加傾向にある投資信託を選択した方がよいでしょう。

 

 

1口当たり償還額

2022年5月に償還した投資信託の1口当り償還額(A)を見ると、11本中4本は設定時の基準価額である10,000円を下回る金額で償還しました。

1口当り償還額が最も高かったのは、アセットマネジメントOneの「DIAM中国A株ファンド」で、1口当り償還額は20,382.18円でした。同ファンドは、2010年12月に信託期間10年のファンドとして設定され、その後2019年に信託期間を2025年12月までに延長しましたが、結局、残高の減少を理由に2022年5月に繰上償還されました。

 

一方で、1口当り償還額が最も低かったのは、日興アセットマネジメントの「アジア・ハイイールド債券ファンド(為替ヘッジあり)」で、1口当り償還額は3,351.11円でした。同ファンドは、主として、日本を除くアジアのハイイールド社債を主要投資対象とするファンドで、2022年5月に満期償還を迎えました。

 

 

1口当たり償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額

1口当り償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額(トータル・リターン)で見ると、この合計額(A+B)が10,000円を下回ったファンドはありませんでした。

1口当り償還額と期中分配金の合計額が最も高かったのは、大和アセットマネジメントの「ダイワ成長株オープン」で、合計額は24,827.8円(1口当り償還額16,747.8円+分配金8,080円)でした。

合計額が最も低かったのは、三井住友トラスト・アセットマネジメントの「日本債券インデックス・オープン(SMA専用)」で、合計額は11,839.63円(1口当り償還額11,839.63円+分配金0円)でした。

 

運用期間

2022年5月に償還した投資信託の運用期間を見ると、運用期間が最も長かったのは、大和アセットマネジメントが2002年5に設定した「ダイワ成長株オープン」でした。同ファンドは、2022年5月に20年間の運用期間を満了して償還しました。

投資信託の信託期間は5年、10年というものから無期限のものまであります。老後資金の確保のように長い期間をかけた資産形成を目的としている場合は、より長期での運用が可能な信託期間が「無期限」とされているもの、そして、購入時において、償還までの期間が十分に長いものを選択すべきです。実際に、確定拠出年金用の投資信託の信託期間は全て無期限となっていますし、つみたてNISAの対象ファンドの信託期間は無期限または20年以上とされています。

 

2022年5月に償還した投資信託の一覧

運用会社 ファンド名 純資産
総額
1口当り
償還額
(A)
期中
分配金
(B)
合計
(A) + (B)
満期/繰上
日興 アジア・ハイイールド債券ファンド(為替ヘッジなし) 232 5,767.70 12,820.00 18,587.70 満期
日興 アジア・ハイイールド債券ファンド(為替ヘッジあり) 254 3,351.11 9,175.00 12,526.11 満期
日興 RS豪ドル債券ファンド 1,139 6,742.22 6,580.00 13,322.22 満期
大和 ダイワ成長株オープン 1,114 16,747.80 8,080.00 24,827.80 満期
岡三 <中京>アジア・オセアニア債券オープン(環境応援寄附付) 55 5,154.50 5,110.00 10,264.50 繰上
インベスコ
インベスコ 世界株式オープン
2,037 17,308.30 0.00 17,308.30 満期
One 新光アジア・オセアニアREITオープン(毎月決算型) 44 11,797.24 2,760.00 14,557.24 繰上
One 新光アジア・オセアニアREITオープン(成長型) 102 15,442.88 140.00 15,582.88 繰上
One DIAM中国A株ファンド 393 20,382.18 0.00 20,382.18 繰上
One 世界コアインフラ株式ファンド 215 13,935.27 2,200.00 16,135.27 繰上
三井住友トラスト 日本債券インデックス・オープン(SMA専用) 12 11,839.63 0.00 11,839.63 繰上

(データ等出所:投資信託協会、EDINET、各ファンドの有価証券届出書・臨時報告書)