アクティブファンドの運用会社別 信託報酬ランキング


2021年6月23日に、金融庁は「国内運用会社の運用パフォーマンスを示す代表的な指標(KPI)策定と国内公募投信に関する諸論点についての分析」を公表しました。国内運用会社とは、投資信託の運用会社のことです。

 

レポートの中で、運用会社の運用力を示す共通KPIとして各社のシャープレシオと累積リターンが算出・公表されています。具体的には、国内籍の公募投資信託の2020年末時点の平均シャープレシオ(5年間)と累積リターン(5年間)をもって、運用会社をランキングしたものですが、このランキングについては2021年7月の記事「金融庁公表の共通KPIー運用力が最も高かった上位3社はスパークス、アライアンス、レオス・キャピタルワークス」をご覧下さい。

 

また、運用会社の運用力をランキング付けした同様のレポートは2020年8月25日に「国内運用会社の運用パフォーマンスを示す代表的な指標 (KPI)に関する調査」として、そして、2019年7月3日に「資産運用業者の運用パフォーマンスを示す代表的な指標(KPI)に関する調査」として公表されています。

 

今回は、同時に公表された資料「ファンド分類別・運用会社別・信託報酬平均」に注目したいと思います。

 

「ファンド分類別・運用会社別・信託報酬平均」は、運用会社別にファンドの信託報酬の平均値を算出して、それを低い順(投資家の負担の低い順)にランキング形式で示したものです。

 

金融庁から委託を受けてこの調査を実施したQUICK資産運用研究所は、「ファンド分類別・運用会社別・信託報酬平均」の概要について次のように記しています。

  • 信託報酬が下がる低コスト化の傾向が続いている。ただ、平均集計した信託報酬は現在の信託報酬を各年末時点の純資産残高で加重平均した数値であり、各年末時点の信託報酬を過去に遡って平均集計している訳ではない点に留意が必要。
  • その観点からは、本データの全ファンド平均での低コスト化傾向は、低信託報酬を特色とするつみたてNISA対象のインデックスファンドの残高の拡大が大きく影響しているとみられる。
  • 外資系運用会社は総じて信託報酬が高い傾向に変化はない。

 

なお、採用した信託報酬は2020年末時点の実質信託報酬(年率・税込み)で、目論見書記載の上限値(概数の場合あり)です。過去からの信託報酬の引き下げや消費増税前の数値など信託報酬の変動は、平均集計において考慮されていません。

 

金融庁が公表したランキングでは、全ての運用会社の全てのファンドを対象にしているため、アクティブファンドインデックスファンドがランキングの中に混在しています。今回は、この中から各社のアクティブファンドの分だけを取り出し、ランキングを振り直しています。したがって、順位は、金融庁が公表したものとは異なります。

 

ランキングの中の「アクティブ・インデックス」欄のAAはアクティブファンドのみを運用している会社、Aは、アクティブファンドとインデックスファンドを運用している会社のアクティブファンドだけの信託報酬という意味です。

 

なお、アクティブファンドの信託報酬(残高加重平均)は1.47%、単純平均では1.41%です。アクティブ運用の投資信託の購入を検討する際には、この平均値を念頭に置いて自分が購入しようとしているファンドの信託報酬が高いか安いのかを考えてみるとよいでしょう。なお、金融庁が公表したインデックスファンドを含んだランキングはこちらで閲覧できます。

 

アクティブファンドに的を絞った信託報酬の会社別ランキング(低い順)は次のとおりです。

 

アクティブファンドの運用会社別 信託報酬ランキング

順位 運用会社(略称) アクティブ・インデックス 信託報酬(%)残高加重平均 信託報酬(%)単純平均 ファンド数 期末残高合計(億円)
1 SUSTEN AA 0.04 0.06 3 2.32
2 TORANOTEC AA 0.37 0.47 4 24.66
3 農中バリュー AA 0.57 0.61 2 29.95
4 PGIM AA 0.59 0.55 4 107.85
5 SBIボンド AA 0.61 0.70 2 21.51
6 JP AA 0.62 0.52 7 2712.39
7 MFS AA 0.91 0.91 1 18.62
8 ステート・ストリート A 0.92 0.72 5 274.48
9 セゾン AA 0.93 1.07 2 3599.96
10 アストマックス AA 0.95 1.14 9 308.31
11 りそな A 0.96 0.86 27 3568.99
12 GCI AA 0.97 1.16 4 287.04
13 農中全共連 A 0.98 1.09 15 292.99
14 楽天 A 1.02 1.08 37 1056.98
15 しんきん A 1.08 1.15 22 4174.56
16 モルガン・スタンレー AA 1.09 1.12 3 37.23
17 さわかみ AA 1.10 1.10 1 3307.10
18 鎌倉 AA 1.10 1.10 1 472.86
19 コモンズ AA 1.12 1.20 3 312.23
20 東京海上 A 1.13 1.40 95 16296.67
21 レオス・キャピタルワークス AA 1.14 1.25 5 7464.33
22 三井住友TAM A 1.28 1.26 183 37001.96
23 キャピタル AA 1.32 1.24 24 3123.75
24 明治安田AM A 1.32 1.29 75 3018.66
25 SBI A 1.32 1.24 41 1778.88
26 マニュライフ AA 1.35 1.43 30 594.99
27 SBI地方創生 AA 1.37 1.37 4 7.79
28 シュローダー AA 1.37 1.58 29 1298.93
29 あおぞら AA 1.38 1.37 25 772.62
30 スカイオーシャン AA 1.38 1.33 11 1229.47
31 ワイエムAM AA 1.41 1.40 6 275.04
32 ちばぎん A 1.43 1.59 14 273.15
33 三井住友DS A 1.43 1.45 382 40683.70
34 ニッセイ A 1.43 1.41 163 16673.97
35 ラッセル AA 1.45 1.37 14 348.64
36 お金のデザイン AA 1.46 0.76 7 200.30
37 HSBC A 1.47 1.72 37 4783.69
38 大和 A 1.47 1.52 433 56041.25
39 野村 A 1.48 1.51 574 61171.29
40 いちよし AA 1.50 1.53 10 2322.39
41 マネックス AA 1.50 1.32 14 123.97
42 パインブリッジ AA 1.51 1.52 29 1107.47
43 スパークス AA 1.53 1.70 23 2572.86
44 日興 A 1.54 1.52 230 55423.82
45 三菱UFJ国際 A 1.54 1.55 469 41525.08
46 中銀AM A 1.56 1.55 3 105.87
47 NNインベストメント AA 1.57 1.37 7 58.50
48 ブラックロック A 1.58 1.37 54 2009.99
49 SOMPO AA 1.59 1.44 68 2345.34
50 AM One A 1.59 1.44 433 59115.46
51 岡三 A 1.59 1.56 105 6266.98
52 ティ・ロウ・プライス AA 1.59 1.61 8 8562.71
53 フィデリティ AA 1.62 1.41 113 25257.85
54 ベアリングス AA 1.62 1.68 4 621.37
55 UBS A 1.65 1.59 60 4616.73
56 JPモルガン AA 1.66 1.61 71 8065.74
57 フランクリン・テンプルトン AA 1.66 1.94 5 259.26
58 インベスコ A 1.67 1.45 56 1170.91
59 ドイチェ AA 1.67 1.64 68 2468.99
60 レッグ・メイソン AA 1.70 1.64 34 4245.39
61 アライアンス AA 1.73 1.65 23 14537.02
62 アバディーン AA 1.74 1.72 6 175.58
63 T&D A 1.74 1.63 63 1275.73
64 ありがとう AA 1.75 1.75 1 153.20
65 カレラAM AA 1.76 1.67 26 504.13
66 BNPパリバ AA 1.78 1.42 9 105.40
67 アムンディ A 1.79 1.71 80 5299.81
68 ピクテ A 1.79 1.59 66 17404.33
69 ゴールドマン AA 1.82 1.53 70 18533.12
70 BNYメロン AA 1.83 1.66 20 1845.67
71 イーストスプリング AA 1.86 1.75 24 2273.63
72 au AA 1.86 1.28 6 317.30
73 ポートフォリア AA 1.89 1.56 3 295.78
74 新生インベストメンツ AA 1.89 1.68 13 596.21
75 朝日ライフ A 1.93 1.76 9 868.59
76 シンプレクス AA 1.94 1.57 2 212.38
77 キャピタルAM AA 1.97 1.85 10 419.11
78 ファイブスター AA 2.02 2.11 11 126.84
79 リクソー AA 2.08 1.97 2 13.97
80 ユニオン AA 2.10 2.10 1 86.25
81 ベイビュー AA 2.14 2.19 3 120.97
82 クローバー AA 2.16 2.06 2 108.65
83 あいグローバル AA 3.80 2.41 3 77.79

 

なお、1位のSUSTEN(株式会社sustenキャピタル・マネジメント)については、「グローバル資産分散ポートフォリオ(R)」、「グローバル複合戦略ポートフォリオ(G)」、「グローバル債券ポートフォリオ(B)」の3本のファンドを運用していますが、これらは、同社が提供するロボアドバイザー専用のファンドで、ロボアドの運用により利益が発生した場合には成果報酬がかかるタイプのサービスですので、一般の投資信託と同じ土壌で単純に信託報酬を比較することはできません。また、2位のTORANOTEC投信投資顧問に関しても、同社の運用する4本のファンドのうち3本は、TORANOTECが提供するおつり投資アプリ「トラノコ」専用のファンドで、トラノコでは月額300円の利用料が必要となります。残り1本はTORANOTECアクティブジャパンで、これは一般的な公募の追加型株式投資信託で、信託報酬は0.88%(税込み)がかかります。

この2社を除くと、アクティブファンドでは、農中バリューインベストメンツの信託報酬(平均値)が最も低いということになりますが、農中バリューインベストメンツは、「農林中金<パートナーズ>おおぶねJAPAN(日本選抜)」と「農林中金<パートナーズ>おおぶねグローバル(長期厳選)」の2本のアクティブファンドを運用しており、信託報酬は各々0.88%(税込み)、0.33%(税込み・純資産総額500億円未満の部分)ですが、「農林中金<パートナーズ>おおぶねグローバル(長期厳選)」については、計算期間を通じて毎営業日、ハイ・ウォーターマーク方式を用いた成功報酬額を負担する必要があります。